アファーマティブ・アクション2

出典: Jinkawiki

積極的是正措置ともいう。アメリカ政府が雇用や教育の場で、人種や性による差別を解消・廃止するために採用した被差別集団に対する公共の優遇政策。 具体的には、優先的に雇用機会を与えたり、大学や大学院への入学・雇用・昇進などにおいて積極的に配慮することなどして男女による共同参画を積極的に推進することである。

また、アファーマティブの本来の意味とは、差別批判されてきたマイノリティの人々の声に耳を傾け、彼らの生活や地位の向上に積極的に貢献することを指す。

◆目的

アファーマティブアクションを行う主な目的としては、これまでの差別的待遇やそれによる格差を短期に是正するため。より平等で公正な社会を実現するため。憲法で保障された人々の権利や生活を擁護し向上させるために、過去において差別され抑圧されてきた様々なマイノリティの人々に対する補償するためなどといった様々な理由が挙げられている。

◆問題点

個人の業績に対する軽視または無視によって、特定の集団を優遇することにもつながり、それは本来評価されるべき人が差別されてしまうという逆差別を生む。本来ならば自分が得られたはずのものが、不当な優遇政策のために得られなくなったことへの批判である。また優遇政策を適応されたマイノリティの立場からいえば、実力で入学就職しても優遇措置の結果と見られてしまうこともあるとされる。 公正な社会を実現していくためには、多様性に配慮していくことが必要ではあるものの、アファーマティブアクションについては、その理念や方法を巡って賛否両論が繰り広げられている。

◆論争

・アランバッキ対カリフォルニア大学デービス校の判決 医学大学院の入学をめぐる逆差別問題。アファーマティブアクションによるマイノリティ特別枠により白人男性が入学できなかったのは不当であり違憲であるとして裁判に訴えたものである。 白人男性は、カリフォルニア大学院に応募したが2度にわたって拒否された。それについて、学業成績が高いにも関わらず入学が拒否されたのは、特別入学プログラムによるものであるとした。特別プログラムはマイノリティ学生のために16の枠が用意されていた。こうしたマイノリティ特別優遇の入学選抜方式は逆差別に当たると訴えたのだ。また、特別枠の候補者はこの白人男性よりもかなり低い得点であるにも関わらず入学が認められたという。これに対し、憲法修正条項14条の平等保護条項に違反しているとして、カリフォルニア大学に自身の入学を認めるよう要求した。また、カリフォルニア大学の特別入試プログラムが違反であるとも訴えた。しかし、入学プログラムが平等保護条項を侵攻していると判断はされたものの、それがなかったとしても入学が認められなかったことを証明できないため、原告の入学は認められなかった。この裁判後も優遇政策は特定集団を甘やかし、優秀であっても正当に評価されないとした批判は残されたままである。

・プロポジション

カリフォルニア大学におけるマイノリティの優遇政策の廃止を命じたもの。人種優遇政策をやめて、業績に基づいた個人の機会を促進する執行命令。 政府関係の雇用・公教育・公共事業の契約において人種・性別・肌の色・エスニシティ・国籍などによっていかなる個人や集団に対しても差別をしてはならないと同時に、優遇するような取扱いをしてもならないとした内容。これにより、大学への資格要件のための例外的入学基準として使用することも禁止した。カリフォルニア大学は人種優遇政策を活用しなくても多様な人種から構成される学生人口を維持することができると判断したため採用するに至った。この政策は、多様な人種構成による大学教育がそれまでに達成した教育上の利益を無視するとも考えられた。

・ミシガン大学の入学方式をめぐる判決

ミシガン大学においても、十分に代表されていないマイノリティの学生を入学させるための独自の入試プログラムを実施していた。ミシガン州住民の男性が、入学資格の範囲内に入っていたにも関わらず入学を拒否されたことに対して裁判を起こした。対等な立場で入学を競う機会を奪われたとしたものである。判決は、入学政策において人種を使用することは、大学側の主張する多様性の利益を実現するという目的に限定されているわけではないため、この政策は平等保護条項に違反していると判断された。


公平な社会を実現していくためには、人種・民族・ジェンダー・信条などの多様性に配慮することが大切であるが、多様性の実現にあたって個人の権利を重視するのか集団的なバランスを配慮するのかという両者の対立は容易に解決できないだろう。


参考文献

「広辞苑 第5版」 岩波書店

「百科事典 マイペディア」 日立システムアンドサービス

「ポジティブ・アクションの可能性」 2007 ナカニシヤ出版 田村哲樹 金井篤子編


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