オランダの教育制度
出典: Jinkawiki
オランダには現在、シュタイナースクールやダルトンスクールなどのオルタナティブスクールが約700校(全体の7パーセント程度)あるが、これらのオルタナティブスクールにも正式な認可が与えられ、しかも公立学校と同額の公的資金が支出されている。これは「学校創設の自由」「学校方針の自由」「学校組織の自由」などの教育の自由を保障した同国憲法第23条を根拠としたものだが、これにより保護者は、過度に教育費を負担することなく、子どもをオルタナティブスクールに通わせることができるようになっている。市民には「学校創設の自由(それに伴う「学校選択の自由」)」が保障され、学校には「学校方針の自由」と「学校組織の自由」が保障されているオランダの教育制度は様々な教育思想や教育方法が共存することを可能にしているという点で、まさに教育の多様性が保障されている教育制度といえるだろう。
オランダでは同時に、「多様性」が「(何でもありの)混沌」に陥らないよう、教育の「質」も一定に保つための方策がいくつか用意されている。代表的なものとして、オルタナティブスクールを含む全学校に対して、教育監査局によって定期的に監査を受
けることを義務付けている教育監査制度が挙げられる。この制度は、監査官と呼ばれる人々が、一定の基準に従って各学校の教育
の「質」を評価するというものである。オルタナティブスクールといえども、公的資金によって運営されている以上、教育成果を
あげることを証明する責任があり、それを証明する方法が教育監査制度ということになるだろう。
自由も大切だが、ある程度のきまりや結果の保証ということも必要になるという点を考えると、オランダの教育というものは、上手く調和がとれているといえるのだろう。
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オランダの教育制度
オランダの「教育の三つの自由」
オランダでは,憲法 23条の中で,「教育の三つの自由」が保障されている。この三つのことに,国は一切口を出さない。
- 設立の自由 200人の子どもを集められれば,自分たちで学校を作ってもよい。
- 理念の自由 宗教色を出しても,他のことで特徴を出しても良い。
- 教育方法の自由 教育内容,教材の裁量権が自由。など,「教育の自由の伝統」がある。
また,オランダの学校全体の 4 分の 3 以上は私立の学校であるが,公立も私立も国の援助は,まったく一緒である。学区はなく,保護者と子は,自分の行きたい学校を自由に選ぶことができる。 義務教育は,5 歳から 16歳までの 12年間である。16歳までの授業料は無料で,保護者はPTA会費のみの負担である。たいていの子は,4 歳になった誕生日の日から学校へ行くことができる。中等教育のレベルでは,教科書とか教材を保護者が負担しなければならない。所得とは関係なく保護者には,児童手当が支給される。
初等教育
オランダの初等教育は、4歳から12歳までの児童を対象としている。この8年制初等教育においては、生徒の感情、知性、創造性の発達と、十分な杜会的、文化的・身体的能力を身につけることに重点が置かれている。 各々の初等教育学校は、政府が定めた規定に基づいて、ワークプランを立てる。学習・身体・杜会的障害者には、特殊教育や特別ケアが提供される。
中等教育
12歳から子供は中等教育を受けることができ、3種類がある。
- 職業訓練中等教育(VMBO)
- 上級一般中等教育(HAVO)
- 大学進学中等教育 (VWO)
ほとんどの中等学校では、これらの教育のうち2種類以上を提供している。VMBOは4年制で、その先は中級職業教育(MBO)に進むことができる。HAVOは5年制で、その先は上級職業教育(HBO)に進むことができる。VWOは6年制で、大学教育(WO)に続く。 中等学校の最初2、3年間は、学生は全員15教科からなる基礎形成教養課程を学ぶ。現在、オランダの17歳の若者の95.7%は、全日制の中等学校の修了者か、または在学中である。
職業教育
1996年に導入された成人・職業教育法 (WEB)は、包括的な成人および職業教育課程を提供する、地域教育訓練センターを設けた。職業教育課程は学校での学習と、実地研修から成っている。コースには2つのタイプがあり、実地研修が課程の最低20%から最高60%を占めるタイプと、実地研修が課程の最低60%を占めるタイプである。コースには4つのレベルがある。地域教育訓練センターでは、成人教育も行っている。
高等教育
高等教育には、上級職業教育(HBO)と 大学教育(WO)がある。2002年には、学士・ 修士資格制が導入された。学士号を取得するには、大学では3年、HBOでは4年かかる。学士号取得者は、修士課程へ進むことができる。修士課程は通常1から2年間で、学科により異なる。ただし医学修士課程は3年間かかる。 18歳から27歳の19.2%は全日制、そして0.8%は定時制のなんらかの高等教育を受けている。卒業後は、さらに専門を絞るなり、研究活動を行うことができる。オランダには総合大学が9校、工科大学が3校、農業大学が1校あり、それぞれ専門研究機関を持っている。
従来の学位
卒業生は、学士/修士号、あるいは従来の学位を選べる。従来は、上級職業学校(HBO)を修了した学生は、技師(Ing)あるいは学士(B)の学位を名乗ることができ、大学の理工科卒業生は技師(Ir)、法科の卒業生は法学士(Mr)、その他の学科の卒業生は博士候補者(Drs)といった学位を得る。これらの学位の代わりに修士学位(M)としても良い。学位論文を提出して博士課程を修了すると、博士(Dr)の学位を使えます。これらの学位は法によって定められ、保護されている。
成人教育
成人教育として、上記にあげたほぼ全ての教育課程が設けられている。全日制あるいは定時制で、昼間あるいは夜間のコースを受けられる。成人教育では、様々な大学教育課程をそろえた通信大学 (オープンユニバーシティ) がとりわけ重要な存在となっている。
国際教育
オランダでは、両親が外国勤務などの理由により、外国に居住し、初等あるいは中等教育を外国で受けた児童のために、全授業を英語、フランス語またはドイツ語で行い、国際学士号・バカロレア資格を取得できる学校がある。また、外国の大学卒業生が英語や、時としてフランス語あるいはスペイン語で、特別課程を受けられる高等教育機関が10校ある。
オランダの学校制度は,一人一人の子どもの個性を重視し,いずれは社会の中で自分はどういう役割(仕事)に就こうか,時間をかけて選択できる制度になっている。そのまま,日本で受け入れるわけにはいかないが,日本で最近言われている「キャリア教育」のあり方に示唆を与えてくれるようなである。一方で,移民に寛容である国であるため,イスラム系の移民や東欧諸国からの移民の経済格差からくる教育の格差の問題も,取りざたされている。