アメリカの大学2
出典: Jinkawiki
アメリカの大学として、ここではアメリカの大学の特徴について解説する。
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概要
アメリカには設置要件や必置科目の指定、あるいは新規定として機能する諸根拠法規によって全国の大学を画一的に統制する、日本の文部科学省のような中央機関は存在しない。大学の設置を許可したり、あるいは既在大学の監督をしたりするのは州の権限である。したがって、アメリカの大学は州ごとの違いがでやすい。個々の自立性も高い。つまり、アメリカにおける高等教育の世界は、その多様性の特徴としているのである。もちろん、そうはいっても、大学が大学として機能するためには、それなりの共通性や標準的なあり方があることも確かである。アメリカの大学に多様性をもたらしているのは、制度面というよりも、その制度が大学自体や大学内における学部などの諸部門に高度の自立性、あるいは発言力を与える形になっているために、大学の実際の運営がそうした諸部門の間の複雑で流動的な相互交渉の中でなされているためである。
大学の設置主体
州立大学の場合には、その設置主体は州にある。州立大学の最高決定機関には主権者である州有権者の意志が何らか形で反映される仕組みとなっている。しかし、州立大学はいったん設立されると法人格を持ち、大幅な自治権を有することになるため、州政府や議会といえども自由に大学をコントロールすることはできない。 これに対して、私立大学の場合には、もちろん州政府は直接その設立に関わるわけではない。しかし、その設立を最終的に許可するかどうかは州立法部の権限である。すなわち、大学を作ろうと思う民間団体は、そのために州から設置許可状をもらわなければならないのである。これは自治体を設置する場合と同様で、これによって設立される機関は法人格を獲得する。いったん法人格を取得した以上、その私立大学は州法にしたがっている限り州当局の介入を受けることはない。
大学分類
・研究大学
博士課程の大学院を持ち、研究面で高い評価を有する大学のことである。研究大学はどこも研究面で強い競争力を持ち、博士課程のプログラムに力を入れて研究者の育成にもその力を発揮している。当然のことながら、そのような研究面での実力は、全国的な知名度と結びついている。アメリカ全土から、あるいは海外から優秀な学部学生を引き付けているのである。特に、私学の有力研究大学の場合には、どのレベルでも全国的なマーケットで競争力を持っており、研究大学は同時に、全国大学としても位置付けられるのである。
・教育中心大学
このジャンルの大学はどこでも教育に大きなウエイトが置かれ、教員には研究上の業績も要求されはするものの、その要求の程度はそれほど厳しくない。学術研究の面で国際的な競争力を持つ大学はあまりない。リベラルアーツ大学と地域型教育中心大学とに分けられる。
・リベラルアーツ大学
学士教育に特化した四年制の大学である。ほとんどは私立で、少人数の学生にきめ細かな教育や課外指導などの各種サービスを行っている。全寮制をとっているところも多く、一般的には授業料が非常に高いので、上・中流家庭の子女向けとなっている。典型的なリベラルアール大学では、提供される教育プログラムは特定職業との結び付きを意識しない、学問中心のものばかりである。教員には小規模大学の特性を活かして学生の学習意欲を向上させ、同時に学習技能、初歩的な調査研究スキルの涵養にあたることが期待されている。したがって、教員の評価はまずもって教育上の貢献について行われ、学生の授業評価も重視される。
・地域型教育中心大学
リベラルアーツ大学が全国的な認知とマーケットを有しているのに対して、それぞれの地域における比較的狭いマーケットに対して高等教育というサービスを供給している大学である。
入試制度
大学入学についての統一的な規定はなく、各大学の定めた入学要件にしたがって入学者の決定が行われているが、多くの大学がSAT (Scholastic Assessment Test)、ACT(American College Test Program)の受験を義務づけているなど、共通する部分も多い。
1.決定方式
(1) 基準以上入学型(Selective) ハイスクールの卒業資格のほか、ハイスクールでの特定科目の履修と学業成績、及び適正テスト(SAT 又はACT)の成績等において、大学が定めた基準を満たした者を全員入学させるもので、多くの州立大学の入学方式がこれに含まれる。
(2) 競争型(Competitive) 入学希望者が定員を大幅に上回るため、ハイスクールの卒業資格のほか、高いレベルの学力あるいは特定の資格を有する限られた数の入学者を選抜するもので、一部の有名私立大学などで用いられている。
(3) 開放型(Open) 成績等に関係なくすべてのハイスクール卒業資格を持つ者に入学を認めるもので、短期大学(コミュニティ.カリッジ)などで行われている。
2.応募要件
(1) 年齢要件 年齢による入学制限はない。
(2) 学力要件 基準以上入学型又は競争型の入学方式をとる大学では、高校での特定の科目(特に英語、数学等の主要な科目)の履修及び一定水準以上の学業成績(通常は、A、B、C、D、Fの5段階評価のうちC以上)を入学要件としている場合が多い。
3.入学者決定方法
出願に際し、志願者は入学を希望する大学に願書のほか、ハイスクールの学業成績、ハイスクールからの推薦状、学力適正テスト(SAT 又はACT。大学がテストを指定している場合や、どちらを受験しても良い場合がある。)の得点、小論文の提出が求められ、この他に面接が課される場合もある。 各大学では、この情報をAO(アドミッション・オフィス)と呼ばれる入学担当事務局の専門職員(アドミッション・オフィサー)が総合的に判断し入学者を決定する。
・SAT (Scholastic Assessment Test ) 大学入学試験委員会(CEEB)がアメリカ最大の民間テスト機関である教育テスト事業団(Educational Testing Service:ETS)に委託して実施している。 テストは言語領域と数理領域の2領域(それぞれ800点満点、合計1600点満点)であり、大学進学後の学業上の成功の可能性を評価するもので、ハイスクールの教育とは直接的な関連性を持たないとされている。なお、回答は基本的にマークシートによる多肢選択方式である。 テストは全国一斉に実施(2000年度は7回:2000年10月、11月、12月、2001年1月、3月、5月、6月)され、受験資格及び受験回数に制限はなく、年間の受験者数は200万人を超えている。
・ACT(American College Test) アメリカ大学テスト事業団(American College Test Program)が実施している。 テストは英語(45分)、数学(60分)、読解(35分)、科学的推論(35分)の4領域であり、ハイスクールにおける学習の成果を測定することを目的としている。なお、回答は基本的にマークシートによる多肢選択方式である。 テストは全国一斉に実施(2000年度は6回:2000年9月、10月、12月、2001年2月、4月、6月)され、受験資格及び受験回数に制限はなく、年間の受験者数は約100万人である。
参考文献
・アメリカの大学 谷聖美著 ミネルヴァ書房
・大学のアメリカ・モデル 江原武一著 玉川大学出版部
・アメリカ合衆国における大学入試制度の概要 www.kantei.go.jp/jp/kyouiku/3bunkakai/dai3/3-3siryou4.html
(投稿者:TR)