スウェーデンの教育4
出典: Jinkawiki
1、スウェーデンとは
スウェーデンは北欧にある人口1012万人の小国である。20世紀初めまでは欧州でも貧しい農業国で、1860~1930年の70年間に当時の人口の4分の1にあたる約120万人が米国などに移民した。しかしその後の工業化は著しく、数々のグローバル企業を輩出し、同時に世界最高水準の福祉国家を築き上げた。二度の世界大戦でも中立非同盟を貫き、第二次世界大戦後は国連など国際舞台で和平や軍縮をリードしてきた。先進国が抱える高齢化問題は高福祉政策で対応、男女平等と働き方政策を含む子育て政策を充実させ少子化を克服した。2015年には16万3千人もの難民を受け入れ、世界の注目を集めた。
2、インクルーシブ教育
1980年以降のスウェーデンの学校が目指してきたインクルーシブ教育とは、すべての子供が同等に学校で教育を受ける権利を保障することだ。狭義には障害児教育、特別支援教育で使われていた言葉。広義には傷害のあるなしに限らず、子供の社会、経済的な事情や、移民・難民などの背景、性別や人格、宗教などにかかわらず、地域の学校で同じ価値がある教育を受ける権利を保障することだ。スウェーデンの教育は、子供たちを物理的に同じ学校に集め、マジョリティーに同化するように仕向けるものではない。同じ学校の中で、あるいは同じ教室の中でそれぞれが異なる個人として受け入れられ、尊重され、子供に合った教育環境と支援を整えていくことを目指している。
3、無償教育
スウェーデンの初等中等教育は公立も私立も無償。給食も無償で提供されている。16歳未満の子供には児童手当として、16歳に達すると学習補助金として月に1050クローナ(約15000円)が支給される。スウェーデンでは家庭の社会的、経済的事情にかかわらず、平等な機会が子供たちに与えられている。また、公共交通機関の定期券は自宅から学校までの距離によって支給される。教科書や副読本などの教材は一定期間使いまわし、ノートや鉛筆、ファイルなどの文房具も学校でまとめて用意される。以上のようにスウェーデンでは、基本的に保護者が学校に関わる費用を負担する必要はない。
4、リカレント教育
「人生100年時代」への対応を考える最近の日本の教育改革の議論の中で、社会人の学び直しの機会という意味で「リカレント教育」という言葉が使われるようになった。リカレントとは、繰り返し流れを変えるという意味。学校教育を修了後、就職して定年まで働き続け、退職後は余暇を楽しむというような、従来は変えることができなかった人生の一方向の流れを改め、一度社会に出てからも必要に応じて大学などに戻って学び直し、その後はまた職場に戻ることを可能とする制度を「リカレント教育」と呼んでいる。これの元はスウェーデン語の「オーテルコマンデ・ウートビルドニング」を英訳したもので、1970年代にフランスのパリにあるOECDが「生涯学習」を実現するための具体的戦略として提唱したことから、世界各地に知られることとなった
5、参考文献
「みんなの教育スウェーデンの人を育てる国家戦略」(川崎一彦、澤野由紀子、鈴木賢志、西浦和樹、松井久子)2018年ミツイパブリッシング
「スウェーデンののびのび教育」(河本佳子)2002年新評論
ハンドルネーム:キヨ