経済安定九原則
出典: Jinkawiki
昭和23年(1948)12月19日、米国政府がGHQを通じて日本政府(当時の首相吉田茂宛)に指令した経済政策。予算の均衡、徴税強化、資金貸出制限、賃金安定、物価統制、貿易改善、物資割当改善、増産、食糧集荷改善の9項目からなる。 目的は、インフレーションを抑制し、日本経済を短期的に自立化することであった。
内容
「昭和二十三年十二月付 (前文省略) 今回の経済復興計画がとくにめざすところは、
一、極力経費の節減をはかり、また必要であり、かつ適当なりと考えられる手段を最大限度に講じてただちに総予算の均衡をはかること。
二、徴税計画を促進強化し、脱税者に対する刑事訴追を迅速広範にまた強力に行うこと。
三、信用の拡張は日本の経済復興に寄与するための計画に対するほかは厳重に 制限されていることを保障すること。
四、賃金安定実現のため効果的な計画を立てること
五、現在の物価統制を強化し必要な場合はその範囲を拡張すること。
六、外国貿易統制事務を改善し、また現在の外国為替統制を強化し、これらの機能を日本側期間に引継いで差支えなきにいたるように意を用いること。
七、とくに出来るだけ輸出を増加する見地より現在の資財割当配給制度を一そう効果的に行うこと。
八、一切の重要国産原料、および製品の増産をはかること
九、食糧集荷計画を一そう効果的に行うこと。
以上の計画は単一為替レートの設定に実現させる途を開くためにぜひとも実施されねばならぬものである」
ジョセフ=ドッジ
デトロイト銀行頭取。1949年2月1日に来日し、経済安定九原則の具体的立案を行った。ドッジはガリオア資金・エロア資金など米国の援助と、価格差補給金など日本政府の補助金を「竹馬」の2本と例えた。そしてこのような、日本経済を「竹馬経済」と批判し、ドッジ=ラインといわれる一連のデフレ政策に着手した。
以下九原則実行に関するドッジ声明(抜粋) 一九四九年三月七日
外国為替レート問題
貿易取引にあたり単一為替レートの早期決定が一般に要望されている。この要望はよく解っており、出来るだけ早く実現出来るように当局でも考えている。現在のところでは単一レートを算定することは大したむずかしいことではなく、これは少しも問題となっていない。考えなければならぬことはほかの諸条件である。単一公式レートを決めることも仕事だが、もう一つの仕事は決めたのちこれを守ることである。(中略)
インフレと安定
真の安定と進歩とは国家的諸問題を健全な財政通貨政策で処理することに立脚しなければならない。有効な安定をもたらすためには財政政策の基本的手段としての政府予算と総ての政策決定とを関連させることが必要である。インフレのセンを閉めるのも政府、これを開放するのも政府である。補給金、投資その他の一般費目から支出を削ることは政府にとって生易しいことではない。にもかゝわらずやらねばならぬし、いゝ加減の決定のままにしては置けない。政府支出は租税による収入源を限度としなければならぬ。租税引下げは政府支出が減った暁に可能となるものである。(中略) 最後にわたしとしては、日本の諸君が次の簡単な事実を理解されんことを切望する。
日本が毎年米国から受取る数億ドルの援助資金は米国の各市民や企業に課せられた租税から支出されているもので、この租税は米国の労働者や商工業の生産物や利潤が支払うことになるのである。米国市民が税を払うのをいやがるのは日本人諸君と同様である。 日本が受取っているこれらの米国の援助資金や援助物資は日本が自給しなければならない生産物と輸出品のほんの一時的な代用物補足物にすぎないのである。日本は過去において自立自給することができたが、できるだけ早くまたそうなるように準備しなければならない。(中略)
米国は日本救済と復興のため昭和二三年度までに約二一億五〇〇〇万ドルを支出した。米国が要求し同時に日本が必要とすることは、対日援助を終らせることゝ日本の自立のためへの国内建設的な行動である。私の信ずるところでは日本は目下厳しい経済を余儀なくされている。しかし現在とられている国内的な方針政策は、合理的でもなく現実的でもない。すなわち日本の経済は両足を地につけていず、竹馬にのっているようなものだ。竹馬の片足は米国の援助、他方は国内的な補助金の機構である。竹馬の足をあまり高くしすぎると転んで首を折る危険がある。今たゞちにそれをちゞめることが必要だ。つゞけて外国の援助を仰ぎ、補助金を増大し、物価を引き上げることはインフレの激化を来すのみならず、国家を自滅に導く恐れが十分にある。
参考 『朝日新開』1949年3月8日
kotobank.jp/word/経済安定九原則
www.eonet.ne.jp/~chushingura/p.../1251.../1272.htm「経済安定九原則」-史料日本史
駿台日本史科編 『日本現代史徹底整理(戦後史)』2007年