灌漑
出典: Jinkawiki
- 概要
- 灌漑(かんがい)とは、農地において、農作物の増産などの理由により、外から人為的に水を与えることを指す。
- その目的は多岐に渡り、代表的なものが農作物の増産と緑化だが、霜害対策などにも利用される。
- 細かい定義では、家庭菜園などにジョーロで水を与えても灌漑となる。
- 現在、特に乾燥地での大規模農業で大量の地下水が灌漑として利用されている。
- 反対に、降雨のみで行う農法を乾燥農業という。
- 砂漠化との関連
- 灌漑は砂漠化の1要因なのか
- 根本 (2007)によると、『乾燥地で降雨だけに依存している畑を、作物の収穫量を高め、またその安定化をはかる目的でかんがい畑につくりかえたときに、砂漠化がおこる』ことがあるという。
- このことにおいて大きな問題となるのが農地での塩類の集積である。
- 比較的乾燥している地域において、地下水を引き、灌漑農業を行うことにより、農作物の生産を飛躍的に伸ばすことができる。
- しかしながら、生産が多いからと言って、このまま何度も何年も耕作を続けていても、生産量は多くはならず、むしろ生産量の低下が見込まれる。
- その理由として挙げられるのが、土壌に蓄積した塩類である。
- 身近な例では、家庭菜園のプランターで、作物を植える前はポロポロしていた土が作物を収穫後、新しい土と交換するときには古い土は固くネバネバとしている。このネバネバが塩類である。
- 日本のような比較的雨の多い地域では、この塩類は地下水と共に雨に流される。しかしながら乾燥した地域では、雨自体の回数や雨量が少なく、また大気の乾燥により、雨によって流される途中で水分が蒸発してしまい、その場所に塩類が蓄積してしまう。
- 塩類を多く含む土壌では植物は育たず、結果的に砂漠化してしまうのである。
- 同氏はこの灌漑による塩類土壌が、古代から現在までのあらゆる時代における、世界のいたる所で進んでいることを指摘している。
- このことから、地球温暖化が進み、気候も植生も変化し始めているなかで、現在乾燥していなくてもこれから乾燥化が進む地域もあることから、砂漠化が近い未来に全世界的に広がる日も遠くないと考えられる。
- 人口問題との関連
- 灌漑農業は、人口増加問題にも深く関係している。前述の通り、灌漑農法で使用される水のほとんどが地下からくみ上げられた水である。2014年のデータによると、地下水利用の灌漑は、世界の食物生産における農業用水の40%を担っているという。
- その地下水は作物の大量生産を行うために大規模農業で大量に使用されている。人口が増加すれば、それだけ食糧も必要になってくるため、それを作るために必要な地下水の量も比例して増加する。
- もし、大規模農業を行っている地域の地下水が枯渇した場合、食糧供給量が減少するため、その作物の価格が値上がることが予想される。
- 2014年に世界の地下水の動向を調べ、1960-2100年の間で、いつ地下水が枯渇するのかを予測した。
- セントラルバレー (アメリカ合衆国 カリフォルニア州) 2030年代
- ガンジス盆地(インド)やスペイン南部、イタリア 2040~2060年
- カンザス州、オクラホマ州、テキサス州、ニューメキシコ州(アメリカ合衆国) 2050~2070年
- 参考文献
干ばつが招く地下水の枯渇. National Geographic. 2014.08.21. (http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/9616/)
"地下水の枯渇、次世代に水を残せるか." National Geographic. 2012.12.25. (http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/7287/)
根本正之. "砂漠化ってなんだろう". 岩波書店, 2007.
守田 優. "地下水は語る 見えない資源の危機". 岩波書店, 2012.
H.N.(編集者) あんのう