テイラーシステム
出典: Jinkawiki
テイラー・システムとは、科学的管理法の父と呼ばれるフレデリック・テイラーが、それまで労使双方にともに経験や習慣に基づく管理や生産を行っていた状況に、客観的な基準を作ることで生産性の向上、労働賃金の向上を可能にする科学的管理法。
概要
テイラーが実際に科学的管理の方法を生み出したのは1898年から所属していたベツレヘム・スチール社での生産管理の現場においてだったが、それをあらためて1911年の著書『科学的管理法の原理』の中でまとめて提示している。ただ、テイラーの科学的管理法は著書が提示される前年の1910年には、アメリカ東部の鉄道会社が貨物輸送運賃の値上げを要求した事件をきっかけにアメリカ全土にすでに広まっていた。フレデリックが家政学に科学的な管理法を取り入れたのもそれ以降だったのだろう。 俗にテイラー・システムと呼ばれるテイラーが主張した科学的管理法は「課業管理」「作業の標準化」「作業管理のために最適な組織形態」の3つの原理からなり、中でも「課業の設定」「諸条件と用具等の標準化」などを含む「課業管理」がシステムの中核を成している。 「課業の設定」は1日のノルマとなる仕事量を設定することで、「諸条件と用具等の標準化」は使用する道具や手順などを標準化することを指す。フォードはこれに従い、労働時間を9時から17時に定めた。仕事に従事するオフィシャルな時間とそれ以外のプライベートの時間を明確に分けた。いまとなっては当たり前となっている就業時間という考え方だがオリジナルはここにある。 同時にそれは仕事の場とプライベートの場の分離でもあったわけである。それまであった家内制手工業のような形態はマイナーなものとなってく。家と仕事場が物理的にも切り離されて、家具も家庭で用いられるものとオフィスで用いられるものとはデザインに大きな違いが見られるようになっていく。その流れと表裏一体の形で、家政学における家庭内労働の科学的管理の導入とそれにともなう女性の地位向上が進む。近代主義の基盤の1つに個人主義があるわけだが、このように仕事と家庭、公私のあいだに仕切りを設けることで、同時に「個人」というものの基盤を確立していったのが近代だったとも言える。