母性原理と父性原理

出典: Jinkawiki

目次

母性原理

母性原理とは、母親の中に包み込まれている状態であり、人間を区分けし、善悪、男女の対比でとらえることは科学的思考、論理的思考には適しているが、死を受け入れやすいものとも考えられている。

なぜ死を受け入れやすいのかというと、死というものを母親の子宮の中に帰っていくことだと信じているからである。


父性原理

父性原理とは、「切断する」機能にその特性を示す。それはすべてのものを切断し分割する。主体と客体、善と悪、上と下などに分類し、母性がすべての子供を平等に扱うのに対して、父性は子供を能力や個性に応じて分類する。極端な表現をすれば、母性が「わが子はすべてよい子」という標語によって、すべての子供を育てようとするのに対して、父性は「よい子だけがわが子」という規範によって、子供を鍛えようとするのである。

このようにして強いものをつくりあげてゆく建設的な面と、また逆に切断の力が強すぎて破壊に至る面と、両面をそなえている。


住居にあらわれる「母性原理」と「父性原理」

 日本の伝統家屋は、木造の柱、梁の開放的なフレーム(軸組み)から成り、薄いスクリーンのような襖や障子の「引き建具」で間仕切ることによって融通無碍にいろいろな「間」をつくる。そこが日々の居住空間となり、ここでの住まい手のコミュニケーションは、明快な言葉より気配や作法の方が重要視され、互いを気遣い合う思いが住まい手同士の一体感を醸成していく。それは、「すべてのものを全体として包み込む機能」をもつ母性原理を空間化したものといえよう。 同居人の誰もが、家族という組織に抱かれ、溶け込んでしまった自分に居心地の良さを感じている。そのとき、自我やプライバシーという概念は存在しないと言ってもいいほどに希薄ものとなっている。それは、封建的な「家=イエ」制度の空間化でもあったことを忘れてはならないだろう。

 西欧の伝統家屋は、石積みの重く厚い壁で囲まれ、その壁に穴を開けるかのように小さな窓や入り口を設けてドア等の「開き建具」で開閉するという密室性の高い「室」がつくられる。その「室」の集合体が、日々の居住空間となり、それは、「物事を切断し分離してゆく機能」をもつ父性原理を空間化したものといえよう。冷たい石造りの修道院で神と対峙して暮す修道僧の個室群をイメージすれば、「自我の確立」養成空間といってもいいかもしれない。それは厳しい訓練のうえに「個」の確立があって西欧社会は成立していると、河合隼雄氏の指摘するところでもある。



参考・引用文献

河合隼人著 「母性社会日本の病理」 1997年9月 講談社

河合隼人著 「河合隼人全対話Ⅲ 父性原理と母性原理」 1989年10月 第三文明社

ネット参考 http://www.asahi.com/housing/column/TKY200702020174.html


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