インドの大気汚染
出典: Jinkawiki
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インドの大気汚染の現状
ほとんどの人が「大気汚染の深刻な国」と聞いたら、中国だと考えるだろう。しかし、その中国を上回る大気汚染の深刻な国が“インド”である。インドは1990年代の後半から、経済成長が著しく、巨大新興国となっている。インドの中でも最も深刻な状況がデリー首都圏である。デリーは、微小粒子状物質(PM2.5)の濃度が世界最悪レベルである。世界保健機関(WHO)が91の国・地域1600都市を対象に行った大気汚染調査を2014年5月7日に発表した。それによると、PM2.5による汚染が最も深刻な20都市のうち13都市をインドが占めた。また、2013年のPM2.5 の平均濃度は1立方センチメ―トル当たり153マイクログラムとWHOが基準としている平均10マイクログラムを15倍も上回っている。中国の北京と比較すると、北京の3倍である。
大気汚染の原因
大気汚染の原因とされて主に3つが挙げられる。
1、自動車排気ガス ガソリンが安いためにディーゼル車の爆発的な増加が起こっている。経済成長に伴いデリー首都圏を走る車の数は2002年から2010年の8年間の間で以前の倍にまで増えた。首都圏だけだ、車が毎日1400台ずつ増えている。毎日、120万台を超える車がデリー首都圏を走っている。これにより、多くの場所で交通渋滞が発生しており、より多くの排気ガスが排出されている。
2、火力発電 経済発展に伴い電力需要が増加した。また、現在でも多くの人が石炭を利用しており、灰色の煙が空を覆い尽くすように広がっている。
3、生物燃料 現在でも、薪炭材、牛糞などの非効率な燃焼を行っている。
健康への影響
これまでに日本の四大公害病のようなものは、発表されていない。しかし、大気中に浮遊するさまざまな粒子状物質のうち特に微小なもののほとんどは、呼吸器系に沈着して、健康に悪影響をもたらす。粒子状物質による健康被害としては、短期には、目・鼻・喉の刺激症状、長期には、呼吸器系疾患・循環器系疾患になる。慢性化すると、肺がんなどにつながる恐れがあるので注意しなければならない。
2015年2月にアメリカのシカゴ大学やハーバード大学などの研究チームが、インドは大気汚染により同国の人口の約半数である6億6000万人の寿命を約3年縮めていると発表した。シカゴ大学の研究者は、大気汚染により経済成長が阻害されることを指摘した。また、大気汚染を低コストで軽減するために罰金を行うべきであると示している。
その他の影響
近年、デリーなどでは、気温が下がる冬の夜間から未明にかけて地表の上昇気流がなくなりPM2.5などの有害物質が停滞するために北京などのように「濃霧」に包まれている。このため、デリー空港は視界がほぼゼロとなり、多くの便が欠航や遅れとなる。また、近郊の空港に目的地を変更した旅客機が濃霧のために、着陸時に翼の一部を折るという事故を起こした。
インド政府の対策
上で述べたことを受け止めて、インドの中央政府は、デリー当局に対して早急に問題解決を図るように指示した。インド政府は対策として以下のことを行っている。
・大気汚染防止法と環境基準の制定
・大気汚染のモニタリング 国家大気汚染観測プログラム(NAMP)に基づき、インド国内の530都市で観測を行っている
・自動車排気ガス対策 旧型の公共交通車両を圧縮天然ガス(CNG)対応に転換 など...
だが、これらは依然として抜本的な解決策とはなっておらず、都市近郊を中心に汚染は深刻化している。
参考・引用文献
環境汚染・対策情報局 2015年3月11日 深刻なインド大気汚染、6億人超の寿命3年縮む 基準値10倍http://blog.livedoor.jp/gnetcom-environmentalpollution/archives/7836840.html
環境汚染・対策情報局 2015年3月26日 もう無視できない インド「世界最悪」の大気汚染 http://blog.livedoor.jp/gnetcom-environmentalpollution/archives/7858928.html
産経ニュース 2014年1月9日 インド 過去4年で大気汚染最悪 空の便大荒れ http://www.sankei.com/world/news/140109/wor1401090013-n1.html
在インド日本国大使館 平成25年11月6日 インドの大気汚染と粒子状物質(PM10及びPM2.5)について http://www.in.emb-japan.go.jp/PDF/pollution_11_2013.pdf
東京海上日動リスクコンサルティング株式会社 2015年1月14日発 インドにおける大気汚染問題と企業に求められる対策 http://www.tokiorisk.co.jp/risk_info/up_file/201501141.pdf
S.K