核兵器3
出典: Jinkawiki
<核兵器>
核兵器とは、原子爆弾などの強大な破壊力を持つ爆弾のこと。原子爆弾はウランやプルトニウムなどの原子核が分裂するときに巨大なエネルギーを出すので、それを兵器として利用したもの。たった一発で何十万人もの人を殺したり、町を破壊したりするだけでなく、目に見えない放射線を出し、放射線障害によって多くの人が亡くなったり、病気になったりする。
1. 核兵器のない世界を目指す日本
いまの日本の核軍縮外交のスタンスは、外務省の軍縮不拡散・科学部が編集する『日本の軍縮・不拡散外交』において、次のように述べられている。
日本には、唯一の戦争被爆国として、核兵器の使用によりもたらされる惨禍は決して繰り返されるべきではないこと、核兵器を廃絶していくべきことを、世界の人々に強く訴えていく使命がある。
すなわち、日本は「唯一の戦争被爆国」というナショナル・アイデンティティにもとづいて、核兵器のない世界をめざすというものである。しかも、核兵器の廃絶を訴えることは日本の「使命」としている。それゆえ日本は、国際社会に対して、核兵器廃絶への強い意志を表明しているといえよう。
2. 核兵器に安全を依存する日本
核兵器のない世界をめざす日本には、もう1つの顔がある。日本は「核兵器のない世界の実現に至る道のりにおいて、換言すれば、現実に核兵器が存在する間、国家安全保障戦略でも明確に述べられているとおり、核抑止力を含む米国の拡大抑止が不可欠である」としている。つまり、唯一の戦争被爆国である日本はいわゆる「核の傘」によって自国の安全保障を試みている。
このように、日本は、唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界をめざす一方で、核兵器の脅威に対処するために、米国が提供する核の傘に自国の安全を依存している。このスタンスは、非人道性の論理と安全保障の論理にもとづいている。
3. 核兵器の非人道性
核兵器は、熱線・暴風・放射線の相乗的効果により、壊滅的な結末を引き起こす。まず、核兵器は大量破壊兵器に分裂されているように、大量の死をもたらす。たとえば、1945年12月末の時点しおいて、広島の原爆による死者数は約14万人、長崎では約7万人と推計されている。次に核兵器は、戦闘員と民間人を区別せずに、また老若男女を問わずに、無差別に殺傷する。たとえば、医師であり、被爆者でもあり、またカソリック信者でもあった永井隆は、その聖書『長崎の鐘』において、原爆を投下した直後の長崎の地獄絵図を以下のように描写している。
爆圧は言語に絶する強大なもので、爆弾に対して露出していた者、すなわち、戸外、屋上、窓などにいた者は叩きつけられ、吹き飛ばされた。1㎞以内では即死、または数分後に死んだ。500メートルで母の股間に胎盤のついた児がみられ、腹は裂け腸の露出した屍体もあった。700メートルで首がちぎれてとんでいた。眼玉のとび出た例もある。内蔵破裂を思わせる真っ白な屍体があり、耳孔から出血している頭蓋底骨折もあった。
さらに、核兵器は、たとえ生き残ったとしても、放射線の影響で多くの人々を苦しめる。たとえば、2015年現在、被爆者健康手帳所持者に限定したとしても、約17万もの人々がいわゆる「原爆症」にいまもなお苦しんでいる。 このように核兵器は、大量破壊性・無差別性・残虐性という点で、非人道的な結末をもたらす。この核兵器の非人道性を重視すれば、次のような現実認識にもとづいて政策目標がかかげられることになる。すなわち、
<非人道性の論理> 現実認識=核兵器の使用は非人道的な結末をもたらすものである。 政策目標=核兵器が使用されないためには、核兵器のない世界を実現すべきである。
上記の現実認識と政策目標の内容を<非人道性の論理>として、日本はこの<非人道性の論理>にもとづくことで、唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界を実現していく、というスタンスをかかげている。
参考文献 佐藤史郎・川名晋史・上野友也・齊藤孝祐(2018)『日本外交の論点』法律文化社