ステレオタイプ2
出典: Jinkawiki
ステレオタイプ(stereotype)という用語はもともと社会学の用語から発展したことばである。 これは、外界を把握するためにまとまった情報を少ない労力と時間でとらえられるようにできる人間に標準装備されている情報処理システムであるといえる。また、そのように処理されることをステレオタイプ化という。
この言葉は、ジャーナリストのリップマン(Lippmann,W.[1889-1974])が彼の代表的著書「世論(1922)」で用いたのをきっかけに、社会心理学のみならず、広く社会科学上の重要な概念となったといわれている。彼はこの概念について次のように述べている。
「多くの場合、われわれは最初に見てから定義づけるのではなく、最初に定義づけてから見る。外界の、あの途方もなく、ざわついた混乱の中で、われわれは文化がすでに定義づけたものを選び出し、文化が類型化したままにその選択されたものを近くしがちである。」
ステレオタイプ化の仕組み
1.認知の仕組み
1)カテゴリー化
あらゆる事物を属性・特徴などで分類分けするカテゴリー化という認知の仕組みがある。
ダチョウ、ペンギン、鰯、スズメ、たんぽぽ、サメ、鰹、サクラソウ、バラ、とあったら、すかさず・・・
A:ダチョウ、ペンギン、スズメ、= とり
B:鰯、サメ、鰹 = さかな
C:たんぽぽ、サクラソウ、バラ、= 花
というように我々は自然とひとまとめにして分かり易いように分類しているのである。
2)差異と類似の強調
我々はあらゆる事物に差異点や類似点があることがわかると自然と分ける傾向がある。
例えば、大・小関係、多・少関係、長・短関係など。
タジフェルとウィルクス(1963)の実験では、次のようなことを行った。
1.長さが少しずつ異なった8本の線分を1本ずつ見せ、長さを推定させた。
2.次のような条件のもとで下記の課題を行った。
・線分ラベル群:短い方の4本に「A」、長い方の4本に「B」というラベルを線の上につけて判断させた。
・無関係ラベル群:長さに関係なく「A」「B」というラベルを8本の線分それぞれに付けた。
・ラベルなし群:線分にラベルを付けなかった。
この実験の結果、線分ラベル群において4番目に短い線分と5番目に短い線分の長さの差異を、他の条件よりも大きく見積もったことがわかった。
ここから、カテゴリー間で差異の強調とカテゴリー内での差異の縮小が生じたのだろう(長い群と短い群とにわけているように)と考えられる。
3)ウチとソトの違い 自分が所属している集団に対してはきめ細やかな認知をするにもかかわらず、自分が所属している集団に対してはどれも同じように見えてしまうという外集団均質効果がある。人間社会であげれば、性別・年齢層・職業などなど。
例)・最近の若い連中はあいさつがない。
・おばさんは韓国ドラマが大好きだ。
・県民性「〇〇に住む人たちは~な人たちだ」 などなど
また、自分の属する集団のほうがよく見える内集団びいきも発生する傾向がある。
例)・親ばか(自分の子ども自慢) ・民族間における自慢合戦
さらに、違いがあることによる不満も発生する。
例)・貧 富 の 差 → カテゴリー化によって差異を強調・差別意識の向上
・勝ち組と負け組 → 同 様
ステレオタイプの維持
1回ステレオタイプが形成されるとなかなか消えにくいといわれている。それには確証バイアス(自分の信念に肯定的な情報のみを集めようとする傾向)が関係していると考えられる。その事物に対して、たとえ客観的に正しい情報を与えられたとしても、それらの情報をサブタイプ化(そぐわない事物に対しては例外として処理すること)してしまう傾向が多く、既存のステレオタイプはそのまま保存されてしまう傾向があるからであると考えられている。 もう一つはステレオタイプによる認知は実際に認知者自身が気づくことはなく、無意識になされるために是正の機会が少ないからだと考えられている。
そのため、ステレオタイプは自動的にも維持されやすいのであると考えられている。