教育格差

出典: Jinkawiki

目次

教育格差とは

教育格差は、経済格差や文化資本格差、あるいは健康格差などとともに生活格差の一部を構成している。教育格差には、「学力格差」と「教育機会格差」の二種類がある。学力格差は、試験で測ることのできる学力=測定可能能力の格差を言う。一方、教育機会格差は、高校や大学に進学する機会があるのかないのかという格差が典型例だが、同じ高校であっても、進学先が有名進学高校なのか、そうではないのか、あるいは、都内の有名国公立私立大学なのかどうかを示す、いわゆる高校間格差や大学間格差のことも言う。学力格差によって教育機会格差が生まれ、逆に教育機会格差が学力格差を生むというように、両者は相互関係にある。


教育格差を生み出す仕組み

教育格差を生み出す、最も主要な要因は、家庭や階層の経済格差(経済的に裕福であるかどうか)と文化資本格差(各家庭がもつ文化的能力や文化的財の格差)だ。経済格差が直接に教育格差を生み出す場合もあるし、それが文化資本格差を生み、その結果として学力格差や教育機会格差を作り出すこともある。つまり、所得・資産が多い家庭や、文化資本も大きく、そこで生まれ育った子どもは能力や意欲も高く、その結果、学力や教育機会にも恵まれるという関係となるわけである。


教育格差の実態

全国レベルでの格差の実態を、大学センター試験の都道府県別平均点と県民所得との関係から確認してみよう。センター試験の平均点は大手予備校代々木ゼミナールの調査によるものだ。それによれば、最も高いのは(2006年)、東京都であり、以下、奈良県、神奈川県、大阪府、京都府、千葉県など、大都市や大都市近郊の府県が続いている。逆に最も低いのは宮崎県であり、以下岩手県、島根県、沖縄県、大分県、徳島県などが続いている。県民所得との関連性を考えてみると、県民所得の高い都道府県は、センター試験の平均点も高い傾向にあり、逆に、県民所得の低い都道府県は、センター試験の平均点も低い傾向にある。



教育格差を拡大させる背景

(1)公立離れ: 「ゆとり教育」によって、公立学校の授業のレベルは低くなり、次に示すように授業時間数は減った。しかし、一流大学の入試レベルが下がったわけではない。このため、公立学校で教えてくれなくなった内容をどこかでカバーしなければならない。そこで、経済的に余裕のある富裕層は、自分の子供を「公立ではなく私立へ通わせる」、「塾へ通わせる」、「家庭教師をつける」、等々の対策を立てるようになった。

(2)授業時間数: 中学3年生の1週間の科目別授業時間数を、公立学校と私立学校を例として比較してみる。すると、私立のほうが、授業時間数が多い。これは、公立は土曜日が休みなのに、私立では土曜日も授業をしているからである。さらに、英数国社理といった主要5科目の授業時間数に明らかな差がある。これでは、学力に差がつくのは明らかである。

(3)必須英単語数: 公立中学3年間の必須英単語数は、ゆとり教育で大幅に減少した。ゆとり教育の始まる前は1000単語だったのが、今では100単語くらいに減っているのだ。これでは、塾で補習を受けない限り、公立中学校の生徒は、高校入試で不利な立場になるし、また、将来的にも大きな不利益をこうむることとなる。

(4)私立学校の競争激化: 公立高校の学力低下が広く知れ渡るにつれ、富裕層だけでなく、中間層も私立学校を目指すようになり、私立学校への入学は年々難しくなってきた。文部科学省の学校基本調査による、2006年度の学校数を見ると、小学校・中学校の私立学校は極めて少ない。このため、私立小中学校の入学を目指して、熾烈な受験戦争が行われる事となった。

(5)若年層における所得格差:将来の格差拡大に大きく影響するとともに勤労貧困者のさらなる増大をもたらす。フリーターやニートといった非正規雇用者と正規雇用者間の賃金格差が原因となる。非正規雇用者の増大は「労働市場の規制緩和」によってもたらされ、この政策が今後さらなる格差拡大につながってくる。


 

教育格差、私たちがすべきこと

さて、私たちはそれに対して何をなすべきかということだが、基本的に教育格差というのは教育問題ではなくて社会問題である。それは格差社会に起因する社会問題であるわけだ。この意味では、所得格差の緩和であるとか、雇用政策であるとか、親世代の結果の不平等に介入する政策が不可欠であると考えられる。これからの低成長・少子高齢化の時代は、親から移転を受ける遺産が子供の所得に占める割合が高まってくる。だからこそ、格差が固定され世代を超えて連鎖し階層化して、教育や職業選択の機会不平等につながらないような社会保障政策、税や社会保障を通じた所得の再分配政策が重要になってくる。まず、スタート地点が違う人が多いことを私たちが認識するとともに、スタート地点をそろえる努力が必要である。同時に親の所得に関係なく、高い生涯所得を獲得できる機会を得られる環境を整える公教育の充実が重要になるのである。そして、世界の教育格差対策の利点を取り入れ、政府から地域の協力のもと、教育を受ける権利を持つ誰しもが平等な教育を受けるために、いろいろな形で教育格差に対する改善策を実行していく必要がある。


≪参考文献≫


  人間科学大事典

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