スウェーデンの国民税負担
出典: Jinkawiki
1950年代以降のスウェーデンの経済成長率は、90年代前半を除き、継続的にプラスに成長している。
スウェーデン、EU諸国平均、OECD諸国平均のGNPに対する税収入の比率 (2001年)
EU諸国は41.6%
OECD諸国は37.4%
スウェーデンは48%~53%(1980年代以降)
税金の額が、他国より多いことがわかる。
スウェーデンの税収入は直接税、間接税、社会保険料に分類できる。
直接税には、所得に課される税金と資本収入に課される税がある。
間接税には、財やサービスに課せられる税金で、アルコールやタバコなどの物品税がある。
社会保険料には、年金保険や医療保険、育児休暇中の両親保険、失業保険などの保険料がある。
個人の所得に対しての税負担については、一人の被雇用者の雇用費用の58%が税や社会保険料となっている。
対GDP比では、13.3%に及び、突出している。
給料のうちの約6割が税金としてとられているのだ。
現在のスウェーデンの一般間接税は25%である。
食料品などの生活必需品については、12%になっている。
社会保険料以外に企業に課される税金には、企業税がある。
法人の利益に対して課され、法人に対する国民所得税である。
1995年以降、企業税の税率は28%である。 OECD諸国との比較では、突出して高いわけではない。
歴史的にみると、GDPに占める総税収入の割合は、
1900年には7.5%
1950年には21%
2000年には50%強
福祉国家へと変貌していく過程で、負担は徐々に増加している。
戦後の1960年の年金改革に伴い、社会保険料は、雇用者の支払う保険料・自営業者の支払う保険料・国からの補助金で運営されることになった。
60年代から70年代にかけて、社会保険料率は徐々に引き上げられた。
福祉政策は、住民に身近なサービスは地方自治体、コミューン(基礎自治体)が責務を負うことで発展した。 地方税は住民サービスを充実してものにするための重要な要素である。 地方所得税率は所得に対して一定の率が課され、各自治体が税率を決定する。
地方税率は
1950年では12%
1960年では15%
1970年では21%
所得の2割が地方の福祉政策に回される。 充実した福祉があり、体感できるからこそ、このように高い税金を国民が支払うのだ。
ちなみに1971年には今までの夫婦合算税方式が、個別課税方式へと切り替わった。
このことにより、女性の労働市場参加が高まった。
1970年代を通じて、税負担は上昇した。
税および社会保険料のGDP比は
1970年に40%
1977年に53%
1980年に50%
1980年以降は上昇傾向が抑えられ、50~55%を推移する。
なぜ減少したかというと、1970年代に、税に対する批判が出たからである。
所得に対して不統一な課税が問題となった。
1980年代には、税制が複雑で不明瞭であると批判された。
そこで1990年~91年に「世紀の税制改革」と呼ばれる改革が行われた。
課税方法を統一化、税率引き下げ、間接税引き上げを行った。 労働に課される税金が増加する傾向にあった。 被雇用者も社会保険料の一部負担することになった。
2000年以降では、所得税減税が実行されつつある。 所得税減税が実行されつつある。
福祉の充実はそのままに、労働に対する税金を減らしていくことが課題であるされている。
環境保全政策とも連動し、環境に害のある活動には税金を多く課税することも考えられている。
今後の課題は、以上2つを実行しつつ、EU加盟による国際化の流れにどう沿っていくかである。 国際協調が必須である。
多田葉子 スウェーデンハンドブック 早稲田大学出版部 2004
140頁 税金制度と財政―福祉国家を支える税制制度 参考