オランダの自由教育

出典: Jinkawiki

自由教育の背景

 オランダでは1993年まで初等教育や中等教育の達成目標、教科の内容について全国的に統一された基準がなかった。決められていたのは大体の科目数、授業時間数などの基準のみで具体的な中身や達成目標についての共通な取り決めはなかった。しかしオランダの自由な教育を様々な学校が行うとしても標準をどこにおくか分からなければ教育ができないという問題が生じ、1993年に小学校のための「中核目標」と中等学校の前期3年間の教育目標を定めた「基礎形成の中核目標」というものを設けた。いずれも学校で扱われる教科の種類とそこで達成されるべき学力や知識、技量の到達目標を示したものである。小学校では全国一斉の学力テストがあり「中核目標」到達の目安となっている。これは日本の学習指導要領に似ているが、内容は概略的であり教育方法については触れていなく、到達の目安のみを決めたものである。文部科学省が小学校で教えるべき教科としてあげているのはオランダ語、英語、算数、人類と世界のオリエンテーション(地理・歴史、保険・技術など)、体育、芸術オリエンテーション(図画・工作・音楽など)、という6つの領域である。これをどのように取り扱っていくのかが各学校の方針が強く反映され多様な教育方法が可能となっている。またオランダでは検定教科書がなくそれぞれが独自の教科書を作っている。そしてオランダの小学校には宿題がない。家庭や近隣でいろいろな社会関係を結ぶことがこの段階の子どもたちの学びの一環だと考えられているからだ。自由時間を遊ぶことで学んでいき人間関係も築いていくのである。これがオランダの自由教育の裏付けとなっているのだろう。しかし「中核目標」は学校の教育の自由に対する侵害である、規制の増大であるといった批判の声も少なくないのが現状である。


市民が作る学校

 オランダでは一定数の生徒が集まることを証明できれば市民団体が私立学校を建てることができる。以前までは200人を目安としていたが、小規模の学校があまりにも増え財政効率上の問題もあって、近年隣接する学校の統廃合が行われたり、人工が過密の地域ではこれより最低人数が高く設定されるなど、学校設立基準が厳しくなってきている。しかし今でも学校を建てたいと思っている市民の意思に基づく民間団体がその地域の人口密度に照らして一定数の生徒を集めることができれば私立学校を設置することはできる。もちろん一旦創られた学校も人数が基準を下回ると廃校となってしまう。この学校設立の自由もオランダの学校制度の大きな特徴である。学校の校舎や施設の提供は地方自治体に責任が負わされているので設立者は最低人数を達成することだけが条件なのである。そしていったん国許可されて設立が認められると、その学校に対する教育補助金は生徒一人あたりの額を基準にして補助金が支給される。これにより公立校と私立校の間では資金面でも受け入れ状況についてもそれほど大きな差はなくなってきている。しかし私立校では学校が提供している教育の方法や内容について多様な学校が並存しているので親の教育方針に合った好みの学校を自由に選ぶ権利が保障されているのである。


参考文献

「オランダの教育」  リヒテルズ直子著


  人間科学大事典

    ---50音の分類リンク---
                  
                  
                  
                  
                  
                  
                  
                          
                  
          

  構成