アリとキリギリスとグローバル化

出典: Jinkawiki

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アリとキリギリス

イソップ寓話の一つ。 夏の間、アリは一生懸命に働いて巣の中に食糧を蓄えていたが、キリギリスの方は働かずに音楽を演奏したりして遊んでばかりいた。 そして冬が来たとき、アリの方は夏の間にためておいた食糧のおかげで冬の中で温かく過ごせた。 一方キリギリスは何の蓄えもなかったので凍えてしまい、アリに助けを求める羽目になったが、アリに断られてしまう。 こういった話である。

これを両者が取引関係があると仮定する。 アリは生産部の一部を一生懸命働いてキリギリスに販売する。 キリギリスはそれを消費し、代わりに借金か音楽を聴かせる。 ところが冬が来ると状況は一変する。

アリは生産物を売ったことによって結局蓄えたものはキリギリスの借用書である。 キリギリスは音楽も意味のないものとなり、その上この先再びアリが借用書を受け入れてくれるだろうか、と不安になる。

つまり、現実的なものにしてみるとアリが中国・日本といった輸出主導で経済成長を維持してきた国や地域といえる。 そしてキリギリスが米国などの内需主導で経済成長を維持してきた国といった具合にたとえられている。

グローバル化の下で続いてきたアリとキリギリスの共存関係はキリギリスにおける資産価格バブルの破綻をきっかけに崩れてしまった。


アリの特徴・キリギリスの特徴

アリ型:経常収支黒字体質で、輸出主導で成長を維持。国内総与信はさほど拡大しておらず、海外からの尺乳にもさほど依存していない。     日本やドイツ・フランス・イタリア・オーストリアなどが先進国の中ではあてはまる。

キリギリス型:経常収支は赤字で、内需主導で成長を維持するため、国内総与信を拡大している。        その結果、海外からの尺乳への依存も拡大。               スペイン・アイルランド・米国・英国・スイスなどがあげられる。


発展途上国、とくに経済機構がアリ型で人口の多い大国の相対的な経済的優位性が高まり、経済力が強くなることが予測されている。 中国やブラジルがその典型的例である。


グローバル化

経済のグローバル化によって金や情報あるいはモノやサービスなどの交換流通・売買・貸借の取引が国境を越えてできるようになったこと。 富や情報を世界と共有でき、すべての問題が解決しやするなくという楽観的な見方もあるが、そのことがかえって大きな変革をもたらし、大きな負荷にもなりえる。 その背後には個人や自分の生活、他者や世界、地球をどう考えるかという、スタンスの変化を意味している。

結局、強者と弱者が棲み分けて生活するものではなく、同じ土俵に上がって競争し、勝負することを強いられる世界でもある。 それによって格差が縮小されるのか、ますます深刻化するのかはわからないのだ。


グローバル化の恐れ

世界全体で起きている流れを捉え、その流れを前提にして各国経済の問題や人々の生活、環境問題をまず考えるのがグローバル化の分析の傾向である。 巨大グループや上位グループを「変えられない」条件として受け入れ、小さなグループの行動を考えるようになるからだ。 そうなると、マクロ視点が強すぎて個人が本来有している多様性を見失ってしまう恐れがある。


本当に必要なもの

「可視社会」における人と人との関係が必要である。 それがあることで他人とかかわって生きている実感を得られ、グローバルな競争に人々を駆り立てなくても豊かな社会を構築できるはずなのだ。 24時間眠ることを知らないグローバルな競争よりも人間の精神を豊かにする社会を構築していくことが求められている。


<参考文献>

中井浩之(著) 『グローバルか経済の転換点 「アリとキリギリス」で読み解く世界・アジア・日本』 2009年 中公新書

高橋伸彰(著) 『グローバル化と日本の課題』 2005年 岩波書店

青木 保(著) 五十嵐 武士(著) 岡本 真佐子(著) 片倉 もとこ(著) 李 御寧(著) 福原 義春(編集) 樺山 紘一(編集)  『解はひとつではない―グローバリゼーションを超えて』  慶應義塾大学出版会株式会社


(投稿者:dorothy)


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