デンマークの税制2
出典: Jinkawiki
デンマークは、すぐれた福祉国家として知られている。充実した社会福祉を支えているのは、極めて高い税金である。 また、世界でもトップレベルの高い課税水準を持っており、個人収入の実に49.5%が所得税となる。また、消費税率は25%にも上る。
税金の使われ方
ここでは誰もが原則として無料で病気の治療を受けることができる。入院も、出産を含めて一切お金がかからない。また、学校の学費は大学に至るまで無料のため、すべての子供に平等な教育の機会が与えられている。また、高齢者福祉や年金制度も充実していて、失業手当や低所得者への住宅手当など、さまざまな助成金制度も整っている。このように福祉国家は、国民ひとりひとりが社会の恩恵を享受できるようにするという理念に基づいているのである。これらは全て、国民の税金によって支払われている。
所得税の再配分
医療費・教育費の公的負担・生活費扶助などの社会福祉の制度を導入する上で前提になるのが、「所得の再配分」の考え方である。「所得の再配分」とは、納税を通してお金のある人からお金のない人に行政が介在して移動させる制度だが、所得の社会的な移動が円滑に行なわれるためには、納税者である国民と徴収側の国家・分配者の行政との間に信頼関係がないと成立しないであろう。国民が納めた税金が、乳幼児の医療費であろうと、道路の整備費用であろうと「国民のために使われた・使われている」という国民と国家の信頼関係によって、税金の使い方が成り立っている。国民や企業が払った税金が社会に公平に還元されるという信頼感があってこそであり、税金を納める主体的な意識が生まれのである。
スカンディナヴィア・モデル
或いは「スウェーデン・モデル」とも呼ばれる。スウェーデンが代表的である。他には、ノルウェー、デンマーク、フィンランドがある。政府による所得比例(業績評価モデル)と所得移転(制度的モデル)の組み合わせが特徴である。社会保障給付は政府による普遍主義的なもので、労働政策と併せて労働者の保護が最大限である。経済政策では政労使の協調(ネオ・コーポラティズム)に基づいて実施され、場合によっては同一労働同一賃金により弱い企業の淘汰を進める。それと同時に職業訓練や職業紹介などの積極的労働市場政策を通じて労働力の需給ギャップの解消に努め、社会保障支出をコントロールする。従って雇用の流動性は高い。これらのことから企業の競争力が高くなり、グローバリズムへの適応力が高いと言われる。しかし、その過程において競争力を持つ大企業のみが生き残りやすいために、しばしば税収などで特定企業に依存することになり、業績悪化がダイレクトに国家予算に影響を及ぼすことがある。
<参考文献>
「なぜ、デンマーク人は幸福な国をつくることに成功したのか」/ケンジ・ステファン・スズキ/合同出版
「世界一幸福な国デンマークの暮らし方」/千葉 忠夫/PHP研究所