スクールソーシャルワーク
出典: Jinkawiki
スクールソーシャルワークとは スクールソーシャルワークとは、学校をベースに展開することである。たとえば、児童虐待問題に遭遇したとき、個人の価値や社会の価値に基づくと、虐待行為の悲惨さから親への批判、子どもへの同情に傾きがちである。しかし、ソーシャルワークの価値に基づくと虐待者である親も含めて援助活動を行う事となる。具体的には、なぜこのような状態になったのか、起きている状況にとらわれずに、様々な環境を含めて検討する。これを教員とともに考える事が重要である。この作業であるアセスメント(見立て)、その後のプランニング(手立て)、モニタリング(見直し)という社会福祉援助プロセスに基づいて実践を行う。 また、社会福祉援助の範囲として、ミクロ、メゾ、マクロレベルが存在するが、学校領域に合わせると、ミクロレベルは個人事例への環境を視野に入れた取り組み、メゾレベルは校内体制づくりや変革への取り組み、マクロレベルは制度、政策立案などシステムづくりにかかわる取り組みといえよう。各レベルではそれぞれのシステムサイズに合わせた援助理論に基づいた実践が展開される。ミクロレベルでは、児童家庭福祉に関する知識を活用し、非行、不登校、児童虐待などのさまざまな子供、背景にある家族の問題に介入する。メゾレベルでは学級崩壊や自殺、事故、災害などが発生した時に組織論、システム理論などを活用して学校組織に介入する。マクロレベルでは市の相談体制づくりなど政策づくり、地域組織づくりに介入する。スクールソーシャルワーカーはさまざまなニーズを調整しながら子どもの最善の利益の尊重を考える。
スクールソーシャルワークにおける実践 スクールソーシャルワーカーが学校教育現場で必要とされるためには、他の専門分野の専門性の違いを意識し、ソーシャルワークの専門性を発揮していく必要がある。不登校では、まずは子どもの目線に立ち、子どもの思いやニーズを受け止め、一緒に取り組んでいく立場をもつ事が重要となる。これにより、学校や保護者に対し、子どもの思いやニーズを代弁していくことになる。また支援を展開していく上では、子どものストレングスに視点をあてていく事が欠かせない。一方、環境改善に向けた取り組みを行っていく事も大切である。例えば、不登校の背景にいじめや友人関係または教員とのトラブルがある場合には、学校と家庭が協力して取り組んでいけるように支援し、家庭問題が背景にある場合には、学校、家庭、関係機関の協働支援体制を築いていくことになる。また、不登校の子どもたちを支援する教育支援センター(適応指導教室)やフリースクール等が学校と随時連携を深め、子どもの学校復帰や、将来の社会的自立に向けた取り組みを行っていけるように支援していく事もスクールソーシャルワーカーに求められる役割である。さらに、引きこもっている子どもへの家庭訪問や地域の中での子どもたちの居場所作り、学習支援におけるボランティアグループの形成、家族会の活動など、社会資源の開発に向けた取り組みも求められる。このような環境改善の取り組みは、不登校という状況を子ども自身が自ら解決していくためのエンパワメント推進していく上で欠かせない支援である。
日本のスクールソーシャルワーカーの抱える課題 課題として、国の施策の不安定さがあげられる。スクールソーシャルワーカー活用事業が文部科学省によって始められたのは2008年度であった。予算15億円を投じ全国141地域を指定し、事業の展開を図った。しかし、事業が開始されて間もなく国は予算の3割を補助するにとどめて、残りの7割を地方自治体が負担するという方式にした。国が長期的な展望を欠いたなかで、教育現場もどのように今後を見据えて事業を展開していけばいいのか、明確なビジョンを描く事ができないし、人材養成のプログラムを組む事ができにくいという問題がある。今後、どのように安定性をもった制度、施策にしていくかが課題である。また、学校現場の雇用が限られているので、スクールソーシャルワーカーとして働く事を希望する人が減少する恐れがある。スクールソーシャルワーカーとして雇用される場を増やす事も課題である。
アメリカのスクールソーシャルワーク 背景としては、アメリカでは子どもの就労をめぐる問題には、移民家庭の問題が背景にあった。移民の数は1901年から1910年の10年間で約880万人いた。 文化も言語も異なる移民は、学校教育を受ける環境がなかった。開始時期は、州によって異なるが、主にニューヨーク、ボストン、ハートフォードにおける活動が代表的であるとされており、それぞれ1900年代前半に開始された。それぞれの都市のスクールソーシャルワーク活動の開始は、学校雇用ではなく、セツルメントハウス、女性教育協会などの団体の雇用だった。教育委員会雇用となったのは1913年のニューヨークにおいてだった。
参考文献 「ソーシャルワーカーの仕事と生活」光行淳子 株式会社学陽書房 2009 「スクールソーシャルワーカーのしごと」門田光司 奥村賢一 中央法規出版株式会社 2009