シラス台地

出典: Jinkawiki

シラス台地とは、白色の火山噴出物(細粒の軽石や火山灰など)が堆積した地層が、別の地層の上に平坦に重なって形成された台地のことである。


シラスの定義

 シラスという言葉は、古くから広く使用されてきた“白砂”や“白洲”などの俗語に由来し、もともとは白い砂に関連して生まれた日常語である。 広辞苑では、堆積物としてのシラスは以下のように記載されている。 “大隅・薩摩両半島、都城付近に広く分布する火山灰、軽石の層。現在の鹿児島湾を形成している昔の姶良火山・阿多火山などの噴出物が堆積したもの。” 九州南部で見られるシラスと外見がよく類似した堆積物は、日本国内の他のいくつかの火山周辺でも、広く分布している。 例えば、北海道の支笏湖周辺や、東北地方の十和田湖周辺であり、これらもシラスと呼ばれたことがある。 このように、シラスという言葉は、もともとは白い砂という意味で広く一般的に用いられ、九州南部の特定の堆積物だけを意味していたわけではない。 しかし、今日では、九州南部に分布する白い砂質・軽石質を持つ堆積物(主として火山噴出物)を指す固有名詞として扱われることが多い。 その大きな理由としては、九州南部のものがとりわけ広域であり、大量に分布しているためと考えられている。


分布

 シラスは、熊本県のほぼ全域、宮崎県の中・南部、熊本県南部ときわめて広域に分布していて、その分布地は、姶良カルデラから約90km離れた地域まで及んでいる。分布状況としては、鹿児島県内の鹿児島湾周辺地域ではまとまって広く分布している。 一方で、姶良カルデラから隔たった宮崎県や熊本県内の各地では、非常に局所的に散在している。

このようなシラスの分布を知ることは、地形や地質上の特徴を知り、火砕流の性質やシラスと人間生活とのかかわりを考える上で、必要不可欠である。 シラスは集中豪雨や台風などの自然状況下で絶えず侵食を受け、なおかつ人間によって掘削・除去さている。 そのため、分布状況は時間の変化に伴い変化している。


構成物質

 一般的なシラスの構成物質は、白い軽石塊、安山岩、砂岩、頁岩などの岩石破片、その他さらに細かい粉末の微粒子などである。 微粒子には、斜長石、石英、磁鉄鉱などの鉱物の結晶粒や火山ガラス、石質岩片の粒子などで構成されており、ルーペや顕微鏡の使用により観察が可能である。 シラスを堆積させた噴火活動を引き起こしたマグマに由来する軽石を本質物質呼ぶ。 また、本質物質と岩石学的に類縁関係にある火成岩を類質物質、砂岩や頁岩のような、本質物質とは岩石学の面で明らかに無関係であるものを異質物質と呼ぶ。 シラスは、これら本質物質と類質・異質物質で構成されている。


 白っぽい色が「シラス」という言葉の由来になっているのだが、実際は白よりもややピンクがかかった色をしているものが多い。 特に、シラス層の上部はその傾向が強く、堆積時に空気と接触したため、他の部分よりも強い酸化を受けたためと考えられている。 また、シラスは風化によって、全体的に黄色っぽい色彩を示すことが多い。 この他、宮崎市や薩摩半島南端の枕崎市などでは全体的に赤紫色がかかったシラス、霧島火山西方の牧園町万膳付近では暗灰色を帯びたシラスが見られる。


固さ

 シラスは様々な形や大きさを持つ粒子の集合体であり、それぞれの構成粒子は強く密着していない。 そのため、全体としてきわめて軟らかい堆積物である。

九州南部では、高さが数10m以上に達するシラスの急斜面、すなわち崖が各地で見られる。 軟らかい堆積物という特徴を持ちながらも、自然状態では数10m以上もの急な崖を形成し、自立安定しているという独特の性質がある。 台地崖の高さは、数10mから200m近くまで及ぶものもあり、急な崖がその大半である。 このような性質であるため、台風や集中豪雨に襲われた時は、表流水や地下水の影響により崖崩れが多発する。 そのため、建設工事や防災工事を行う際は、留意すべき基本事項とされている。


農業

 シラス台地は、栄養価が少なく、水はけが良すぎるという特徴があり、稲作には不向きな土壌である。 そのため、そのような土地でも育てることができるサツマイモ、ダイズ、ナタネの三大作物の栽培を中心として、畑作が盛んに行われている。



参考文献

前田洋(編) 2005 日本の地形7―九州・南西諸島 東京大学出版会

渡邊静夫(編) 池田宏(著) 1988 日本大百科全書12 小学館

横山勝三(著) 2003 シラス学―九州南部の巨大火砕流堆積物 古今書院

 


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