アルコール酩酊

出典: Jinkawiki

概要

医学的に中枢神経作用を持つ薬物の急性中毒のことを酩酊状態という。具体的には千鳥足、呂律が回らないなどの身体麻痺症状、多幸感・陶酔感などの感情を伴う意識障害一般が起きている状態である。大麻や有機溶剤でも酩酊状態を露呈するが、一般的に酩酊といえばよく知られている飲酒による酩酊、アルコール酩酊を指す。酩酊状態の基準は国ごと学者ごとによって多少のばらつきがみられる。スウェーデンのリンドクヴィストは血中アルコール濃度150㎎/dl以上としており、ハベルマンは血中アルコール濃度100㎎/dlとしている。この基準の違いが問題視され、少し前にWHOが血中アルコール濃度150㎎/dlとしたが最近ではこの基準による混乱の増長がまた問題視されている。

酩酊分類

ビンダー(1935)は次のように酩酊状態を分類している。

①単純酩酊

急性のアルコール摂取に対する正常範囲内変動における普通一般の反応である。感覚感受性の後進や多幸的基礎気分の増大を特徴とする生気・精神的興奮期の後に千鳥足などの身体まひ症状が特徴の麻痺期へ移行。記憶障害は比較的軽度、重大な犯罪が生じることがあっても誘発的役割にすぎない。刑事責任能力は完全有責である。異常と呼べない経過型、正常者だけでなく異常性格者にも出現しうる。抑制が利かなく、遠慮もなくなる、傍若無人な行動、叫びなどがみられる。入眠時まで続き 記憶は完全で正常である。

②異常酩酊

A 複雑酩酊 単純酩酊からの量的異常で、症状と経過が特徴。生気的な激しい興奮が出現、人格異質的な暴力的運動発散が生じる。錯覚や被害妄想が生じても現実意識を動揺させることはなく真の妄想や幻覚は出現しない。憤怒の放散、コンプレックス傾向の脱抑制がある。重大な情動犯罪や突発的な自殺が起きる場合がある。限定刑事責任能力が原則認められる。

B 病的酩酊 意識障害が単純酩酊や複雑酩酊とは質的に異なる。

ア もうろう型 見当識の根本的障害

イ せん妄型 幻視や幻聴の存在

ウ 幻覚症型 

行為は人格異質的で現実意識が欠如、周囲の状況から了解不能である。記憶障害も著しく全健忘。不安や妄想、幻覚から重大な情動犯罪がなされる。 刑事責任は原則、無能力である。

アルコール症

以前までは「慢性アルコール中毒」という言葉が使われていたが、診断基準が不明確で多義的となり、個人や社会に害を与える飲酒のすべてに使用されていったことにより1976年にWHOにより「アルコール中毒」の用語が破棄され「アルコール依存(症)」の名称が提唱された。また身体疾患、肝障害、膵炎、痛風、高血圧、糖尿病などアルコールによる病気や障害などもまとめて「アルコール関連疾患(障害)」となった。 アルコール依存症とは乱用と依存であり、その頻度、重篤度が進行段階を決定する目安である。具体的に乱用はコントロールを失った統制欠如ないし連続飲酒発作によって、依存は種種の離脱症状によって代表される。しかしいまだにアルコール依存症自体の原因は解明されていない。 米国では人口の6割が飲酒しており、成人人口の1割が依存症。日本では昭和62年の段階で依存症患者22000人、成人人口の4%弱が治療を受けてない患者であるとされた。


参考文献

アルコール犯罪研究 影山任佐 金剛出版

よくわかるアルコール依存症 その正体と治し方 森岡 洋 白揚社

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