グローバリゼーション20
出典: Jinkawiki
<グローバリゼーションとは>
人、お金、モノが国民国家の枠組みを超えて活発に移動し、各国経済の開放と、世界の産業、文化、経済市場の統合が進む現象をいう。文化的、商業的、経済的活動の分野において特に用いられることが多い。グローバリゼーションには、世界の異なる部分間の結びつきの強化が促進されるというメリットがある。他方で、自国の農業、工業が脅かされ、多国籍企業への利潤集中が発生する、貧富の拡大が世界規模ですすむ、といったデメリットもあるといわれている。グローバリゼーションから生じた社会問題への反発から、「反グローバリゼーション運動」が発生している国も少なくない。
はじめに 国際犯罪は、国境を越えるヒト、モノ、カネ、情報の流れに便乗して行われる犯罪のことを一般的に指す。このような犯罪のグローバリゼーションによって、麻薬・薬物、テロリズム、資金洗浄、サイバー犯罪、人身取引などの問題が出てきた。これは「国境の壁」を高くして犯罪を防止するべきかという対立に関連するものである。
1.麻薬・薬物
国際犯罪組織の資金源の1つが、麻薬や違法薬物である。これらの麻薬や違法薬物には、大麻、コカイン、ヘロイン、向精神薬、MDMAなどの合成麻薬、覚せい剤などがあり、国際社会や日本における脅威の1つにもなっている。
国際社会では、麻薬や薬物に関する諸条約が締結され、それにもとづいて対策がとられてきた。国連では、1946年に経済社会理事会のもとに麻薬委員会が置かれ、薬物関連条約の履行を監視し、薬物統制の強化に関する勧告などの政策を実施している。また、麻薬関連条約の事務局として、国連薬物犯罪事務所(UNODC)が設置されている。
日本では、麻薬・薬物を水際で食い止めるために、警察庁が税関や海上保安庁などの関係機関と連携を強化し、海外への捜査員の派遣と国際会議での情報交換を行っている。また、薬物犯罪組織を根絶するために、資金面では麻薬特例法にもとづいて密輸・密売やマネー・ロンダリングの取り締まりを強化し、犯罪収益を没収している。インターネットを通じた麻薬・薬物の密売に関しては、サイバー・パトロールやインターネット・ホットラインセンターを通じた通報によって情報を収集している。
2.資金洗浄
国際犯罪組織が活動するためには資金が必要であり、犯罪行為で得た資金を預ける必要もある。しかし、銀行などに資金を預ける場合には、身元の確認が求められる。これがマネー・ロンダリングである。
国際社会は、1989年にマネー・ロンダリング対策として金融活動作業部会(FATF)を設立し、国際的基準やその実施状況の審査、是正の要請や懸念を表明している。
日本では、麻薬特例法によって、麻薬・薬物を収益源とするマネー・ロンダリングが初めて違法になり、金融機関に薬物犯罪収益と疑われる取引に関して届け出される制度を設けた。また、組織的犯罪処罰法が制定され、麻薬のみならず、組織的に行われた詐欺や人身取引等で得た収益によって、テロ資金を原資とするマネー・ロンダリングも違法化された。犯罪収益移転防止法では、本人確認をするべき事業者を非金融業者と職業的専門家に拡大した。
3.サイバー空間による脅威
サイバー空間は、全世界の人々がインターネットを通じて日常生活を送るようになった現代において国際公共財としての性格をもつようになり、サイバー空間に対する脅威が全世界共通の課題の1つとなってきた。
これには、サイバー犯罪、サイバー・テロ、サイバー・インテリジェンスといった犯罪が含まれる。サイバー犯罪とは、インターネット利用者のIDやパスワードを不正取得して、インターネット・バンキングなどに不正にアクセスし、不正送金をさせるといった行為などがあげられる。サイバー・テロは、政府や企業など攻撃先のコンピュータに複数のコンピュータから大量にアクセスすることによって、処理不能の状態に置かせるDDoS攻撃などがあげられる。また、サイバー・インテリジェンスはインターネットを通じて行われる媒報活動であり、不正プログラムをメールで送付して、それに感染したコンピュータから情報を盗み取るといった標的型メール攻撃などが代表的である。
このような犯罪に対処するために、国際社会は、サイバー犯罪に関する条約や刑事共助条約などの国際条約を締結している。サイバー犯罪に関する条約は、コンピュータ・システムへの違法なアクセスなどの行為の犯罪化、コンピュータ・データの迅速な保全に関わる刑事手続きの整備、犯罪人引渡しなどに関する国際協力を規定している。また、国際刑事警察機構などの国際捜査共助の枠組みも用いられている。
参考文献 佐藤史郎・川名晋史・上野友也・齊藤孝祐(2018)『日本外交の論点』法律文化社