ストリートチルドレン
出典: Jinkawiki
特に親や成人によって養育、保護されることなく、路頭で睡眠をとり、家を持たないものを言う。なおstreet urchin は、直訳すれば「路頭の悪ガキ」といったような意味合いであるが、その子供が、たとえ必要であるからとはいえ無作法な振る舞いをし、行儀が悪いといったニュアンスを含めたものである。 ストリート・チルドレンは通常、小商い、荷運び、靴磨き、ごみ拾い、さらには売春などによって現金収入を得て生活してなければならない状況にあるため、その面で社会的問題となる傾向を含むため。
現在、世界中にストリートチルドレンは1億人以上いると国連は推定している。
問題点
①エイズ孤児
サハラ以南のアフリカ諸国ではストリートチルドレンの半数が孤児であり、その主な原因はHIV/AIDSであるといわれている。2001年、サハラ以南アフリカ諸国の子どもの12%が孤児であった。これはアジアの孤児比率(6.5%)の2倍で、ラテンアメリカ(5%)の2倍以上である。この差はおもにHIV/AIDSによるものである。なぜ他の地域に比べ、サハラ以南のアフリカ諸国でHIV/AIDSが蔓延しているのか。それは医学的な問題だけではなく、政治的背景、貧困、女性の地位の低さ、出稼ぎ労働、HIV/AIDSに関する無知・誤った知識・タブー視などといった、社会全体の問題が複雑に絡まっている。また、エイズ孤児(15歳になるまでにエイズで親を亡くした子ども)が成長し買春や出稼ぎ労働をすることによって起こる悪循環も挙げられる。 HIV/AIDSの影響を受けた子どもたちが強いられているトラウマと困難を言葉にするのは簡単ではない。病んで死の床につく母あるいは父を助けたくても、見ていることしかできない。家族が、子どもの将来のために計画を立てることなどほとんどできない。親の死に対する悲しみ、将来への不安、兄弟離別、悪化する経済状況の苦悩、HIV/AIDSに関わる差別と孤独感といった、いくつもの要因が絡み合って、子どもたちに被害をもたらしている。しかも、残された孤児はしばしば遺産を奪われ、ますます貧窮を強いられる。彼らは拡大家族や里親家族に引き取られたり、子ども達だけで生活する。またグループホームや孤児院といった施設に入る。それらの機会がないか、虐待や偏見など子ども達にとって耐えられない環境の場合、路上が子ども達の唯一の生活場所となる。
②都市への人口集中
ストリートチルドレンの多くは都市部におり、今も世界中で増え続けている。その背景には、親とともに都市へでてきた子どもたちが路上へと出て行く傾向がある。経済危機の影響によって、打撃を与えられた農村部で暮らしていた人々が地方の貧困から都市へと逃れる。職や子どもの教育の場を求め、都市に移住する人々が集中する。急速な都市化によって生まれた不健康で過密なスラムの住宅に住み、都市への急速な人口流入により慢性的な職不足、不安定な低賃金・長時間労働が発生する。都市そのような家族は都市に来ても、なお苦しい生活が続き、子どもたちはそういった悪条件の生活環境の中で高まるストレスや、家計を助けるという必然性からストリートへと押し出されていく。 フィリピンには現在150~180万人のストリートチルドレンがいるとされ、うち120万人は首都マニラにいるとされている。マニラには全人口の約40%が住むといわれているが、これらのうちのほとんどが農村・漁村から移り住んできた人々である。1970年代から、首都圏への人口集中(10年間で11万人)が進む。しかし、人口が増加しても雇用条件や住宅環境など、都市の整備がされていない現状にある。この現状を「擬似都市化」という。1500年代以降スペイン領時代、1899年以降アメリカ領時代に行われたと土地の囲い込みは現代の貧困を生み出し、一部のエリートと大多数の貧困層からなる社会を作り出した。1970年代初めの「緑の革命」では小麦・稲において従来のものより高収量の品種が発明され、食料不足に悩む発展途上国の農業に明るい希望を与えた。しかし、技術革新・機械化が進んでも、それについていけるだけの資金力がなければ、格差も拡がり、ますます多くの人々を都市に送り出すことになる。
③家庭崩壊
子ども達にとって最も大切な生活の場である家庭が彼らにとって耐えられないものとなったとき、子ども達は家庭から路上へと生活の場を移す。不均衡な経済の発展により、大量消費社会において、誰もが利己的に経済的豊かさを求めるが、貧困家庭の大人には、雇用がなくそれを手にすることができない。こうした中で、人と人とのつながりが薄れ、コミュニティーは崩壊へと導かれていく。精神的に追い詰められた大人は心の支えを失い、ドラッグやアルコールに手を染め、子どもを身体的・性的に虐待するようになる。また、離婚率が増加し、義理の親からの暴力を受ける傾向も強い。子ども達は家庭に居場所を失うと他に拠り所を得ることもできず、耐え切れずに路上へ逃げ、ストリートチルドレンとなる。愛された経験を持たない子ども達は、愛し方を学ぶこともできない。また、路上では生活習慣が身につかないこともあり、親と同様、自らも家庭を築くことが困難となる。
④社会保障システム
途上国にストリートチルドレンが多い理由に、児童を保護する社会保障システムや児童福祉の法的な整備が発達していないことが挙げられる。ロシアの90%のストリートチルドレンは社会的孤児であるとされている。子ども達の親は生きているが、面倒を見ることのできない状態なのである。また、毎年、約二万世帯が親権を失っていることから分かるように、国の政策によっても孤児の数は増えている。ロシアでの児童虐待の問題は深刻であり、家、施設を飛び出す子どもは後をたたない。ストリートチルドレンを捕らえ、親元に強制的に帰すような取り組みでは、親の暴力から逃げてきた子どもにとって全く助けにならない。家庭とともに子どもたちが帰っていくことができるよう、努力していく姿勢が求められている。近年国家によりストリートチルドレンのための特別施設が建設されたが、その数は全体を包括するに至っていない。
⑤無関心
ストリートチルドレンは社会的に排除されている存在であり、誰からも受け入れられることもなく、路上での危険な生活を送っている。こうしたストリートチルドレンを生み出す根本的原因の中に、「無関心」が大きく関わっているのではないだろうか。本来、子どもを保護する立場にある大人が、子どもの権利を無視し、その可能性に目を向けず、関心を持たないならば、子どもたちはどこに居場所を見出すのか。「無関心」は社会を根の部分から蝕んでいく病根であると考えられる。また、無関心は、殺人や裏切から目を背けることによって、かえってそれらの悪を幾倍にも増長させてしまうまでにつながる。無関心である、ということに致命的に欠けているのが「他者」の存在である。要は「自己」しかなくなっているのである。私たちにも言えることであるが、「自己」に「他者」が不在であることは、「他者」の痛みや悩み、苦しみの不感症に陥っていることだといえる。
*参考文献*
・特定非営利活動法人 シャプラニール=市民による海外協力の会 http://www.shaplaneer.org/activity/bangladesh/street_children_dhaka.htm
・プラン・ジャパン http://www.plan-japan.org/home/topics/080905egyp/
・「ストリートチルドレン メキシコの路上に生きる」工藤律子著 岩波ジュニア新書発刊
・ウィキペディア