環境権

出典: Jinkawiki

 環境権は、個人の環境利益を享受する権利としての面と、地域社会の共同利益としての環境享有権を守る権利としての二面性を持っている。 「人は尊厳と福祉を保つに足る環境で、自由、平等及び十分な生活水準を享受する基本的権利を有する」とした人の基本的な権利。スウェーデンのストックホルムで開催された国連人間環境会議(1972)で採択された宣言(人間環境宣言)の中に盛り込まれた。  日本では、環境権は公害・環境訴訟の根拠として主張されるようになった。大阪国際空港公害訴訟では航空機の夜間飛行を差し止めるために環境権に基づき裁判で差し止め請求がなされるなど、いくつかの訴訟が環境権を根拠として起きている。また、環境権は、憲法第13条(幸福追求権)や第25条(生存権)を根拠とする基本的人権の1つであるとする考え方が学説の主流となっている。しかし、裁判所は環境権を具体的な差し止め請求権があるものとしては認めていない。環境権について明文の規定を置いた法律もない。ただし、環境基本法の第3条で、環境の恵沢の享受と継承を定めるとする規定が環境権にあたるとする考え方もある。いくつかの自治体の環境基本条例では環境権が明記されているものもある。最近では、憲法改正論議の中で、憲法を改正して新たな基本的人権として環境権を位置づけようとする動きがある一方、現行憲法で環境権が基本的人権であることは解釈で十分に導き出せるとする環境NGO/NPOなどの意見もある。海外では、コスタリカなどの国が憲法で環境権を定めている。

環境権理論は公害に悩む住民団体に広く受け入れられ、伊達(だて)(北海道)環境権訴訟、豊前(ぶぜん)(福岡県)環境権訴訟、大阪空港公害差止訴訟、長浜町(愛媛県大洲市)入浜(いりはま)権訴訟、長良(ながら)川(岐阜県)河口堰(せき)差止訴訟などの根拠として主張された。

しかし、人間活動はつねに環境になんらかの影響を与えるものであるから、こうした絶対的な差止めを認めようとする理論によれば、原則として人間活動は禁止されることになりかねない。人間社会ではつねに利害の適正な衡量が必要なのであって、この理論は硬直的にすぎたとみられる。結局、これは、裁判所の採用するところとはなっていない。判例では、「環境権なる権利は、実定法上その規定がなく、権利の主体、客体及び内容が不明確であるから、私法上の権利として認めることはできない」とするものが多い。

参考文献・参照文献

www.eic.or.jp   EICネット 環境情報案内・交流サイト


  人間科学大事典

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