シンガポールの環境対策

出典: Jinkawiki

目次

環境問題の推移

第1期

 経済がそれほど発達していない時期は、産業排出物による郊外の量は限定されていた。公害として問題になるのは、ほとんどが局地的に明確な公害をもたらす有機産業排出によるものであった。日本では足尾銅山の鉱毒事件や、水俣の有機水銀化合物の健康被害、アスベストによる発癌誘発など。

第2期

 産業が巨大化するにつれ、微弱な有機物が集積効果を発揮し、継続的な打撃をもたらす公害問題として認識されるようになる。四日市や川崎のSO₂を中心とした呼吸器障害、自動車によるNO₂やオキシダントによる対人大気汚染障害など。

第3期

 第1期、2期の人に対する直接的な害に対し、人を取り巻く環境を破壊することで間接的に人に害をもたらすものである。第3期は特に人に身近な社会環境を破壊する場合である。水質汚濁による健全な生活圏の阻害や、度を超えた騒音も人の生活と健康を脅かす原因になる。

第4期

 第3期よりさらに間接的に地球全体の生態圏を破壊することで継続的な人類の存続に驚異をもたらす場合である。地球温度の上昇、多量のSO₂がもたらす酸性雨による植物の破壊、フロン放出によるオゾン層の破壊など。

シンガポールの環境経営

① 進んだ経営体制の整備状況
 シンガポールの環境形成はASEAN諸国の中では比較的早かった。1970年に総理府の直属機関として公害防止組織が設立、1971年に大気汚染防止法の制定、1972年には大気排出基準の設定をした。同年、環境省が置かれ、1986年にAPUの環境省への吸収で環境行政が一元化された。1999年1月に環境規制法規が環境汚染管理法にまとめられ、国としての環境経営体制を完成した。

② 十分な環境関係予算
 人口比率で日本並みに換算すると、1998年で4兆円を上回る。予算から見ればシンガポールの方が政策上環境経営をより重視していると言える。

③ 厳しい規制と管理
 環境破壊の原因になりやすい化学産業の規制管理として、1996年10月から一定量以上の危険な化学物質を扱う企業は毎年安全監査を実施。土壌汚染については、初犯は1万Sドルまたは懲役6ヶ月、2度目になると罰金2万Sドルのほか懲役1~2年となる。自動車については、商業車は1999年から6ヶ月か12ヶ月毎に排斥ガス検査を受けることを義務づけられている。また、業務用のディーゼル車の排煙規制違反は罰金500Sドルが課せられる。

④ 生活環境整備
 1993年に環境省はシンガポールを2000年までに世界の環境モデル都市にするグリーンプランを採択した。行政は都市国家としてのシンガポールの市民生活環境の完全な整備に、他の国にはみられない努力を傾注している。

⑤ 省エネルギー
 環境問題の根源を改善する省エネルギー、リサイクルにも力を入れている。例えばソーラーシステムで省エネを行った企業は税優遇を受けた。

⑥ 清潔化運動
 Gho首相は、シンガポール市民が現在享受している高い生活環境を維持するために、各自の居場所を清潔に保つのは市民の義務であると訴えた。(1995年2月5日)すべての選挙区に選挙区清潔化委員会を置き、居住区を清潔にする運動を行っている。ゴミの不法投棄者を監視するためのカメラが多く設置され、環境省は市民の通告も奨励している。ゴミを不法に捨てた者は新聞に写真が載り、リピーターは教育と見せしめに提起期間清掃作業に強制従事させられる。一方でゴミを拾った人には商品券が与えられる。

⑦ 生徒・青年への環境教育
 長期的で本質的な社会改革を目指し、環境省は学校グリーンクラブ活動を推奨している。環境省は実施基準マニュアルを作成し、例えば、小、中学校では年間30週以上週一回の活動をすれば十分としている。また、青年環境ネットワークが設立され、この大部分のメンバーが大学やその他の学校に所属する者が多く、今後の社会活動と環境との調和に貢献する青年をサポートする働きが期待されている。

まとめ

 シンガポールの環境政策は大きな成果を上げている。限られた国土において経済発展と環境保全を両立し、東南アジアで最も美しい都市として国際的にも高く評価されている。 一方、資源の乏しいシンガポールは、水資源の有効活用や供給元の確保、廃棄物の減量化・リサイクルの促進、エネルギー効率の向上、そして新エネルギー資源の開発など、取り組むべきさまざまな課題がある。

参考

シンガポールの政策(2011 年改訂版)環境政策編 http://www.clair.or.jp/j/forum/pub/series/pdf/j33.pdf

鈴木幸毅 編集責任 大坪嘉春 発行者 2001年 『地球環境問題と各国・企業の環境対応 (環境経営学)』税務経理協会

HN:カピバラさん


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