ソンミ村報道写真
出典: Jinkawiki
アメリカにとって、共産主義の拡大を防ぐ、「正義」の戦争であったベトナム戦争は、この虐殺事件の報道写真が世界に発信された結果、その正当性を失い、国内の反対運動を激化させ、敗北にいたった。いかなる「正義」も、撃ち殺されようとする瞬間の恐怖に引きつる家族の表情を正当化することはできなっかた。正義の戦争と信じていたアメリカ軍は、カメラマンに自由に写真を撮らせた結果として、一部の写真では、カメラの視線が、銃口と全く同一の構図となっている。戦争報道の影響力に学んだアメリカ軍は以降報道担当官を置き、戦争報道を統制し、報道は報道担当官によって軍事機密として徹底的に管理され、国益・自軍に都合の悪い写真(戦闘・兵士の死体)は撮らせなくなった。 つまり、アメリカ軍による虐殺写真はもうあり得なくなった。同理由で、以後の民族紛争でも報道カメラマンが狙撃されることが多くなった。また、より刺激的映像を求める大衆は、悲惨な写真・映像がなければ「虐殺」を信じなくなった。マスメディアは飢餓・戦争が虐殺レベルになるまで報道を控えるようになった。アメリカはまた、「テロとの戦争」という「正義」の戦争を始めるようになった。
森田一義
参考文献
桃木 至朗 (監修), 帝国書院編集部 (編集), 川北 稔.新世界史図説タペストリー 七訂版 [大型本]
柴田三千雄/弓削達/辛島昇/斯波義信/木谷勤/近藤和彦/石橋崇雄/大津留厚/高山博/中野隆生/林佳世子(2012)『新世界史 改訂版』山川出版社