オリンピック強化費
出典: Jinkawiki
オリンピック強化費とは
オリンピックに出場する選手が好成績を押されるために国から受ける資金援助のことである。
1. 国別選手強化費とバンクーバーオリンピック、北京オリンピックでのメダル獲得数
選手強化費(JOC) 国別 強化費 ドイツ 274億円 アメリカ 165億円 中国 120億円 イギリス 120億円 韓国 106億円 日本 27億円
バンクーバーオリンピックメダル獲得ランキング
順位 国名 金メダル数 銀メダル数 銅メダル数 メダル合計数
1 アメリカ 9 15 13 37
2 ドイツ 10 13 7 30
3 カナダ 14 7 5 26
4 ノルウェー 9 8 6 23
5 オーストリア 4 6 6 16
6 ロシア 3 5 7 15
7 韓国 6 6 2 14
8 中国 5 2 4 11
8 スウェーデン 5 2 4 11
8 フランス 2 3 6 11
11 スイス 6 0 3 9
12 オランダ 4 1 3 8
13 チェコ 2 0 4 6
13 ポーランド 1 3 2 6
15 イタリア 1 1 3 5
15 日本 0 3 2 5
15 フィンランド 0 1 4 5
18 オーストラリア 2 1 0 3
18 ベラルーシ 1 1 1 3
18 スロバキア 1 1 1 3
18 クロアチア 0 2 1 3
18 スロベニア 0 2 1 3
北京オリンピックメダル獲得ランキング 国別メダル獲得数 順 位 国名 金 銀 銅 総メダル 順 位 総 数 1 中国 51 21 28 2 100 2 米国 36 38 36 1 110 3 ロシア 23 21 28 3 72 4 英国 19 13 15 4 47 5 ドイツ 16 10 15 6 41 6 豪州 14 15 17 5 46 7 韓国 13 10 8 8 31 8 日本 9 6 10 11 25 9 イタリア 8 10 10 9 28 10 フランス 7 16 17 7 40 11 ウクライナ 7 5 15 10 27 12 オランダ 7 5 4 16 16 13 ジャマイカ 6 3 2 20 11 14 スペイン 5 10 3 14 18 15 ケニア 5 5 4 18 14 16 ベラルーシ 4 5 10 13 19 17 ルーマニア 4 1 3 25 8 18 エチオピア 4 1 2 27 7 19 カナダ 3 9 6 14 18 20 ポーランド 3 6 1 21 10
選手強化費の表は、個人的なブログからの抜粋なので、ここに掲載されている国が、そのままの順位なのかわからないが、バンクーバーオリンピックではイギリスを除く上位四カ国はメダル獲得数でトップ10に入っている。また、北京オリンピックでは、日本も8位と健闘しているが、やはり強化費が多い国は日本よりも順位が良いことが分かる。選手は生まれも環境も違うところで育成されるし、DNAや国の人口比も関係してくるかもしれないので、一概に、経済力だけでメダルの獲得を左右するとは限らないと思うが、強化費とメダル獲得数を比較してみると、お金がメダルに比例しているように感じる。これはやはり強化費が選手を強くする要因なのではないか。 強化費以外の要因を比較するために、気候条件や風土が類似している中国と韓国を例にとって検証する。
2. サポート体制 ~日本と中国の比較
・日本の現状 戦後の日本のスポーツ振興、強化は主に一般企業が中心になって進めてきた。たとえば、 女子モーグルの上村愛子は、北野建設スキー部に所属している。だが、一昨年のリーマン・ショックから、日本の企業がスポーツから撤退するニュースが相次いだため、選手が練習環境を整えるために、練習の時間をスポンサー探しに割かなければならなくなった。 このことが世間に知れたのは、今年3月のフィギュアスケート・村主章枝によるスポンサー募集会見だった。彼女は、2002年のソルトレークシティーオリンピックで5位、2006年のトリノオリンピックで4位のほか、四大陸フィギュアスケート選手権女子シングルでは、2001年、2003年、2005年と3回も優勝しているほか、2006年の世界フィギュアスケート選手権女子シングルでも銀メダルに輝くなどの実績を収めている。スポンサーが見つからなければ、現役引退もやむを得ないという発言に資金面での厳しさがうかがえた。
・中国の現状 日本とはまったく逆のアプローチを取っているのが中国だ。もちろん国家の体制は異なるわけだが、国家戦略として大々的にスポーツを支援する中国は、今もオリンピックのメダルの数にこだわっている。北京オリンピックでは金メダルの数でアメリカを抑えてトップに立った。 バンクーバーオリンピックでも、オリンピックの正式種目に採用されたばかりで、競技レベルがまだ未成熟な、いわゆるマイナー競技に他の競技から選手を転向させ、メダルを狙える選手に「変身」させ、金メダルを獲得している。 そうした中国の「変身プロジェクト」のなかで、成功を収めているもののひとつがカーリングだ。世界最大のカーリング人口を持つカナダ、そしてヨーロッパの強豪国の場合、早ければ小学校入学くらいから、遅くとも10代前半にカーリングを始めるケースが多い。ところが中国の場合は、ショートトラックの国家代表になれなかった選手たちなどをカーリングに転向させ、国家のお抱えのプロとして強化してきたのである。今大会で中国の女子カーリングチームは、銅メダルを獲得しており、大会全体では、金メダル5個、銀メダル2個、銅メダル4個で、メダル獲得ランキング7位である。 選手の適性を見極める力、そして金メダルを獲得するまでの時間的、経済的な投資を考えると、中国に匹敵する国はどこにも見当たらない。
3. JOC(日本オリンピック委員会)の取り組み ~メダル至上主義のJOC~
・JOC(日本オリンピック委員会)とは 出典:wikipedia
JOCはIOCの日本での窓口として、また、日本におけるオリンピック・ムーブメントを推進する組織として、オリンピック競技大会やアジア大会などの国際総合競技大会への選手派遣事業を行う。1911年の大日本体育協会の設立と共に、長く日本体育協会の一委員会であったが、1989年特定公益増進法人・日本オリンピック委員会として、独立した法人となった。オリンピックのメダリストに報奨金を出すなど、選手強化に努めてきた。例えば、事業の一環として「がんばれ!ニッポン!」キャンペーンなどが挙げられる。また、オリンピック・デーランやオリンピックコンサートなども行っている。
・JOCによる強化費の配分
JOCの強化費の配分は、メダル獲得が指標である。メダルを獲れないとなると、競技団体自ら資金源確保など道を切り開かないかぎり、死活問題ともなりかねない。だからこそ、オリンピックでのメダル確保に必死なのだ。「『JOCはメダルがないと認めてくれない。強化費だって出なくなる。メダル至上主義である以上、メダルを獲れる選手しか連れていきたくないし、そのつもりで強化を進める』と強く言われました」とある選手は語る。 だが、JOCがこのような方針を掲げるのも無理がない一面もある。諸外国は、国からの補助が数百億規模だが、日本は10分の1程度で補助金は例年約27億円。国策としての立ち遅れがあるのは明らかだ。さらに、日本国家がオリンピックの事情をわきまえていないのではないかという出来事が、2009年11月に行われた「事業仕分け」である。 ・仕分け人に斬られた JOC補助金縮減 政府の10年度予算概算要求のムダを洗い出す行政刷新会議の「事業仕分け」で25日、日本オリンピック委員会(JOC)など3団体への文科省からの補助金32億9600万円が「縮減」の評決を受けた。JOCには補助金の82・3%を占める27億1400万円が振り分けられ、五輪代表選手らトップアスリート強化費用となる予定だったが、評決を受け、12年ロンドン五輪に向けた選手強化計画に支障が出る可能性も出てきた。 仕分け人の1人は「ボブスレーやリュージュ」など具体的な競技名も挙げ、「マイナースポーツに補助金をつぎ込んでもメダルに届かないのでは」と質問。文科省側は「マイナーと言われるのは残念だ」と強い調子で反論し、「暖かく見守ってほしい」と話した。「『五輪は参加することに意義がある』はずだったが、今はメダルに意義があるのか」とのやや的外れな質問も。文科省側は「人間の限界に挑戦することも子供たちに夢を与える」と理解を求めた。 【日刊スポーツ】 これらのことが示すように、諸外国に比べて国からの援助金が少額で、なおかつ多数の種目に参加している日本は、選手あたりの強化費も少なくなるのは当然である。だからこそJOCは、よりメダルに期待のできる競技、選手にお金を配分するのも無理はない。 ・JOCから強化費が配分された選手と成績 日本オリンピック委員会(JOC)は19日のバンクーバー冬季五輪対策プロジェクトで、金メダル有望の特別強化指定選手に以下の三選手を認定し、上限を1000万円とする強化費をそれぞれに配分する方針を決めた。JOCの冬季五輪対策で選手個人に特化した重点強化は初めて。【日刊スポーツ】
〈結果〉 フリースタイルスキー・モーグル上村愛子=4位 フィギュアスケート女子の浅田真央(中京大)=銀メダル スピードスケート男子の長島圭一郎(日本電産サンキョー)=銀メダル このように好成績を収めているので、強化費の配分としては成功しているのである。 ・強化費の配分が少額だが、好成績を収めている選手の例 バンクーバー五輪が終わり4カ月が経とうとしている。現役続行を決めた選手たちは、新たなシーズンへ向けてスタートしている。すでに4年後のソチ五輪を視野に入れる選手も少なくない。 その一人に、クロスカントリースキーの恩田祐一がいる。 実家のある新潟県妙高市で、シーズン開幕へ向けてトレーニングに励んでいる。 恩田は、クロスカントリーのスプリント種目のエースとして活躍してきた。 数あるスキー種目の中でも、クロスカントリーは長い伝統を誇り、海外では人気が高い競技だ。日本におけるこの競技の地味な位置づけとはまったく異なる。そのせいか国際大会でも、日本勢は欧米勢の厚い壁に阻まれてきた。その中で恩田は、ワールドカップで2度4位に入るなどの成績を残している。とくに'07年の大会の4位は、当時としては日本選手史上最高記録であった。 世界的に見ても価値は大きいのだ。だが、恩田は、困難な問題に直面している。競技を続ける環境だ。 恩田は今年3月、この2年間、所属企業としてサポートを受けていた栄光ゼミナールとの契約が切れた。その後、サポートしてくれる人の協力を得て探してはいるが、新たな所属先、スポンサーは見つかっていない。「不安はあります。でも、やるべきことはやっていないと」 恩田は言う。 ウインタースポーツ、とくにスキー競技の場合、強化に必要な資金は多額だ。どうしたって雪上でのトレーニングが必要になる。すると、雪を求めて海外へ向かわざるを得ない。大会の参戦費用にしてもそうだ。冬場だけでも数百万円はかかると言われる。 といって、仕事をしながら競技に取り組んでいては、とうてい世界の第一線で戦うだけのトレーニングなど不可能だ。スポンサーが無いままでは、ソチ五輪は目指せない。【Number-web】 このように厳しい環境で、競技を続けている選手は、他にもたくさんいる。彼らのような選手にJOCからの強化費配分が増えれば、メダル獲得数だけでなく、競技人口も増え、レベルの底上げにもつながると考える。 5.まとめ 4年に一度のオリンピックは、やはり国民が注目する大イベントである。テレビで見る選手たちに自分を投影させ、生活の活力を得たり、子供に夢を与える重要な意味を持つ。なおさら、メダルを獲得するとなると、オリンピックが人々に与える影響が拡大していくに違いない。日本選手団の実力が向上し、オリンピックに参加するだけでは選手も国民も満足しなくなっている。「スポーツの重要性を国がどれだけ分かってくれるか,国の力を借りて連携していくことが大切です。」と関係者も話している通り、メダルを多く獲得している国にはやはり多くの強化費が配分されているのである。 選手自身が、スポンサーを探し資金を募る方法は、既に限界が来ている。国の経済状況が思わしくないのは誰が見ても明らかだが、世界で戦っている選手に対して、その資金を自分で集めろというのは理不尽な要求である。JOCと国が「事業仕分け」を通じ、相互交流できていないことが明らかになった今、もう一度日本のスポーツ業界の見直しを図り、スポーツも未来を明るくすべきである。 ●参考文献 ・週刊東洋経済 ・Number-web ・日刊スポーツ