グローバリゼーション16

出典: Jinkawiki

目次

グローバル化

 グローバル化という言葉が世界で頻繁に使われるようになったのは1990年代に入ってからである。グローバル化は世界がグローブ(地球)として一体化していくイメージが伴う。最小単位として国と国との関係が厳密になっていくというだけではなく、国内の個人や集団、あるいはその他の資源が国境の壁を越えて移動し、相互依存的な関係を持つようになることを、また、国内の個人や集団が国民国家からではなく、それを超えたグローバルなものから直接影響を受けるようになることをも意味する。そしてグローバル化とは資源(モノ・ヒト・カネ)と情報の国境を越えた移動が増えていくことである。しかしそれぞれの移動の大きさやその増え方は異なる。資源の比べれば情報の移動のほうが容易であり、モノ・ヒト・カネの中でもそれぞれ移動の大きさがことなる。このようなグローバル化の不均衡は各国の社会政策の在り方について影響を及ぼさずにはおかない。グローバル化された世界では、資本間競争が国境を越えて激しさを増す。また、資本の移動が自由なのに対して労働は資本ほどには自由に移動することができない。このため、もともと資本に対して不利な立場をとっていた労働は、グローバル化によってさらに不利な立場に追い込まれる。グローバル化によって新たに生まれる問題点も存在するのだ。

グローバリゼーションと社会政策

 近代の先進諸国では社会政策の持続可能性の低下が問題となっている。その理由の一端にグローバリゼーションが存在している。グローバル化によって労働市場の柔軟化が進み、社会保険制度が弱体化しているからである。日本の場合、均等待遇が確立されないまま、短時間労働をはじめとする非典型雇用が増え、事実上、社会保険の適用を受けない人々の数が増えたことがここ20年の傾向である。正規雇用の労働条件は守られているものの、正規雇用の割合そのものが減少したことによって、労働市場の柔軟化が進んだことは間違いない。そしてこの一連のプロセスを生んだものこそがグローバル化の圧力を受けた政府の政策なのである。グローバル化は資本にとっての柔軟な労働市場を求めるが、労働にとっての柔軟な労働市場を求めるわけではない。むしろ労働にとって硬直的な労働市場のほうが、資本にとっては好都合だともいえるのである。

グローバリゼーションの今後の課題

 グローバリゼーションはモノ・ヒト・カネにとどまらず、制度までもが国境を超えるとする説も有力である。その中でも経済のグローバリゼーションは今後詳細に検討していく必要がある。今現在、実際に進展しているのは金融のグローバリゼーションであり、貿易についてはリージョナライゼーションが、生産と投資については分極化が進展している。グローバリゼーションは自然発生的なものではなく、各国政府や国際機関の政治的意思決定が関与していてグローバリゼーションの進展が国家による国民経済と国民社会の再編成を必然化する。しかも有力な行為主体間には戦略の共有とともに対立も存在する。1990年代後半以降のEUでは社会政策の「新機軸」が次々と打ち出されている。雇用政策については従来の事後的な失業対策に代えて、各国が財政赤字をGNP3%以内に抑えるとの義務づけや、長期失業へも積極的就労支援政策で応じるなど「能動的福祉国家」が志向されているが、これはまた労働力のより効果的商品化を目指す「勤労的福祉国家」志向とも言え、社会政策が産業政策や経済政策に従属する危険性も内包している。欧米においても日本においても産業政策・経済政策に還元されない社会政策の意義と論理が問い直されている。

参考文献

グローバリゼーションと社会政策 (2002年 社会政策学会編集) 
グローバリゼーションと福祉国家 (2012年 武川正吾、宮本太郎 著) 
'mikuro'


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