コミュニティ・カレッジ3
出典: Jinkawiki
概要
アメリカ合衆国におけるコミュニティ・カレッジ(Community colleges in the United States)は、第二次世界大戦後に普及した2年制大学を指す。大部分が地方自治体によって設立された公立あるいは州立の教育施設である。修業年限は最長2年で、学位または資格が授与される。さまざまなカレッジがあるなかでその特徴や教育環境および教育プログラム、学位や資格もすべて異なる。進学準備のためのプログラムに加えて、コミュニティ・カレッジは職業教育と技術訓練も提供している。コミュニティ・カレッジは通常、地元の州立大学やビジネス界と強い結びつきがあるため、地域社会のための大学と呼ばれることもある。こうした関係から、コミュニティ・カレッジのカリキュラムは、将来の学業での成功、ないしは卒業直後の就職に向けて学生に準備させるよう作られている。
米国教育省配下の教育科学研究所によれば、2011-2012年の間では、米国全土では1050万人が公立コミュニティ・カレッジにて教育を受けていた。オバマ大統領は2015年の一般教書演説にて、コミュニティ・カレッジの学費を無料とすると演説し、この計画は「America’s College Promise」と呼ばれている。
コミュニティ・カレッジの特徴
学生がコミュニティ・カレッジに進学する理由から、特徴をあげていく。バラエティに富んだ学生たちの入学の目標は実に様々であるが、共通の進学目的の一つは、自らを改善しようとする強い熱望があることだ。
①安い授業料
多くの人が高等教育進学を考える際に、コミュニティ・カレッジを選ぶ大きな決め手となっている。4年制大学や私立の教育機関に比べて、コミュニティ・カレッジの安い経費はとりわけ低収入の人々には決定的に重要な意味を持つ。公立コミュニティ・カレッジの授業料は、現在約20万であり、公立の4年制大学の授業料の約半分にも満たず、また私立の4年制大学のおよそ10分の1に過ぎない。このため、留学先にもよく選ばれている。
②便利な場所
例えば、幼い子供を持つ女性たちは通学の便利さを重要視する。なぜなら、自分自身や配偶者の仕事スケジュール、そしてベビーシッターの利便性を考慮してクラスを決めるからである。初めて働きに出たり、退職後再び働きに出る女性にとって、コミュニティ・カレッジが近くにあることは、通学にきわめて便利である。コミュニティ・カレッジが女性に特に人気があり、登録者の58%は女性である。
③開かれた入学
コミュニティ・カレッジは、社会的・経済的にも恵まれない人々にも積極的に入学を奨励している。結果、黒人やヒスパニックなどのマイノリティが多く登録している。全米でコミュニティ・カレッジ登録者の30%をマイノリティが占めている。海外からの移民に英語を教えたり、高校時代に勉強が好きではなかった人たちにもいつでもチャンスを与えるなど、オープンな特徴を持っている。また、入学が容易である。日本での学業成績はほぼ考慮の対象外であり、ACTやSATといったアメリカ人学生が受験するテストの受験が不要。必要とされる英語試験(TOEFLやIELTS)の点数も低い。
④総合的なコースの提供
コミュニティ・カレッジでは提供するプログラムが多様であるが、加えてそれらが提供されている時間も、午前・午後・夕方・週末など分かれており、たとえ働きながら通っていたとしても、自分のスケジュールに合わせて授業に通うことができる。幅広い層の学生に対応ができるフレキシブルな時間割である。すでに、学士号などの学位を持っている学生も、コンピューターの授業や技術を学びなおすために通学する。こうした、資格プログラムや労働訓練クラスをはじめ、教養を身につけたりレジャー活動を高める目的にも配慮して、コミュニティ・カレッジはまさしく多様で総合的なコースを提供している。
これらのほかにも、コミュニティ・カレッジの生徒は、比較的小規模のクラスで学習しており、研究目的ではなく教授目的の指導者から学んでいるため、きめ細やかな親身の指導を受けやすい。
以上のような、特徴を持つコミュニティ・カレッジでは、人々は生涯のいかなる時期でも学習のやり直しができる。技術革新の速いペースや、仕事のキャリア変化の増大で、人々は何でもコミュニティ・カレッジへ戻ってきて何度も学びなおしができる。人々が、職業を探求したり、生計の質を得るための教育機関という役割を担い続けるだろう。
参考資料
「現代アメリカのコミュニティ・カレッジ―その実像と変革の軌跡―」(2006)
宇佐見 忠雄 東信堂