アメリカ医療問題
出典: Jinkawiki
アメリカは世界で最も豊かな国であるが、他方、膨大な貧困層を抱え、極めて貧弱な福祉政策が行われているに過ぎない。アメリカ人で最も多くの給料を得ている人10%と、最も少ない人10%の格差が、1979年には3.6倍だったのが、96年には5倍に広がっている。今はもっと大きなものだろう。しかし、大企業の経営トップと平均的な社員とでは350対1というケースもあるという。
―アメリカで起きているシビアな現実…―
アメリカに「国民健康保険」に類する制度は無い。老人や貧困層のために最低限度の保障制度があるくらいだ。後は民間企業の保険に加入しなければならないのだ。医療現場に市場原理主義を持ち込むほどのお国柄なので、競争原理が働いて医療費は安くなる、と思われがちだが、実態は正反対なのだ。競争原理が働く、とは、保険会社も製薬会社も病院も患者も対等である、という大前提がなければならない。現実には有り得ないことだ。アメリカの現実は、寡占状態の保険会社が患者と病院を支配する、という問題がある。アメリカの保険会社は、まず加入の段階で既往歴などを調べ上げ、リスクの高い人間を締め出す。病気にかかって給付の段階になれば、既往歴の申告漏れなどを指摘して契約解除したり、治療の必要性を徹底的に査定して給付を減額しようとする。査定すればするほど、保険会社の担当者はボーナスが多くなるほどだ。病院も過酷な競争原理に晒される。株式会社となれば利益率を出すのが史上命令から患者に施す医療を切る詰めるほど、利益が出る。リスクが高く、採算の取れない救急外科や産婦人科をリストラするしかない。看護師の人件費抑制で過酷な勤務が続き、医療過誤が発生する悪循環も指摘されている。
―アメリカの自由診療~損害保険料の高騰と過剰医療で費用が割高に―
アメリカの医療の基本は「自由診療」で、「日本でも健康保険なしで治療すると割高になる」くらいなので、構造的に割高になってしまう。アメリカは訴訟リスクを常に抱えていて、医師らが負担する損害保険料も莫大なものとなる。訴訟リスクを恐れて医療行為そのものが過剰となり、さらに医療費を高騰させるのだ。
社会保険の範囲が小さく、民間保険と医療機関相互の競争など市場原理をメインとしている点で世界の中でも特異なシステムをとっている米国では、高度医療の発達や医療機器の進歩では世界一となっているが、医療費については高騰に悩まされ、マネジドケアなど数々の医療システム改革にも関わらず、貧困層への医療供給は制約されて平均寿命も先進国の中で低い状況の反面で、国民の所得の多くが医療費に注ぎ込まれているという特徴があらわれている。
<参考資料>
http://www.h3.dion.ne.jp/~japaner/us/us-2.html
http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/1900.html
http://www.asahi-net.or.jp/~fl5k-oot/kokukyo2010-2.pdf
投稿者 Toy