オタワ条約
出典: Jinkawiki
概要
オタワ条約(対人地雷全面禁止条約) NGO(非政府組織)が生んだ条約。 1997年、カナダのオタワで125カ国により調印。1999年に発効した。締約国の対人地雷の使用、開発、生産、取得、貯蔵、移転を全面的に禁止。地雷の撤去、破壊への国際的協力を目的とする。 締結国は条約発効から4年以内に貯蔵している地雷を廃棄し、10年以内に埋没している地雷の除去を義務とする。 カナダ政府はICBL(地雷禁止国際キャンペーン)と合同記者会見を開き、「1996年、NGOと全面禁止賛同国だけで、オタワ会議を開こう」と呼びかけた。条約案に賛成する国だけで、まずは条約を発効させた。これは、大国への交渉難航を避け、不参加に圧力をかけようとする方策がとられている。この方策は「オタワ・プロセス」と呼ばれ、国際的にも評価も高い。 1998年9月、日本は45番目の批准国へ。今も地雷を生産する米、露、中、印、パキスタンは調印せず。
対人地雷
大型の「対戦車地雷」は戦車の破壊を、小型の「対人地雷」は人間の殺傷を目的とする。 対人地雷は火薬量が少なく、わずかな重量で爆発する。 対人地雷は人を「殺す」よりも「けがをさせること」に重点をおいているため、威力は成人男性の手足を吹き飛ばす程度に抑えられている。負傷者が出た場合、救助、病院までの移送、治療、その後の生活保障等、長期間において、人的や経済的負担をかけ、敵対勢力を弱めることを可能とした。その方が戦略に有効だからだ。「悪魔の兵器」と呼ばれる。ほとんどが男性より子どもや女性が、医療機関に行く途中で命を落としている。 対人地雷は紛争や内戦の発生した世界71カ国にほぼ1億2000万個埋められているといわれる。年間2万5000人、毎日70人の死傷者を出している。しかも、そのほとんどが子どもを含む民間人である。
地雷1個の製造は、3ドルから30ドルで簡単にできるが、撤去には300ドルから1000ドルもかかる。地雷を取り除く作業はなかなか留まらない。現在5000人が毎年約10万個を除去する作業を行っている。 陸上自隊のもつ100万個の地雷は、2003年1月に廃棄を完了。このペースで地雷をすべて撤去するのに、1100年もかかってしまう。
本文 規定概要
一般的義務(第1条) いかなる場合にも、 1)使用、開発、生産、取得、貯蔵、保有及び移譲並びにこれらの援助、奨励及び勧誘について禁止。 2)条約の規定に従ってすべての対人地雷を廃棄。
定義(第2条) 「対人地雷」、「地雷」、「アンチ・ハンドリング・デヴァイス(処理防止の ための装置)」、「移譲」、「地雷敷設地域」につき定義。
例外(第3条) 地雷探知・除去・廃棄のための技術開発・訓練のための保有、移譲は例外。
貯蔵されている対人地雷の廃棄(第4条) 所有する又は管理・管轄下の貯蔵する対人地雷について、当該締約国に対する効力発生後4年以内に廃棄。
地雷敷設地域における対人地雷の廃棄(第5条) 管理・管轄下の地雷敷設地域内にある対人地雷について、特定し、文民保護措置をとるほか、当該締約国に対する効力発生後10年以内に廃棄(締約国会議等の承認の下、更に10年以内の期限延長・再延長も可能)。
国際的な協力及び援助(第6条) 地雷除去、犠牲者支援等における国際協力・援助。
透明性についての措置(第7条) 寄託者たる国連事務総長に貯蔵数、地雷敷設地域、廃棄計画等を報告。
遵守の促進及び遵守を明らかにするための説明(第8条) 寄託者及び締約国特別会議を通じて他の締約国の条約遵守について確認を要請。締約国の3分の1以上の賛成で締約国特別会議開催。締約国特別会議は事実調査使節団を派遣可。事実調査使節団は調査結果を締約国特別会議に報告し、同会議は是正措置等を勧告可。
国内の実施措置(第9条) 締約国は、違反の防止・抑止のため、刑罰を含めあらゆる適当な措置をとる。
紛争の解決(第10条) 締約国は条約の適用、解釈に関する協議・協力等を行う。
締約国会議(第11条) 発効後5年間は毎年開催。条約の適用・実施に関する検討。
再検討会議(第12条) 発効後5年後等に開催。条約の運用及び状況の検討等。
改正(第13条) 締約国の過半数の賛成で改正のための会議を開催。3分の2の賛成で改正を採択。
費用(第14条) 締約国会議、締約国特別会議、再検討会議、改正会議及び事実調査使節団の費用は、締約国が分担。
署名(第15条) 1997年12月3日から4日の間はオタワで、5日以降発効までは国連本部で、署名のために開放。
批准、受諾、承認又は加入(第16条) 署名国により批准、受諾又は承認され、署名しなかった国も加入が可能。
効力発生(第17条) 40箇国目の批准書寄託から6箇月で発効。
暫定的適用(第18条) いずれの国も、批准等の際に、第1条1の規定(使用、開発、生産、取得、貯蔵、保有及び移譲等の禁止)について、発効までの間も暫定的に適用する旨を宣言可能。
留保(第19条) 不可。
有効期間及び脱退(第20条) 締約国は、6箇月前の通告により脱退可能。但し、通告後6箇月時点で紛争継続中の場合は紛争終了までは脱退効果は生じない。
寄託者(第21条) 国連事務総長。
正文(第22条) アラビア語、中国語、英語、仏語、ロシア語及びスペイン語。
参考文献・引用文献
「本質が見えてくる 最新現代社会資料集」(第一学習社)
「プリタニカ 国際大百科事典」(平凡社)
「地雷問題ハンドブック」長有 紀枝(自由国民社) 「用語集 政治・経済 最新第4版」(清水書院)
[1]外務省
ハンドル名 sarasa