エフタースコーレ5

出典: Jinkawiki

目次

エフタースコーレとは

授業料は有料で、国民学校の8年生から10年生の生徒を対象としている。デンマークでは中学卒業後に勉強に自信のない子供、将来を考える時間の欲しい子供は選択制で年間高校入学前に10年生と呼ばれる時間を確保することができる。国民学校卒業後の1年間、自分の進路を考えたり、学び直しをしたりしている場所である。エフタースコーレでは1校に平均100人の生徒が在籍し、全体の60%が10年生を過ごす場として利用している。 デンマークでは約260校あり、全体の約3割の生徒が経験する。1万7000人の生徒が在籍している。コペンハーゲンには2校のみ存在する。


歴史

エフタースコーレは1851年に設立された。既存していたホイスコーレとN.F.S.グルトガントヴィ(N.F.S Grundtvig)の提言したアイディアを基に、公立学校が提供するシステム化された普通教育とは違う。自己を理解し、人生をより豊かにし、市民性や地球市民性を育てる教育を提供することを目的としている。


学校の特徴

デンマーク教育の大きな特徴として挙げられる「回り道」ができる教育の代表的なものである。 14歳から18歳までが通う、1年間の全寮制の私立学校である。進路選択という重要な時に将来のキャリアを深く考える機関が設けられていることはデンマークの教育システムの大きな柱となっている。 学校の規模が小さく、生徒と教師が密接な関係を築いている。その背景には校長と副校長は夫婦の場合が多いため昔の農業コミュニティーのように、大家族のような関係を築いている。それに加えて全寮制であること、朝から夜まで教師が学校に在籍していることも挙げられる。 学校には政治・宗教の自由が認められており、学校の規模が小さい分、各学校の特色が豊かである。例えば、スポーツに特化した学校や音楽に力をいれている学校などがある。昔は音楽や演劇などに力を入れた学校が昔は多かったが、近年では人気がなくなりつつあり、その代わりITやビジネスに注目が集まっている。そのため、ビジネスのクラスを増設した学校もある。 人気校では、入学の3年以上前には満員になることもある。


授業費用

授業費用の3分の2は政府によって賄われ、保護者が3分の1を支払うこととなる。3分の1ではあるが、年間で6000~1万2000ユーロの学費がかかるため決して安い学費ではない。家庭環境や生徒の状況によって援助が受けられる場合もあるが、稀である。


教員

各学校が様々な分野に力を入れているため、その分野に特化した教師が在籍する傾向にあり、教員としての経験と知識があれば、教員免許が必須ではない。例えば、スポーツ選手として活躍していた人、プロの音楽家を目指していた人など多岐にわたる。授業を教えるだけでなく、生徒一人一人のスーパーバイザーとしての役割も持つ。平日は教師と生徒の関係を持ち、休日になれば友達のように一緒に映画を見たり、ピクニックに行ったりするなど、メリハリをつけている。 卒業後も生徒と連絡を取り合うなど信頼関係を築いている点が公立学校と比べて特徴的である。


学校生活

生徒は2人から4人で部屋を共有し、衣食住を共にする。食事の配膳作業や片づけ、掃除など生活上必要なことは全て生徒が分担して手伝っている。授業の代わりに手伝いを優先させることもある。当たり前にされてきたことをすることで、両親へのありがたみを感じたり、仕事を通じて自分の存在価値を見出したりしていく。これらの活動から、社会性や協調性を育てている。 国語、算数などの基礎的な学習と、芸術やスポーツなどの課外学習とを午前午後で約半分の割合で行っている。生徒は勉強をしながら、新しいことに挑戦することで、自分の将来を明確にしていく。一方で、勉強をしないで牧場で牛の世話をしたり、海外旅行に行ったりすることもある。そのことで、自分自身を見つめ直すことを目的としている。非常に積極的に1年間、意図的に勉強しないことによって、自分の人生について振り返ろうというデンマーク人の考えもある。


エフタースコーレ卒業生の進路

エフタースコーレに通った子供たちは社会に出た時にチームワークの必要となる仕事に就いたり、ボランティア活動に参加したりする傾向がある。


メリット

新しいことに挑戦し、家族以外の人と衣食住を共にすることによって、集団の中での自分を発見することができることである。学校生活を通して自分の将来が明確になることが多く、自分の目標や夢にあった進路や高校を選ぶことができるため、他の子供と比べ、成績が良かったり中退が少なかったりする傾向がある。学校内での問題も自分たちで解決することで、社会での協調性が育つ。


近年の課題

2つの課題がある。以前は比較的学校で問題のある子が通う学校であった。未だに偏見を持つ両親や祖父母も多く、都市部から通う子供が少ない。コペンハーゲン近郊でエフタースコーレに通う子供の割合は5%で、その他の地域からは35%と差がある。1つ目は都市部への浸透を行うことである。2つ目は社会の要求に適した学校づくりを行うことである。公立学校が以前より課外活動が充実してきたため、今後は公立学校との差をつける。


参考文献

・灰谷俊樹(2000)『第3の教育-突き抜けた才能は、ここから生まれる』PHP研究所 ・学研キッズネットfor parents「生き方を考え、学び直しができる教育のしくみ」 https://kids.gakken.co.jp/parents/learning/denmark01/ ・北欧研究所「デンマークの保育・教育制度」 http://www.japanordic.com/assets/wp-content/uploads/2017/02/1.pdf


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