麻薬バス3

出典: Jinkawiki

目次

概要

   ロッテルダム市当局は毎日、専用バスで指定場所を巡回し、登録に応じたハード・ドラッグ常習者にはヘロインの代用物としての効果がある合成麻酔剤「マザドン」を無料で配布しているほか、市内4箇所の救援所を設けて、中毒者の援助に努めている。


 背景

 この取り組みが行われている背景には、第一に市内の治安を改善するために、ジャンキー(麻薬中毒者)を野放しにせず一か所に集めて、彼らを行政の管理下に置くことを目的としていた点があげられる。さらに、一か所にジャンキーたちがいつも集まってくれば、専門家がそれぞれのジャンキーの症状を把握しやすくなる。その上で、少しずつ弱いドラッグを彼らに与えて、少しでも「中毒地獄」から立ち直らせることを目指していた。また貴重な税金を使ってまでも、ジャンキーに無料でドラッグを配布する理由は、麻薬欲しさから彼らが犯罪に走るのを防ぐためであり、安全な注射器や注射針の無料配布は、使い古しの回し打ちから起こるエイズなどの感染を予防するためであった。


マザドンを使用する理由

 「マザドン」というのは、1940年にドイツで一切の自然物質を使わずに人工薬品から合成されたヘロインと同種の作用を持つ代用薬品である。

 マザドンがヘロインの代用品として使われるようになったのには、2つの側面がある。1つは医療的側面であり、もう1つは無料配布によって中毒者による犯罪を減少させるとともに、密売組織に打撃を与える社会的側面である。

 医療的側面については、当初、マザドンはヘロインとほとんど同じ作用を使用者に与えるが、中毒症状にはならないと考えられていた。しかし、その後の検査と経験から、多量に常用すれば、マザドンも中毒者を生み出すことが分かってきた。それでも現在、なお市当局がマザドンを使い続けているのは、ヘロインが4時間や6時間で禁断症状になるのに対して、マザドンの場合は約24時間その使用が持続することと、錠剤やシロップ状で飲めるためである。丸1日、薬効が持続すると、中毒者はドラッグのことばかりに関心を向けなくても済むようになるし、口から飲めると、注射器使用によるエイズや肝炎感染を予防できる効果がある。


参考資料

「麻薬・安楽死の最前線―挑戦するオランダ―」 平沢 一郎 東京書籍(1996)


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