EU3

出典: Jinkawiki

目次

欧州連合(EU)

欧州連合(EU)とは、欧州共同体(EC)が 1992年にマーストリヒト条約(欧州連合条約)を調印し、93年、同条約の発効とともに改称したものを指す。新たに外交・安全保障、経済・通貨、社会の3分野で共同して発展を目指すことを目的とする。 EUの組織は欧州委員会が行政、欧州議会が立法、欧州裁判所が司法の三権分立のしくみで成り立っている。最高意思決定機関はEU首脳会議。 2002年には単一通貨「ユーロ」の流通がスタートし、現在では域内人口、GDP(国内総生産)ともにアメリカに並ぶ巨大な経済圏となっている。EU加盟国は年々増加し、2005年9月現在で25ヵ国。

EUの生い立ち

欧州統合の構想を提起した思想家には、サン・ピエール、カント等が挙げられるが、中でもクーデンホフ・カレルギー伯は1923年に「汎・ヨーロッパ」と題する書物において平和的世界統一の第一段階としてのヨーロッパ統一を呼びかけ、第一次大戦の傷跡の残るヨーロッパに一つの希望を投げかた。 その後第二次大戦による国土の荒廃と、二超大国による世界の分断が進む中、欧州が一致団結することで再興をはかろうとの動きが活発化する。1950年、フランス政府はジャン・モネの起草による「シューマン・プラン」を発表、独仏間の対立に終止符を打つために両国の石炭・鉄鋼産業を超国家機関の管理のもとに置き、これに他の欧州諸国も参加するというECSC(欧州石炭鉄鋼共同体)の設立を提案した。このECSCは1952年に設立され、1958年には更に領域を拡げて、EEC(欧州経済共同体)、EURATOM(欧州原子力共同体)が創設された。その後1967年にこの三共同体の主要機関が統一され、欧州共同体(EC)が誕生した。当初の加盟国はベルギー、ドイツ、フランス、イタリア、ルクセンブルグ、オランダの6ヶ国だったが、その後新たに、デンマーク、アイルランド、イギリス、ギリシア、スペイン、ポルトガルが加盟し、1986年までに12ヶ国に拡大。  1970年代の経済危機による「ECの停滞の時代」を経て、統合の遅れに対する危機感から、1985年ドロール委員長のイニシアティヴにより1992年までに域内市場統合の完成を目指す「域内統合市場白書」が採択された。その間、1990年にフランス大統領ミッテランとドイツ首相コールが、EMU(経済通貨統合)を形成し一気に政治統合まで実現するとの共同提案を行い、1991年12月のEU創設のための「マーストリヒト合意」につながっていった。そして、1992年2月には、EMUと、「共通外交・安全保障政策」の樹立を目指す「政治統合」、司法・内務分野における政府間協力の三本柱からなるEUの創設を合意したマーストリヒト条約の調印に至ったのである。  95年1月のオーストリア、フィンランド、スウェーデンの新規加盟を得て15ヶ国となったEUは、現在様々な分野において、域内においても対外的にもより緊密な連携をめざして統合を進めている。

加盟国

EUの現加盟国は以下27カ国である。 オーストリア・ベルギー・キプロス(2004年)・チェコ(2004年)・デンマーク・エストニア(2004年)・ドイツ・ギリシャ・フィンランド・フランス・ブルガリア(2007年)・ハンガリー(2004年)・アイルランド・イタリア・ラトビア(2004年)・リトアニア(2004年)・ルーマニア(2007年)・ルクセンブルク・マルタ(2004年)・ポーランド(2004年)・ポルトガル・スロバキア(2004年)・スロベニア(2004年)・スペイン・スウェーデン・オランダ・英国

EUの目的

 マーストリヒト条約はB条でEUの目的について次のように規定している。

 (a) 域内国境のない地域の創設、及び経済通貨統合の設立を通じて経済的・社会的発展を促進すること

 (b) 共通外交・安全保障政策の実施を通じて国際舞台での主体性を確保すること

 (c) 欧州市民権の導入を通じ、加盟国国民の権利・利益を守ること

 (d) 司法・内務協力を発展させること

 (e) 共同体の蓄積された成果の維持と、これに基づく政策や協力形態を見直すこと 

 つまり、EUは、経済統合に加え、政治統合の推進を目指すものであり、ECを基礎とするが、これを包摂するより大きな機構であると言える。

EUの特色

 EUは、加盟国の国家主権の一部を超国家機構に委譲し加盟国の政治的・経済的統合を進めていくことを目標としていることから、機構の権限も従来の国際機関とは比較にならないほど強化されている。特に経済分野では、EUが排他的権限をもって、あたかも国家であるがごとく、第三国と交渉を行ったり、協定を締結したりしている。  また、従来の国家機関には国家領域に相当するものが存在しないが、EUに関しては加盟国の国家領域が全体としてある程度EUの領域的性格を帯びており、単一市場の発足後は特にその性格を強め、国家領域に相当するものに近づきつつある。

EUの機関

 EUの主要機関としては、大所高所から政治的な方向性を定める欧州理事会(EU首脳会議)、意思決定を行う閣僚理事会、政策の立案・執行機関である欧州委員会、EU市民の直接選挙で選出され、EUの活動に対し民主的な統制を行う欧州議会、EUの意思決定過程における諮問機関である経済社会評議会及び地域評議会、EUの歳出を監視している会計検査院、EUの司法機関である欧州裁判所が挙げられる。  なお、議長国制度が取られており、加盟国が半年交代でその任務に当たっている。特に議長国は政治面でEUを対外的に代表している。

EUの経済状況

 欧州経済は、最悪規模の不況を経験後、経済対策の効果もあって、経済金融情勢には改善の動きが見られ、2011年にかけて経済の緩やかな回復傾向が続く見通し。今次不況にあって民間消費が安定化要因であったが、家計のバランスシート悪化や厳しい雇用情勢が悪影響を与えると懸念される。労働市場は厳しい情勢が続き、2010年の終わりから2011年にかけて経済成長が確保された後に、ようやく徐々に安定化すると見込まれる。物価上昇率は落ち着いた状態が続く。財政赤字は1年で2008年の3倍(GDP比7%)に達し、2010年も悪化が続く。


 

参考

外務省 http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/eu/data.html

『欧州連合 政治と論理のゆくえ』 庄司克宏:著 岩波書店  2007年10月

『EUの知識』 藤井良広:著 日本経済新聞社 2005年10月


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