オプス・デイ
出典: Jinkawiki
オプス・デイ(Opus Dei)とはキリスト教カトリック教会の位階制度に含まれる属人区として設置された組織である。 正式名は「属人区聖十字架とオプス・デイ」で、ラテン語で「神の業」という意味。 現在、これに属している信者は約84,000人で、80カ国以上の人々からなり、国際的な規模を誇っている。
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[歴史]
オプス・デイは、ホセマリア・エスクリバーにより1928年10月2日にスペインで創設された。エスクリバーは、スペイン内戦中、宗教の自由が認められていたフランスを経てブルゴスに渡り、内戦後に首都マドリードに戻る。 1946年、エスクリバーはローマに住居を移し、バチカンの2つの省の顧問として任命される。1947年にオプス・デイは、ローマ教皇の認可を受ける。教皇の認可を得て、オプス・デイはスペイン国外にも広がる。 1994年4月20日から、オプス・デイの属人区長は、1932年6月14日にマドリードで生まれたハビエル・エチェバリーア司教である。 創立者のエスクリバーは2002年にバチカンで列聖され、死後わずか30年での列聖は、死後100年以上経過して列聖されるケースも多いことから、異例の早さとして話題となった。 現在、所属している信者は約84,000人で、80ヶ国以上の人々からなっている。 日本では1958年に活動を開始、現在は兵庫県芦屋市に日本の本部を置き、所属信者数は約250人である。
[組織]
オプス・デイをカトリック教会の位階的組織の一つである属人区とする使徒憲章は、1982年11月28日に教皇ヨハネ・パウロ2世によって公布された。組織やメンバーの養成については、ドミニック・ル・トゥルノー著、尾崎正明訳「オプス・デイ」に詳しい。 オプス・デイの構成員は、離婚をしていない男と女のカトリック信者である。身分、貧富を問わず、あらゆる文化、国籍の男女がオプス・デイに属している。オプス・デイの信者の約70パーセントは既婚者で、各自の日常生活、つまり仕事、家族の世話などを通してイエス・キリストにならうように努めている。 ヨハネ・パウロ2世は、ローマ中心部に教皇庁立聖十字架大学を設立し、オプス・デイに大学の指導が委任された。スペインや中南米では、政治家や閣僚、著名な経済人の中にオプス・デイの信者が活動しているケースも多い。しかし、これは一社会人としての個人の自由な思想、信条のもとで活動しているもので、各個人がオプス・デイから霊的な指導を受けるものの、政治的な干渉を受けることはない。また、オプス・デイの信徒が共同で、各種の教育事業等を行っているが、これらの活動において、オプス・デイは霊的な指導を行っているものの、施設の所有や運営等については、オプス・デイが関わることはない、とされている。
組織内は現在においても秘密主義そのものである。一応、表向きは、各自の職業、地位、生活条件の中で、キリスト教の徳を体現していくということを提唱し、個人主義的福音を唱えているようである。かつて、この結社の中にいた社会学者のアルベルト・モンカーダは、この結社の経験をもとに出版した本の中で次のように書いている。
「オプス・デイは一種の秘密組織です。社会的構造(規約)も秘密です。実際の会員数や、会員名の大半も秘密です。それに経済構造も秘密です。運用資金を追っていくとスイスの銀行にたどり着きますが、どのような財産運営をなされているのか誰も知りません。」
[精神]
仕事を始めとする日常生活のすべてを聖化し、信仰に100パーセント合致した生き方を送るよう、あらゆる条件、身分の信者を励ますことが目的である。神との親子関係とミサを精神的な基盤とし、社会の中で観想生活を営む。自由を尊重し、愛徳と協調をもってイエス・キリストを伝えることなどが挙げられる。
[苦行]
鞭や鎖を使用する肉 体的苦行は、カトリック教会においては非常に伝統的であり、かつ現代でも行われていることです。オプス・デイでは、全メンバーの約3分の1 にあたる独身のメンバーだけに、鞭と鎖を使った肉体的な犠牲を捧げる習慣があります。使用される鞭は、紐(ひも)を編んだ物で、金属やその他固い部分はなく、体に傷跡が残るような使い方ができないものです。通常、週一回、「主の祈り」などカトリックの代表的な短い祈りを唱える間、自らが加減して使用します。苦行帯として使用する鎖も、血を流すほどの苦痛を与えるものではなく、日に1 度、わずかの時間(2時間)使用するだけです。いずれの犠牲も、日曜日やカトリックの暦上の祝日には行いません。実際、オプス・デイの残りのメンバー(全メンバーの約2/3、大半が結婚生活を行う)は、このような苦行を行いません。というのも、「日常生活を通して聖人になることを目指す」のが目的であるオプス・デイのメンバーにとっては、毎日の仕事や家庭生活の中で出逢う様々な小さな困難や矛盾を利用して、神様のため、人々のために喜んで明るく感謝して生きるように努めることこそが、本質的な「苦行」であるからです。
[参考文献]
「オプス・デイ―カトリックの新しい動き」 ドミニック・ル・トゥルノー著、尾崎正明訳、 白水社