オランダ教育の特徴

出典: Jinkawiki

目次

学校選択

オランダの法律下では5歳から18歳の全ての子ども達のために義務教育がある。オランダには校区制がないため、どの学校に通うかが自由である。一般的に、子どもが小学校に入学できる四歳になると市から案内が届き、市内にある小学校のリストが送られてくる。オランダの文部科学省は小学校に通う子どもを持つ親のためにガイドブックを作り、地方自治体や教育機関を通じて配布している。オランダの学校はそれぞれが強い個性を持ち、学校関係者も独自の個性を努めて強調している。また、自宅の近くの学校ではなく、遠い場所にある学校を選択した場合、所定の手続きをして認められると、自宅から一定距離以上の学校に余儀なく通うことになった家庭に通学費の一部を政府が負担することになっている。

市民が学校を作る

一定数の生徒が集まることが証明できれば、市民団体が私立学校を建てることが可能である。以前は200人を基準とされていたが、小規模の学校が増加し、財政効率上の問題から隣接する学校の統廃合が行われたり、人口が過密の地域では人数の最低基準が高く設定されていたり、学校設立基準がやや厳しくなってきている。しかしながら、その地域の人口密度に照らして一定数の生徒を集めることができれば、教育理念、宗教的倫理を問わず私立学校を設置することができる。学校の校舎や施設の提供は地方自治体に責任が負われる。この学校設立の自由というのもオランダの学校制度の大きな特徴である。

オールタナティブスクール

オールタナティブスクールとは画一的な教育ではなく、個人を尊重し子どもが本来持っている探求心に基づいて、自律的・主体的に学習や行事が展開されるカリキュラムのある学校のことである。オランダにおけるオールタナティブスクールは刷新的な教育のこととして捉えられている。オランダでは国の教育制度改革が柔軟に行われるため、時代と共に常に新しく刷新されていくもの、という考えが根付いている。

モンテッソーリ教育

モンテッソーリ教育の基本的な考え方は「子どもは生まれながらにして、自分自身を成長させ、発達させる力をもっているため、保護者や教師が子どもに自由を保障し、自発的な活動を助けるべきである」ということである。異学年との交流がクラス編成に適応されており、責任感と思いやりのある自立した人間、学び続ける姿勢を持った人間を育てることがモンテッソーリ教育の目的である。

ダルトン教育

ダルトン教育では子供の自主性と責任の強調というのが大きな特徴である。生徒の進度に従って、先生が1人1人の子どもに合わせて各教科の課題を提出する。課題は、1日の課題、週の課題、月の課題などがあり、教師の役割は子どもの学習に偏りを作らないように、適切な課題を与えることである。学習子どもと先生との契約的な関係、子ども同士の約束を大変重視し、それを学習指導の基礎に据えている。

イエナプラン

イエナプラ教育の大きな特徴は、グループの輪と学習循環の輪というとこにある。輪の中での話し合いから学習のきっかけが刺激され、それを出発点にして1人で何かについて本で調べたり、感想や報告を書いたりする。その学習結果をもう一度グループの輪の中で報告し合う活動をする。イエナプラン教育では、子ども学校における活動を「話す」「遊ぶ」「働く」「祝う」という4つの基礎的な活動に分けて、これらを輪のように循環しながら学習を進める。学校社会が実際の社会をできるだけ反映したものであるべきであるという考えから、モンテッソーリ教育と同じように異学年の子どもが同じ教室で学び、それぞれの学年での立場を経験する。

シュタイナー教育

シュタイナースクールは他のオールタナティブスクールとは違って、どの宗派にも属さず公立校としても存在していない。シュタイナー教育では、子どもの発達には単に頭を使った知的な成長に留まるのではなく、心で感じ取るものを引き出し手を動かして物を作り出す能力を引き出すことを大変強調している。読み、書き、計算だけでなく、音楽や絵画などの心で感じる教育や、金属や木材、布などを材料にして手を動かしてものを生み出す能力を育てることを重視している。


問題点

オランダは移民に寛容な国であるが、近年では福祉費や教育費に至る公的資金の大きな負担になっていることや、治安悪化の原因であるともされている。オランダ社会が高齢化し、高齢者のための福祉負担がますます増大することが予想される中で、移民の年齢が比較的若いことから、若い世代の移民に良い教育を与え、質の高い労働力に育て上げることは将来のオランダ経済の原動力となりえる。しかしながら、黒い学校という問題がそれを妨げる要因として挙げられている。これは学校選択の自由が生んだ問題としても挙げられる。移民は基本的に家計が豊かではなく、ある特定の地域に移民の集中が起きてしまった。その結果、ハーグ市などの主要都市では移民の子どもが全生徒数の90%以上を占める学校が特定の地域に集中して増えてきている。このような移民と先住オランダ人との分離は、移民が学校で学ぶべきことを阻害し、オランダ社会への同化を妨げる結果となっている。

参考文献

リヒテルズ直子著「オランダの教育―多様性が一人の子供を育てる」2004年発行 平凡社


  人間科学大事典

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