キリスト教の福祉

出典: Jinkawiki

目次

キリスト教とは

 キリスト教とは、イエスの教えを使徒が受け継いで発展させ、キリスト教団を組織し、パウロなどが布教して地中海世界に広がったユダヤ教を母体とした宗教である。ローマ帝国で国教となり、その後西欧世界の精神世界を支配するに至り、東西分裂、宗教改革などを経て、文化・社会・政治に強い影響力を保っている。正統とされたローマ=カトリック教会と、そこから分離したプロテスタント系諸派は西方キリスト教と総称し、これに対して、ギリシア正教を東方キリスト教という。東方には異端とされた宗派が今も各地に存在している。

古代のキリスト教福祉

 古代のキリスト教について見ていく。260年以前は迫害の時代にあった。しかし、260年にガリエヌス帝の勅令によって迫害の時代は終結し、以後40余年にわたる実質上の平和が訪れた。法的には、教会は勅令が出る以前、保護を受けていたが、保護を受けることがなくなった。ここでグノーシス主義が生まれる。これは、人間は物質界の牢獄から解放される必要があり、それを救済するのがキリストというものだ。そしてキリストが救済と同時に知識をもたらすのだ。その後も、神と人を一致しようとするアレクサンドリア学派、神と人を区別しようとするアンティオキア学派が誕生し、一般人への対応にはキリストや神との結びつきが大きな影響を及ぼした。このように、古代のキリスト教では福祉の実践を行うというよりも、心情や考え方による処遇をしていたようだ。

中世のキリスト教福祉

 ローマの政治的諸制度は諸都市を基盤とし、その周辺の地方はそれらの諸都市に依存するものであったが、キリスト教の機構もその同じ法則に従った。東方の地域以外では地方の各地区では、都市の司教たちや彼らが任命した者たちに依存し、その世話を受けていた。教会設立者や家督相続人たちに左右されたのだ。また、絶えることのない教会への土地寄付と、カール大帝のもとでは教会寄付地の尊重があり、貧困者は苦しむこととなった。しかし、貧困者のための対策が行われている地区もあった。例えば、ケルン教区では、司祭が教育や福祉を施し、盛んに活動した。さらに、施療院が多く誕生した。施療院とは、一夜の宿と食事を必要とする巡礼と旅人、また病人や捨児、物乞いたちを受け入れた施設である。貧困者を「キリストの貧者」として、迎えるにしてもそこには様々な人々がおり、病院施設が確立される以前、傷病者と健常者を同じところに置くのは衛生的な観点からいって好ましくないことであった。そして、必然的に分化された施設として施療院が生まれた。この施療院は身分によって処遇が変化することもあったが、施療院の誕生は多くの人間に影響を与えた。中世になり、暮らす施設や医療施設を多くの人が利用できるようになっていったのだ。

宗教改革後のキリスト教福祉

 宗教改革後の福祉について見る。宗教改革が起きると、聖職者たちは地位の高低を問わず、堕落した同僚たちのために厳しい批判の的にされていた。商業都市は、聖職者の享受していた免税の特権、教会による利子取り立ての禁止、聖日の遵守、教会の浮浪者に対する援助の肩代わり、などで困窮していた。一般に農民たちも、不安定な経済状態にあり、聖職者の徴税が大きな原因となっていた。宗教改革によって福祉が行き届かなくなることもあった。さらに貧困者の中でも、救済されるべき人間と救済されるべきではない人間に分けられることが多くなっていった。

近・現代のキリスト教福祉

 近・現代について見ていく。現代のキリスト教、特にプロテスタントには「プロテスタント的経験」という言葉がある。福祉が必要な者に施しをして自由になると、自由な競争の制度を破壊するような悪い行いが生じる。自由になるとそれを悪用するものが生まれてしまうのだ。そこで審判するために神が存在するとされてきた。神の前で悪いことをできる者はいない。この考えが「プロテスタント的経験」である。福祉を行うことによるリスクからも、福祉が必要か否か、が考えられている。評価や審判というものは神の業である世俗化してしまうと宗教システムが残って内実がなくなってしまうとされるのだ。これらを踏まえた上で、具体的な福祉の内容について見ていく。宗教の究極的な目的は弱者の救済である。ボランティアもキリスト教からきているともいわれている。

参考文献

 キリスト教史 古代教会(1984年)ウィリストン・ウォーカー著 キリスト教史 中世の教会(1987年)ウィリストン・ウォーカー著 キリスト教史 宗教改革(1983年)ウィリストン・ウォーカー著 キリスト教史 宗教改革(1983年)ウィリストン・ウォーカー著

キリスト教史 近・現代のキリスト教(1986年)


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