エリザベス・クレイ

出典: Jinkawiki

 エリザベス・クレイはノースシアトルコミュニティー大学の「親担当教育者(parent educater)」である。また親、保育者、そして子どものための15冊の著者であり、「ペアレンティング出版」会社の社長でもある。子どもが感じている「違い」とその対応方法について研究し、「子どもの質問に答えるための10のガイドライン」をつくった。

子どもの質問に答えるための10のガイドライン

 保育園の子ども達は持ち前の好奇心によって自分の回り、社会の情報を集める。一般に、保育者や親は、質問に適切に答えることで子どもの興味をさらに引き起こさせる。しかし度々、子どもの諮問にどう答えてよいか分からなくて、大人は戸惑ってしまうことがある。例えば身体的な違い、民族・人種の違いに対する質問は多くの大人にとっては答えるのか困難だろう。子どもはまた、このような人々に大人がどのように対応するかを観察し、そこから情報を得る。質問に対して、もし私たちが不快な感情を示したり、無視したりした場合は、その質問が何か子ども達にとって、あるいは他の人々にとって悪いものであると結論付け、また違いをもった人間には何か悪いことがあると結論付けてしまう。このような返答困難な質問に対する対処の仕方と、異なったところのある人々と快適な関係をもつための10のガイドラインを以下に挙げる。

(1) 即座に答える

 可能ならばすぐに答える。そうできない場合には、いつ答えるかを話す。それから時期がきたらその問題を取り上げ、質問に答える。もし子どもが質問を忘れている場合、私たちはしばしばその問題を避けようとする傾向がある。そのことが子ども達には、その質問がものすごく難しいことなのか、あるいはそのことを取り上げるのが不快なことであるのだという情報を与えてしまう。

(2) 単純明快に答える

 ピアジェは、幼い子どもは自分の経験したことや観察したことにきっちり関連させた簡単な答えを要求すると言っている。「どうしてあの子は色が黒いの?」「白いの?」との問いには人種ということについて答える前に、家族がみんなそうだからと答えるほうがよい。同様に、「なぜ、あの人あんなに小さいの?」との問いにも遺伝や人種といった言葉を持ち出さず、家族がそうだからと答えるのがよい。なぜなら、保育園の子どもには遺伝とか人種についてはまだ理解できないからである。

(3) 言葉はもちろん仕草でも相手を尊敬する態度を示す模範になる

 好感の持てる知らない人に対して自然に微笑みかけているように、微笑みながら相手に視線を合わせる。障害をもった人に対しては自分の仲間の人たちに対するのと同じように対応する。例えば車椅子に乗っているというだけの理由で、精神的にも無能力だとみなす行動は避けなければならない。子どものそのような質問には答えてあげるよりも、子ども達自身に答えさせるとよい。

(4) 障害をもった人の身体の一部(器具)を尊重する態度を示す

 車椅子の人に対しては、その人や車椅子にもたれかかってはいけない。子ども達は本人の許可なしに松葉杖や歩行器を使用させないよう指導する。さらに、他の人たちにはしないようなやり方で障害のある人に触ったり、軽く叩いたりしたくなる気持ちをいさめる。

(5) 子どもの持つ恐れの気持ちを認める

 子どもの中には自分たちと異なった人々に近づいたり、何か話し合うのに気が進まない子どもがいる。これは異なった人たちに対する恐れや間違った概念に基づいていることが多い。このような子ども達は初めての人、何か自分たちと違った人に対して抵抗を示す。なじみのない人々に対してはだんだんと快適な関係になっていくように、ゆっくり、優しく導いてあげる必要があるのである。

 障害をもった人々に対してもつ「恐れ」については、他の恐れと同様最善の方法で対処されなければならない。子ども達に知識を与え、その恐れに対処できる玩具をあがえる。子ども達に「恐がることなど何もない」と告げるだけでは効果がない。もし子どもにプレッシャーをかけた場合、その子どもは、二つの問題を抱くことになる。「その子ども自身の恐れ」と「保育の非難」である。この問題の助けになる方法の一つとして、子どもの気持ちを汲み取り、その恐れに対処する経験を与えることである。

(6) 間違った概念を明らかにして正しい知識を与える

 子どもは、障害を持った人々に対して間違った概念を持つために恐れを抱くことが多い。子ども達の多くは、自分が悪いことをすると悪いことが起こると思っている。子ども達の目には、目に見える障害をもった人はとても悪いことをしたに違いないと映るのである。

 もう一つの一般的な間違った考え方は、障害をもつということが遺伝すると思っていることである。これに対応する最良の方法は、子ども達の間違った概念を明らかにすることである。子どもたちが関心を持った時点で、正しい情報を与える。

(7) 助けを申し出て、障害をもった人にどんな助けが必要がをたずねる

 障害をもった人も、自分は魅力的であって周りに受け入れられていると感じたいのは皆同じである。人々が障害をもった人々に対して何も聞かないで何かしてあげようとすると、障害を持った人は、障害をもった人々がそのことができないか、あるいはまたそれをするときに助けを必要とするかどうかを判断する能力もないというメッセージとしてそれを受け取ってしまう。

(8) 障害をもった人々に対して寛容ある態度を示す模範となる

 障害をもった人にはその人が必要とする時間を与える。例えば、話すことに障害をもった人と話をするときは、ずっと連続して耳を傾ける。助けを出して話を完結させるのではなく、最後まで話をさせる。手助けをすると、話し方に何か問題があるというメッセージになる。

(9) 書物を通して違いを紹介しておく

 子どもによっては、違いをもった人々についてあらかじめ学んでおくほうが驚きが少ない場合がある。

(10) 障害をもった人々と共に過ごす経験を子ども達に与える

 子ども達が自分と「異なった人」に対して疑問を持ったときには、その人に尋ねるようにさせることを考える。障害をもった人々は大抵喜んで子ども達を教育する機会をもってくれるだろう。

参考文献

ボニー・ノイゲバウエル著 谷口正子、斉藤法子訳 『幼児のための多文化理解教育』 明石書店 1997年


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