デンマークの税制

出典: Jinkawiki

目次

概要

デンマークでは国民の生活は国の責任において保障されている。医療費はもちろん、教育や年金などのための拠出が無料である。その分デンマークでは税金が高い。その負担は楽ではないが、人々は自分の払った税金の使い道が目に見えてわかるので、高い税金でも受け入れている。自分たちはこれだけお金を払っているのだから、国はしっかりしてもらわないと困る、と政治の関心も高い。そして人々は納税額が下がることで従来の様々なサービスの水準が下がるなら、このまま税金が高いままでもよいという考えを持っているのである。


情報公開

デンマークでは、税金の使われ方に関する情報の公開性が高い。従って、国民の納得しない税金の使われ方はしにくいことがわかる。そして、自分たちの支払った税金が何に使われているか、国民の意識が高いことから公開性が高くなっているといえる。また、公務員にかかる規制が強く、日本のように金銭をめぐる不祥事がニュースとなることが少ない。


デンマークの詩歌から

デンマークで愛唱されている詩歌の中に「人生は、平凡で楽しく暮らし、働く生活がよい。このような生活は、王の生活と交換できない。年老いた者たちと一緒で、素朴で楽しい生活がよい。王宮の中も、あばら屋の中も、同じように素晴しい。」というものがある。裕福な生活が理想とする生活ではなく、農民の暮らし、労働する人々の生活に高い価値を置いている。そして、政治家が国民に対して奉仕しようと願っており、国家の予算が国民の高く評価する福祉サービス分野に使用されることに対して、信頼を置いている。社会保障、無償の教育、無償の医療サービスその他に対する、高い税金を喜んで払っているのだ。詩歌に見られる価値観が、福祉社会実現のための高い税金を肯定しているといえる。



日本との比較

デンマーク人は、あまり貯金をしていない。理由は税制の充実によって、社会福祉が充実しているからである。高齢者になっても、病気になっても、あまり心配する必要がないのだ。収入にもよるが、デンマークでは50%位が税金で、日本では平均20%位である。日本人が貯金している金額は、平均すれば月給の20%位だと言われている。よって日本の税金と貯金を合わせると、デンマークの税金に近い。つまり、そこまで個人負担でどこまで国に負担してもらいたいかという、福祉に対する考え方の違いが表れているといえる。

また、日本の消費税率は主要国の中で最低の水準である。消費税率はデンマーク25%、日本5%となっている。デンマーク並みの充実した社会福祉を日本において実現しようとするならば、増税は必須だと考えられる。しかし、デンマークのように日本国民が政府に対して信頼を持っていないことから、増税に対して強い反発が起こると予想される。「消費税に対する信頼性・制度の透明性の向上を図るために見直しを行ってきました」と財務省のパンフレット『税のはなしをしよう。』(平成19年度版)に書かれているが、そのパンフレットに消費税10兆6,450億円が何にどのくらい使われているかは明記されていない。

国民が国家を信頼し、福祉のために効率よく税金が使われるためには、税金の使い道をより細かく知らせる必要がある。日本において高い税金で福祉に取り組んでいくためには、従来のようになれあいでやっていくのではなく、責任の所在をはっきりさせることも必要だ。そして、公開している使い道通りに不正なく使われていることを証明しなければならない。税金を福祉や教育を必要とする人に対して使おうという意識を育てることも、日本がより福祉を充実させた国になるためには必要だと考えられる。


<参考文献>

浅野仁、牧野正憲、平林孝裕 編『デンマークの歴史・文化・社会』創元社(2006年)

http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/syuzei.htm 「財務省 税制ホームページ」


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