自由貿易(WTO)

出典: Jinkawiki

自由貿易は、世界中で失業や貧困、環境破壊を引き起こしている。それなのに自由貿易をやめないのは、「比較優位」という経済学の考え方があるからである。 18世紀イギリスの経済学者リカード氏によると、比較優位とは、「それぞれの国でそれぞれ得意なものを作ればいい。食糧を作らなくてもその土地で採れたもので稼いで、輸入すればいい。」と言う考え方である。この考え方を信じているというより、自由貿易にしたほうがもうかる人たちがいて、世界に経済が動かされているから、みんなで信じたふりをしている。


1.第二次世界大戦とWTOの誕生

1929年ニューヨーク・ウォール街の株式市場は大暴落に見舞われ、1930年代の世界は大不況に陥った。この時、主要国はそれぞれ植民地を囲い込みつつ経済のブロック化をすすめ、高関税と貿易制限、通貨引き下げを行って自国経済を保護しようとした。このブロック化競争が主要国の対立へと進み、第2次世界大戦の原因となった。この大戦を反省した戦後の国際社会は、戦争被害が大きかった西ヨーロッパの戦後復興を目指し、IBRDの設立。国際的な金融支援や為替の安定を図る目的のIMFの設立。貿易障壁の抑制と自由貿易の推進を図るGATTの締結。こうした国際機関・システムの構築によって、主要国のブロック経済化・保護主義を抑制することができ、結果として平和維持につなげることができると考えた。 GATTは発足以来、関税など貿易にかかわる障壁を取り除き、国際貿易を推進する役割を担ってきたが、貿易が飛躍的に増大したこともあり、1995年国際機関としてのWTO(世界貿易機関)が設立された。


2.自由貿易の原則

 GATTもWTOも自由貿易推進という考えは変わらない。自由貿易とは、制限のない自由な貿易ということで、貿易上の制限を取り除くために次の2つの原則がとられている。一つは、貿易障壁措置の削減であり、もう一つは貿易の無差別待遇である。WTOではサービス、知的所有権、貿易関連投資措置などのルールも交渉の対象となった。GATTOは、「関税」以外の障壁を廃止して、すべて関税化し、次にその関税をゼロにもっていく、というものである。WTOは、1)最恵国待遇、2)内国民待遇という原則を適用し、ルール上差別待遇を行わないようにしようというものである。つまり、ブロック化政策をとることを不可能にしている。 WTOとGATTOの違いは二つあり、一つは貿易分野の拡大である。GATT時代は、工業製品などのモノの貿易ルールだけでしたが、WTOではサービス、知的所有権、貿易関連投資措置などのルールも交渉の対象となった。二つ目は、紛争手続きの問題であり、GATT時代より格段に厳格化された。


3.WTO、自由貿易が抱える矛盾点

WTOには、決して公正ではない3つの大きな矛盾がある。一つは、そもそも例外のない公平なルールは本当に「公正」か、という問題で、先進工業国と発展途上国とを同じ貿易ルールで扱っては、逆に不公正になるということである。かつて植民地時代もその後の独立後も、途上国は「安い一次産品を先進国に輸出し、高い工業製品を輸入する」という経済構造に長いこと苦しみ、工業化を目指していた。先進国が特許などの知的所有権や情報通信や金融などのサービスまで自由貿易ルールに入れてくると、途上国が第2次、第3次産業を通して経済的に発展していくという道はほとんど閉ざされてしまう。途上国に一定程度有利になるシステムを作ったうえではじめて同一ルールで行うようにしなければ、絶えず途上国が不利になってしまい公正ではないのである。 二つ目に、WTOは分け隔てのない公平なルールの適用と言いながら、次の2つの分野が別ルール扱いにされている。ひとつは繊維品分野、もう一つは農業品分野で、どちらも、途上国に比較的に優位にある分野であるが、別ルールを適用して先進国の繊維産業、農業を保護しようというものである。  この結果、多くの途上国は「安い限られた一次産品を輸出し、高い工業製品はもとより日常不可欠の食料品までも輸入する」という以前よりも悪い経済構造になっている。三つ目は、現在世界的に急速に広まっているFTAの問題だ。この協定は、関税引き下げなどの自由化を二国間または当事国だけに適用するということで排他的取り決める。これは最恵国待遇であり、自由貿易ルールの原則に違反するものである。WTO ではFTAに対して中途半端な扱いをしたまま既成事実が進行しており、このままではブロック化の再来になる恐れも指摘されている。 以上のことから、貿易上の同一ルールではそもそも最初から途上国が不利であること、その上途上国の得意の分野が例外扱いにされ先進国有利に自由化ルールが捻じ曲げられていることがわかる。


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