武士道3

出典: Jinkawiki

武士道は、日本の近世以降の封建社会における武士階級の倫理及び価値基準の根本をなす、体系化された思想一般をさす。

概要

新渡戸稲造の『武士道』によると、武士道とはある一人の優秀な学者や武士によって作られたものではなく,長い時間と様々な人々の経験が醸成されて形成された倫理的思想そのものである。 武士道の起源の特定は困難であるが、一般庶民に武士道の存在が知られ始めたのは戦国時代以降ではないか、といわれている。武士道という単語が最初に記された記録は、現在では戦国武将の高坂昌信が著した『甲陽軍艦』中の一節である。この『甲陽軍艦』における武士道は道徳倫理的な思想ではなく一族郎党の繁栄もしくは個人の武名を高める事を主眼においており、『葉隠』や『武士道』に書いてある内容とは大きく異なり、卑怯な手段を肯定していた点や主君への忠節を重要視していない点など様々な点において相違がみられ、道徳というより処世術に近いものであった。 江戸時代において武士道の道徳が成立し始め、「武士道とは君に忠、親に孝、自らを節すること厳しく、下位の者に仁慈を以てし、敵には憐みをかけ、私欲を忌み、公正を尊び、富貴よりも名誉を以て貴しとなす」という意識が形は人により多少は異なれど、各々の武士道の大きな基盤となった。元和期になると山鹿素行が朱子学の道徳で武士道を説明しようという動きによって新たに士道の概念が形成された。この士道には忠孝や仁義という儒教的要素が含まれており、後世の多くの武士道思想に大きな影響をもたらした。 また、享保期になると山本常朝と田代陣基が「武士道と云ふは、死ぬ事と見付けたり」で知られる『葉隠』を著した。政治の批判が混じっていたため禁書となり当時の人々は読む機会に恵まれなかったが、その死をものともしない骨太の武士道精神は大きな影響を様々な人々にもたらした。 武士道の最も特筆すべき点は思想が実際の行動に実現できていた点にある。

武士道において重要視される徳目

武士道には7つ重要視される徳目が存在し、『義・勇・仁・礼・誠・名誉・忠義』がそれに相当する。最も重要視されるものが義であり、武士道的観点からみると義とは「正しい道」であり、「正義を行うための義務」の事を示す。 義が描かれた有名な時代劇であると「忠臣蔵」などが有名。勇は義に常に伴うものであり、義を行うために邪魔な疑念や煩悩を押しのける意思の強さを指す。この勇の原動力は「名誉」や「恥への恐怖」であり、武功や物事の失敗を重要視する武士にとってはしかし、この勇は義が伴っていないと価値がないものとされており、それと同じように義もまた勇を伴っていないと価値がないものとされていた。 仁とは儒教の精神が色濃く表れている徳目であり憐みの情や慈愛、寛容などを重んじていた。新渡戸稲造は海外へ武士道を発信するときに仁を「ノブレス・オブリージュ(高位に付随する責任)」と訳した。礼は相手に対する思いやりをもつ気概の事であり、それが形となったものが例である。また、例の体現は自身が常に落ち着いてふるまえる様に心を鍛錬するという役割もあった。 誠は礼節に真実が掻き消されないように努める心の事である。一般人はその場の空気を保つために誠より礼を優先させる場合が多々あるが、武士道は礼と誠の力関係が等しいため嘘をつくくらいであるのなら沈黙を守ることを選ぶ。 忠義とは絶対的な主君への忠節の事を指す。この主君とは大名などの人物だけでなく、自身が信じる正義や心構えの事も指す。これは騎士道と大きく異なる点でもあり、騎士道では恋人や家族への敵討ちという個人的行動が尊重させるが武士道は個人的行動よりも主君への忠節が優先される。これは一見家族を投げ出し主君に盲従するようにもみえるが、結果として公の共同体の中枢を守るため結果としてまわりまわって個人を守ることにもつながっている。また、共同体の中枢が暴走した際に付和雷同するのではなく自身の生命が失われようとも制御しようとする働きかけや心もこれにあたる。忠義とは武士にとって骨格の様なものであると、尊王攘夷派の脱藩武士であった真木和泉守はのべている。 名誉とは武士の誇りであり、自身を律する要因の一つである。名誉を守るためなら死す事も良しとされており、武士は名誉の為に生きているといっても過言ではない。名誉は家名や先祖まで様々な場所に関わっており、世間の目を強烈に意識する事が侍にとっての誇りを守る原動力ともなった。また、人目がつかないところで悪事を働こうとする心は先祖代々続く家への誇りやこだわりによる内なる声に律されて行われなかった。

参考 日本文芸社:面白いほどよくわかる武士道


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