オランダ 遺体埋葬法改正2
出典: Jinkawiki
安楽死が社会に定着していった1990年、政府は王立医師と協力し、安楽死届け出制を開始した。医師は安楽死を行った後、約20項目の質問に答える報告書を提出する仕組みが定着した。安楽死の事態を透明化することで、安易な安楽死の実施に歯止めをかける狙いがあった。90年代に入り検事総長ヤン・レメリンク氏を委員長とする安楽死調査委員会が訴追しないという条件で、全国405人の医師と面談し、7千件の死亡記録を調査した。
安楽死調査委員会の報告後、CDAと労働党の連立政権は要件を満たす安楽死を行った医師を免責するため、遺体埋葬法改正案を国会に提出した。この法律は元々、人が病院以外の場所で「変死」した場合、医師が死亡証明書を出し、自治体の検視官が異常なしと認めた上で埋葬許可が下る手続きを定める内容である。 これまでの判決に沿って、医師は安楽死を行った後、
①自治体の検視官に届け出る
②検視官に対し、報告書を提出する
③検視官は所見を添えて報告書を検察に提出する
④検察長官委員会が医師を起訴するか否かを決める
という手続きが導入された。 同時に、政令で報告書に盛り込まれる項目がガイドラインとして示された。医師は「患者の苦痛がさらに悪化して、尊厳ある死が迎えられないと思ったのはなぜか」、「安楽死要請をした患者が病状について十分に理解していたと判断した根拠は何か」、「患者の要請がなく絶命させた場合、なぜそのような判断をしたのか」など約50の質問に答えなければならない。届け出は、積極的安楽死だけでなく、「患者の要請がないまま絶命」させた場合も義務付けられた。政府見解では、患者の要請がないまま安楽死させた場合でも、「不可抗力」に該当するケースはあり得るが、自決権を基本とする安楽死の灰色部分を届け出対象にしたことに批判の声もあった。
この法改定で、安楽死は刑法犯罪だが、要件を満たしていれば「不可抗力」によって違法性が阻却され、検察が起訴しない制度が法律で裏付けられた。1985年以降、要件に沿った安楽死については医師は原則不起訴とされてきたから、法は従来の手続きを明文化しただけのものとも言える。 法案は1993年に成立、翌年発行した。安楽死容認の法的枠組みがようやく実現した。