オランダ ホームドクター制度2
出典: Jinkawiki
オランダでは、どの家庭でも地域にホームドクターという担当のかかりつけ医を持ち、専門医にかかる場合、ホームドクターの紹介が必要となる。産婦人科や皮膚科に行く時も、いちいち紹介状を書いてもらわなければならず、外国人在住者からは「時間がかかる。不合理で面倒」と不満も多い。
だが、オランダ人にとってホームドクターは家族の健康管理番であると同時に、生涯の友となる。10代の頃は親には言えない避妊や性の相談に、年をとれば介護や慢性病の相談にも乗ってくれる頼もしい存在となる。医師は家族の病歴や常用薬を把握している上に、家族関係や性格も分かっているから、患者を心身両面から診断できる。
こうしたホームドクターは全国に約7千人おり、一人当たり約2千~3千人の患者を受け持つ。 また、ホームドクターに看取られて死ぬ人も多い。オランダでは、住み慣れた自宅で死ぬ人が死者総数の26%を占める。日本では8割が病院で死ぬのに対し、オランダでは病院死は約40%と少ない。このほか、高齢者専用住宅で死ぬ人は17%、医療スタッフのいる看護ホームで死ぬ人が15%。オランダ人の4割はホームドクターに看取られ、自分のベッドで死んでいく。
2000年の政府統計では、この年に届け出のあった安楽死件数2123件のうち、85%に当たる1801件がこうしたホームドクターによって行われた。これに対し、病院の専門医がおこなったのは278件、看護ホームの医師は44件に過ぎない。ホームドクターは患者の性格を熟知し、心身両面で判断できるから、安楽死という難しい判断を下すことができる。安楽死者の89%に当たる1893人は、癌患者であった。 欧州連合(EU)世論調査によると、98年、オランダで「現行の医療福祉に満足」と答えた人は70%にのぼり、EU15カ国平均の41%を大きく上回った。 医療に対する信頼は、安楽死制度の絶対条件である。