スウェーデンの教育保障
出典: Jinkawiki
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特徴
個人の能力に合わせた平等な教育をすべての国民に与えるために、民衆主義を基盤とした教育を行う。 そのためスウェーデンの特徴である福祉国家の実現や教育も含む社会政策にも国民の意向が強く反映されている。 その主な特徴としてスウェーデンの学校は無償でほとんどが公立学校である。 また成人学校に代表されるように学習機会にも恵まれている。 つまり「生涯学習」を可能した「学習社会」が確立されているのである。
背景
経済格差による教育機会の格差を是正するために実施されている。 スウェーデンは現在でも直接選挙を行うほど民主主義思想が強い国家である。教育でも民主主義教育が重視されており、学生の政治関心も高い。そのため社会政策にも国民の意向が強く反映されていし、国民もまたそれを実感している。そこでスウェーデンでは国民によって高負担・高福祉の平等な福祉国家の目指し、実現した。その過程において教育機会に均等は重要なものだった。ただし北欧における平等精神とは、すべてのものの格差をなくすのではなく、それぞれの人が持つ個性や能力を尊重し、それぞれの人にふさわしい対応をするということこそが平等であるというように考えられている。 このような社会のためにスウェーデンでは国民総背番号制度、急進的な男女平等、コンピュータが早くから普及した高度情報化社会などの積極的政策や制度の変更が頻繁に進められる。教育でも生徒のフレックスの導入、実用専門学校の設立などが実施された。
このように現在は福祉国家で教育先進国として知られるスウェーデンだが、かつては教育後進国で、高度な教育は富裕層だけしか受けることはできなかった。そのため、スウェーデン国民にとって教育の機会の保障は悲願だった。現在でもスウェーデン人の学習意欲は高い。 1932年、社会党政権となり、それ以降も主に社会党によって政権が担われ、スウェーデンの福祉国家を目指し始めた。 そのため、この頃1930年代に教育の民主化運動も始まった。 第二次世界大戦後から訪れた経済成長期に、科学的研究の進歩と国民的な合意に改革によって民主的に数々の福祉政策に実現という成果を得た。これより、スウェーデンの高福祉・高負担の福祉社会が成立した。 福祉の充実による生活の安定によって、社会的弱者もあるレベル以上の生活をすることが保障される。すると国民の文化的水準も上昇した。文化の指数として図書館及び図書貸し出し数が世界トップクラスの数値を示すようになった。 そして1960年代以降からは教育改革が本格的に開始された。1962年、9年間の義務教育を行う総合性基礎学校の全国的に設立する。高等教育、大学への進学率も急増した。さらに学校をより大衆のものとして開放するため、近い将来に入学試験を廃止し、奨学金の拡大、高等教育・大学教育でも授業料の無償化を打ち出し、20世紀の間に実現させた。 また企業や労働組合も、労働者が積極的に教育を受けることをおおむね肯定している。有給休暇制度などがあるように、パートタイマーも含むすべての労働者たちの社会保障は充実している。そのためスウェーデンでは教育と労働生活の両立を可能にし、1968年から労働者などを対象にした成人学校が設立された。これは高齢者の学習機会を増やすことにもなった。 スウェーデンでは、このような教育の充実によって「生涯教育」の理念が生まれ、「いつでも、どこでも、だれでも、無料」で学べるようになった。 その一方、最近は若者の学力や学習意欲の低下が問題になっている。
学校制度
現在のスウェーデンの学校は無償でほとんどが公立学校で少人数教育が基本的である。 スウェーデンでは就学前教育に力を入れていて、保育園での教育も学校教育カリキュラムの一環に含まれている。 スウェーデンでは、日本の初等教育と中等教育にあたる9年間の義務教育期間を基礎学校としていて、低学年、中学年、高学年と三段階に分けている。また基礎学校では生活教育、語学教育が重視されたカリキュラムである。 基礎学校期間では基本的には学校の成績がない。高学年の二年から初めて成績がつけられる。 高校学校からは義務教育から離れ、自由選択になる。 高校、大学への入学のためには試験はなく、成績表によって選抜される。 ただし、成績が悪くとも成人学校で補修をすることができるので、実際にはほとんどの人が希望通りの進路選択ができている。 また大学で学ぶのは、専門科目のみである。 成人学校は主に成人の再教育の場になっている。義務教育の補充、移民のための教育、社会人向きの専門教育など多様な教育ができ、多くの人が利用している。
参考文献
学習社会スウェーデンの道標 中嶋博 近代文藝社 1994
スウェーデンののびのび教育 河本佳子 新評論 2002
北欧教育の秘密 遠山哲史 つげ書房新書 2008
スウェーデンの社会 岡沢憲芙・奥島孝康 早稲田大学出版部 1994
国際教育論 太田和敬 文教大学人間科学部 2012
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