ディスレクシア
出典: Jinkawiki
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1.ディスレクシアとは
ディスレクシアは、耳から入る情報、目から入る情報などが正確に、自動的に、素早く処理できないというように、読字や言語スキルに困難がある状態をいう。 知的能力及び一般的な学習能力の脳内プロセスに特に異常が無いにも拘らず、書かれた文字を読むことが出来ない、読めてもその意味がわからない(文字と意味両方ともそれぞれ単独には理解できている)、などの症状が現れる。逆に意図した言葉を正確に文字に表すことができなくなる「書字表出障害(ディスグラフィア)」を伴うこともある。
2.ディスレクシア(Dyslexia)の由来
Dyslexiaという単語は、ギリシャ語のDys(不十分な、乏しい、不適切な)とlexis(単語、言語)が複合された言葉であり、その意味は「不十分あるいは不適切な言語」ということになる。1884年にベルリン(R. Berlin)によって報告され命名された。
3.ディスレクシアの発現率
日本では5%程度、英語圏では10~20%程度と言われている。 日本は世界的に見ても教育熱心な国であり、識字率の高さは世界有数である。日本語は発音と綴りに複雑さがないこと、また、「普通である」ことを大切にする日本の文化がディスレクシア発見の妨げになっているのではないかという見方もある。
4.ディスレクシアの原因
原因はまだ完全に明らかではないが、脳の発達と機能のあり方ほかの人々とは異なっていることが分かっており、特に左脳内の文字と意味の相関関係を司る特殊なプロセスに何らかの障害が発生しているのではないかと考えられている。そして、読みの重要な要素である単語中の音を識別することに問題を持つことも見出されている。さらに遺伝が関係しているとも言われている。ディスレクシアの人の場合のディスレクシアの子供は、ディスレクシアの両親から生まれる可能性が高くなっている事が分かり、アメリカではこのような遺伝学についても研究されている。
5.ディスレクシアの徴候
以下の徴候は、ディスレクシアの査定をする時の目安として参考になるものである。
・音の連続や、単語の音節を聞き取ることが不十分である。
・単語の読み取りが困難である。
・行を飛ばして読む、どこを読んでいたのかがわからなくなる。
・単語の書き取りに困難がある。
・書き順がでたらめである。
・鏡文字を書く。
・漢字のへんとつくりを間違える。
・書いたり読んだりするとき、数の連続性(18と81)や、文字の形(bとd、「め」と「ぬ」と「ね」)、単語の文字のつながり(signとsing)を把握する力が弱い。
・考えたことを文章に表現することが困難である。
・話し言葉がすぐに出ない、言葉にするまでに時間がかかる。
・聞いたことを言葉にして説明することが正確でない、あるいは完全ではない。
・考えたことを口述表現することが困難である。
・空間における方向(上下左右)や時間の把握(昨日と今日、月と日)に混乱がある。
そのほかの特徴
・忘れっぽい。
・アトピー、アレルギー。
・疲れやすい。
・手先が不器用、運動神経が鈍い。
・ADHD(ディスレクシアの30%以上が併せ持っていると言われる)。
これらの徴候を示す人が全員ディスレクシアというわけではない。言語に問題があってもディスレクシアが原因ではない場合もある。また、ディスレクシアの特徴をすべて持つ人はほとんどいない。普通、一つか二つ、あるいは数個の特徴を示すのが普通である。
6.ディスレクシアへの支援
ディスレクシアは生きている間ずっと続く状態である。病気ではないのでそれを治すことはできないが、さまざまな支援によってその状態を改善しうる。
○学習面の支援
・学校教師、家庭教師、学習セラピスト、言語セラピストの援助を利用し、個人ペースで学習を進める。
・試験や授業の方法を変更する。(録音された教材の使用、コンピュータの使用 等)
・教室を整理整頓し、雑音を最小限にして、注意が散漫するのを防ぐ。
・「聞く、見る、感じる」といった複数の知覚を同時に使って行う言語学習。
○情緒面での支援
・学校教師や両親などの周囲の身近な人の勇気付け。
・自分以外の人を援助する機会をつくる(ボランティア等)。
・知識豊富な心理療法家や医者などによる専門的な援助。
7.参考文献
・玉永公子(2005)『ディスレクシアの素顔』論創社 192pp
・ローレン・E・モイニハン、藤堂栄子訳(2006)『ディスレクシアってなあに?』(知りたい、聞きたい、伝えたい おともだち の障がい①)明石書店 43pp
・「学習障害(LD、ADHD) ディスレクシアの症状と原因」http://j.16f9.com/LD/352_1.html
・「ディスレクシア -ぼくらの研修日記」http://edublog.jp/fmv/archive/313