ゼロ・エミッション

出典: Jinkawiki

目次

ゼロ・エミッションとは

国連大学が94年、「ゼロ・エミッション研究構想」を打ち出した。ゼロ・エミッションとは「水圏、大気圏への排出を一切廃絶し、一産業部門における廃棄物が他部門での再生原料に転換されること」と定義されている。一つの産業部門から出る廃棄物がすべて他の部門で原料として利用されれば、環境への排出は一切ない。そうした連鎖ができれば、環境保全と経済成長とは両立するという。その実現を目指しての研究プロジェクトが95年からスタートした。実際には、ゼロという言葉にはそれほどの意味はなさそうだ。廃棄物をミニマムにすることが、最も効率のいい生産であり、競争力の強化につながるということをキャッチフレーズ的にゼロ・エミッションと表現したにすぎない。

ゼロ・エミッションの発想

ゼロ・エミッション研究構想を推進しているギュンター・パウリ国連大学顧問はベルギーの大学を出て、いくつも事業を起こしたアントレプレナー(起業家)である。最後に創業した洗剤の会社で、巨大な競争相手のプロクター・アンド・ギャンブル社とどう対抗するかを考えた。そこで、クローズト・ループ、つまり、廃棄物を新たに原料として有効利用する事業経営の道を考えだしたといわれる。パウリ氏の発想は、先進国が開発した技術を発展途上国に供与するというのではなく、先進国と途上国が一緒になって、生産規模が小さい途上国に適した全く新しい技術を創造しようというもので、国連大学では、ビールの醸造業を最優先に考えている。ビール製造過程で排出されるしぼりかすは現在、日本では肥料などに使われている。しかし、ビールびんはカセイソーダで洗浄し、この排水を処理したあと捨てている。ゼロ・エミッション研究プロジェクトでは、砂糖からつくった洗浄剤を使うことを考えている。それを使えば、洗浄後、排水を養魚場に流し込むことができる。魚にとってはいい栄養になる。砂糖を洗剤、プラスチック原料などに使うと、砂糖原料を生産する途上国の収入を増やすことにもつながる。

リサイクルとゼロ・エミッション

古紙を原料に使った再生紙のコストがむしろ高いように、リサイクルはコスト高になるというのがまだ一般的な常識である。これに対し、ゼロ・エミッション研究構想を推進しているギュンター・パウリ国連大学顧問は、どんな廃棄物であっても別の生産サイクルに使うほうがむだがなく、かつ産業界の競争強化につながる、と主張している。

引用・参考文献

竹居照芳 日本経済新聞社編 『環境の世紀 日本の挑戦』 日本経済新聞社 1995年7月


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