ダウン症
出典: Jinkawiki
名称と原因
正式にはダウン症候群といわれる。1866年にラングドン・ダウン(Langdon Down)医師によって、知的障害のある人たちの中に共通した身体的特徴のあるグループがあると報告された。当時はモンゴリズム(蒙古症)と呼ばれたが、これは誤りである。1959年にはダウン症の原因が21番染色体の過剰であることが判明した。その後、最初に発表したダウン医師の名前からダウン症候群と呼ぶことになった。 ヒトは、1つの細胞の中に合計46本の染色体を持っていて、染色体には番号がつけられている。ダウン症の多くは21番目の染色体が3本ある。このタイプを標準型21トリソミー(94~96%)のダウン症と呼ぶ。このほかに、ダウン症は過剰な染色体が他の染色体に付着するタイプの転座型(4~5%)と、同一個体内で正常核型細胞と異常核型細胞とが混在している状態のモザイク型(1~2%)のタイプがある。
症状
眼裂斜上、内眼角贅皮、両眼間開離、耳介低位、鼻根部平坦などからなる特有な顔貌を示す。 乳児期には筋緊張低下、哺乳不良、体重増加不良が特徴で、中等度の発達遅延を示す。短指症、第一・第二足趾間開大、単一手掌横断線(猿線)、第五指単一屈曲線、皮膚紋理異常も診断に役立つ。
先天性疾患が約半数に認められ、心室中隔欠損、心内膜床欠損Fallot四徴症、動脈管開存の順に多い。肺高血圧症が合併しやすい。さらに十二指腸閉鎖、鎖肛、食道閉鎖などの消化管奇形や、白血病、類白血病反応transient abnormal myelopoiesis などの血液疾患や環軸椎亜脱臼の合併が多い。
心理、行動特性
(1)知的機能
同年代の定型発達児に比べて遅れる。知能指数は個人差が大きくおよそ25~75の範囲である。知能指数は生活年齢が上昇するにしたがって下降する傾向にある。これは、定型発達児の発達に比べてゆっくり成長するため、生活年齢の上昇にともない遅れの差が大きくなるのである。ただし、知的機能そのものは15~17歳ごろまでは着実にのびる。その後の変化は、一定期間維持し、ゆるやかに低下する物が多いと推測されるものの、教育歴などの影響もあり、詳細は不明である。
(2)言語・コミュニケーション
知的機能同様個人差が大きい。日常生活の内容であれば、健常者と同程度のコミュニケーションが可能となるダウン症者もいる。ただし、入賞時期からダウン症児の言語・コミュニケーション能力の発達には遅滞が認められる。「ことば」の前のコミュニケーション能力として大切とされる共同注視なども、健常者と比べて遅れがちになる。特に、表出言語能力は顕著に遅れる。健常者が意味のある「ことば」を初めて話すのはおよそ1歳ごろだが、ダウン症児の場合には平均して2歳6カ月ごろである。二語文、三語文などの産出の遅れも顕著で、特に動詞の使用頻度が少ない傾向にある。
(3)運動機能
乳児期から遅れるものが多い。ダウン症児の運動機能発達について、おすわりができるようになるのは11~12カ月独歩が22~26カ月とされている。また、発達の順序性も座位からはいはいをせずに歩行にいたる者など、幼児期に特異な発達経過が認められる場合もある。
青年期のダウン症者の運動機能では、筋力や平衡性は顕著に低い。成人期以降になると、動作の緩慢さが顕著となり、加齢にともない運動能力も低下してくる。特に、平衡性の低さが成人期以降、動作の緩慢性さに影響を与えている可能性もあり、幼児期からバランスを意識した活動に無理なく継続的に取り組んでいく必要がある。
(4)社会性、適応行動
ダウン症は全般的に対人関係が良好で社会的スキルの獲得も良好である。深刻な行動上の問題はほとんど見られない。社会生活能力は、知的能力よりも発達が良好な傾向にあり、少しの支援があれば一人暮らしできる者もいる。
性格特性などについては、従来より明るく、朗らかで、人なつっこいなどの表現が頻繁にされる。ただし、ダウン症児・者の行動上の問題として「頑固である」という課題が頻繁に指摘される。頑固さの背景には、理解言語に比べて表出言語能力が低いこと、本人の予測がどの程度できていたかという状況理解能力などとの関連が推察される。頑固さへの対応としては、教育・支援者側の見直しとダウン症児自身の自己調節能力を育むことが求められる。
- 参考文献
特別支援教育の基礎知識 橋本創一・霜田浩信・林安紀子・池田一成・小林巌・大伴潔・菅野敦編著 明治図書
NEW小児科学 清野佳紀・小林邦彦・原田研介・桃井眞里子