サマーヒル
出典: Jinkawiki
「世界で一番自由な学校」といわれるサマーヒルは、1921年ドイツのドレスデン郊外のヘレラウでA・S・ニイルによりその前身の国際学校が創立された。その後、オーストリアのソンタークベルク、次に、イングランドの小さな町ライム・リージスに移し学校名をサマーヒルに改称。1927年に現在のサフォーク州レイストンに移し、男女共学の寄宿学校で全日制の学校として初等中等教育を民主的なスタイルで提供している。生徒は5~17歳の約60人、職員は十数名。原則12歳以上の子どもは入学できない。現在の運営者は娘のゾーイ・レッドヘッドである。
一人一人の子どもが、権威に盲従しないで自分自身のものの見方や考え方を築いていくたくましい自由人の育成を理想としているサマーヒルには次のような特性がある。
出席欠席自由の授業
授業は時間割に従って行われるが、出席するしないは生徒の意思にまかされる。授業への出席を全く強制されず、何ヶ月でも、あるいは何年でも教室に入らなくてもよい。「自分のことは自分で決める自由」のつきつめられた姿である。
全体的に見て出席率は60%強。強制されないので学習に対して嫌悪感を抱かないため、いったん出ると決めた授業はめったに休まない生徒が多い。
大人と子どもが対等の立場で参加する全校集会
学園内の日々の生活においての様々な規則や問題について議論される。大人も子どもも対等の立場で参加し、学校長だろうと一番年下の子どもだろうと表決の時は等しく一票を与えられている。ニイルは学校に無理やり子どもを合わせるのではなく、子どもに合わせた学校を作ること考え、全校集会という場を設けた。「自分たちのことは自分たちで決める自由」の具体的な現れである。
サマーヒルのような自由学校には年齢の低い者ほどかえって早く環境に適応できる。そのため、原則として12歳以上の入学は認めていない。自分のことは自分で決め、自分たちのことは自分たちで決めるといスタイルがうまく働くには年長の、しかも在学期間の長い生徒がかなりの割合を占めている必要がある。
サマーヒルの問題点として次のようなものがあげられる。
① 生徒数が少なく授業料も他の学校に比べると安いため、設備が不十分。
② 安い授業料とはいっても払える親は少なく、入学者の多くが中流階級やインテリ層の子どもで、結果的に学校は中流インテリ階級に支えられている。
③ 親が真にサマーヒルの教育方針に共鳴していない、授業料が払えない、欠損家庭といった理由で、サマーヒルを去る子どもが多い。
サマーヒルのような学校は、ニイルのごとく強い意志と忍耐力、ユーモア、即興性がなければ長くは経営できないという見方があった。ニイルの死後、イナ夫人が跡を継ぎ学園を切り盛りしてきた。生徒数も常に60名前後を保っている。1985年からは現在の運営者ゾーイ・レッドヘッド、トニー・レッドヘッドが引き継いでいる。
参考:ニイルと自由の子どもたち/堀真一郎