関東大震災

出典: Jinkawiki

被害規模

1923年9月1日午前11時58分、関東地方南部に大地震が発生、規模マグニチュード7,9、震源は小田原、根府川方面が最も強烈だった。

最初の10秒くらいは大きな地震というより、日常のありふれた振動と同じようであったという人が多い。 しかし、地震は「おやっと思う間にだんだん大きくなり、もう止むのかもう止むのかの思いをよそにますます激しくなった。」、ある人は、「むっくり床が持ち上がったかと思うと続いて左右に表現しがたい大揺れが始まった。」と回想している。家屋は軋り、屋根は踊り、電線は唸り、瓦は落ち、塀は倒れた。樹木は生命あるかのように樹身をよじらせた。

酔っぱらいの足取りにも似て、踊りながら水平を保った人もいた。柱にしがみつきつつ身を支えた人もいた。立っていられない激震だったのである。ある人は振動の弱い時を見計らって外に飛び出したが、なお大地は揺れがとまらなかったといっている。

この激しい揺れを、2分ぐらいだったとか、どうしてあんなに長く感じたのだろう、とても5分や6分ではなかったとか、人により体験の差があるようであるが、初期微動は12,4秒、主要動は10分だったという。長い驚愕と恐怖の後、ようやく我を取り戻した人々は、一斉に「ただの地震ではないぞ」「おそるべき一大事の出来」を口にした。

あたり一面を朧にしていた煙塵の晴れ上がりと同時に四方八方から煙が湧き上がっていた。「火事だ」の叫びが狂気のように噴き出して、町々をかけぬけた。人々は第二の災害の淵に立たされていることを意識した。家庭や町の飲食店の七輪やかまどに火がおこされていたことに火災多発の原因があった。激烈な振動からのがれるのが精一杯でかまどや七輪の火を消すゆとりを持つ者は少なかった。さらに倒産した家ではかまどや七輪の火の上に木材や家財がのしかかり、たちまち火炎につつまれた。

津波がくるという地震の常識に人々が浮足だったこと、水道の破滅などが初動の消火を困難にした。こうした火元は東京だけでも187か所に及んだ。おりからの低気圧の影響をうけた南、または東南の風、風速10m~15mの強風が火勢を煽った。火災はたちまち巨大な炎となり、東京をめぐっていった。速度の最も速い火の流れは、時速800メートル以上の速さで町々をなめ尽くしていった。


東京は三日未明まで燃え続け、下町一帯から山手の一部にかけて全市の三分の二が焼失。被害は死者99,331名、負傷者103,733名、行方不明者43,746名、全壊家屋128,266戸、半壊家屋126,233戸、焼失家屋447,128戸、被災者約3,400,000名であった。




三大虐殺事件

生命財産の危機に直面した人々は地震の被害がどこまで大きくなるのか、火の手はどこまであがったのか、今後の身の振り方をかけて必死に情報を求めた。そこに突如として「朝鮮人が放火した」「井戸に毒を投げた」とのデマが与えられた。 これを信じて、自衛隊に組織させられた日本の民衆が軍隊、警察とともにおこなったものであった。事件は、東京、横浜だけでなく埼玉、千葉、茨城県下でもおこった。

現在までで判明しているだけでも600名以上の在日韓国・朝鮮人と700名以上の在日中国人が虐殺された。亀戸事件・大杉(甘粕)事件といわれる、日本人社会主義者、無政府主義者、共産主義者、労働運動、青年運動の指導者ら総計12名も殺害された事件でもあった。 三大虐殺事件の社会的背景


この事件がおこされた背景は2つあると考えられている。

1つ目はこの大震災で首都東京の機能がマヒしたため、法的手続きが不十分なまま戒厳令を出させて軍隊を出動させたことである。1919年「三・一朝鮮独立運動」から、朝鮮人の報復を極度に警戒したと考えられる。当時、朝鮮半島では日本人が飲料水、食糧などに毒をとうじて朝鮮人の大量虐殺をおこなっていたからである。

もう一つの社会的背景は大震災の発生した年の春から、三悪法(過激社会運動取締法案、労働組合法案、小作争議調停法案)反対運動が展開されたことである。当時の労働運動、農民運動、学生運動の大半が集結し、これに在日朝鮮労働者や学生連合会も参加した。第一次主義運動のこのような高揚を、震災を利用して一挙に鎮圧しようという狙いが支配者層にあったと考えられる。




参考文献

松尾章一  2003  「関東大震災と戒厳令」  吉川弘文館

姜徳相(かん・とくさん)  1975  「関東大震災」  中央公論社

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