トマス・ゴードン

出典: Jinkawiki

トマス・ゴードン(Thomas Gordon Ph.D.)。シカゴ大学、同大学院博士課程修了。臨床心理学博士。

シカゴ大学で教鞭をとった後、1963年「親としての役割を効果的に果たす訓練『親業』(Parent Effectiveness Training)」を開発、カリフォルニア州心理学会会長となる。1970年「子どもに関するホワイトハウス会議」にコンサルタントとして出席、親業は「家庭崩壊を防止する新しいモデル」として推薦を受ける。

GTI(ゴードン・トレーニング・インターナショナル)会長として、LET(リーダー訓練)、TET(教師訓練)、ETW(自己実現のための訓練)、YET(青少年のための訓練)など多様な訓練プログラムを開発、世界37カ国にゴードン博士のプログラム指導者がいる(1995年現在)。

全米における親業訓練指導者は現在5000人、これまでの受講者は1000万人以上にのぼり、ニューヨーク州その他では、ゴードン博士のプログラムが教員免許の正式な単位ともなっている。

教師学

ゴードンは人間は誰でも教育者であると考えている。どうしたら、生徒に効果的に教えられるのか。生徒との対立を少なくするにはどうしたらいいのか。そのための方法として、「TET」がある。これは、「教師として効果をあげるための訓練(Teacher Effectiveness Training)」のことで、教師のための完成されたプログラムである。ゴードンに言わせると、TETの方法と技術を使えば、上手くいくのだそうだ。

TETの基本は、教師と生徒の関係である。「教師の欲求は生徒に尊重され、生徒の欲求も教師から尊重される」という関係ができれば、生徒は授業に興味を持ち、喜んで学習するのだという。しかし、「教師から疑われている」「やっつけられている」「侮辱されている」「誤解されている」「批判的に評価されている」などと生徒が思っていれば、学習したくなくなって、激しく抵抗するだろう。

本来は学習時間なのに、他の問題に追われる時間が多すぎて、効果があがらないというのが、ほとんどの学校で抱えている悩みだろう。なぜそうなのか。教師の側に問題がおきているからである。生徒の抱える問題を解決したり、生徒をコントロールするための訓練を受けていないのである。


―教師についての神話― [第一の神話] 良い教師は、穏やかでやさしく、いつも平静である。常に「冷静さ」を失わず、感情をあからさまにしない。

[第二の神話] 良い教師は、先入観や偏見をもたない。人種差別や性差別をしない。

[第三の神話] 良い教師は、自分のありのままの感情を生徒には見せない。

[第四の神話] 良い教師は、えこひいきしない。ひいきの生徒を作らない。

[第五の神話] 良い教師は、生徒の興味を引き出して、刺激を与える。自由な、しかし静かで秩序のある学習環境をつくる。

[第六の神話] 良い教師は、態度が首尾一貫している。ときに応じて態度を変えたり、選り好みしたり、忘れたり、感情の起伏を表に出したり、間違ったりはしない。

[第七の神話] 良い教師は、生徒が何を質問しても答えられる。生徒より多くの知識を持っている。

[第八の神話] 良い教師は、教師同士で助け合う。個人的な感情、価値観、信条はひとまず置いて、生徒に対して「統一戦線」をはって望む。

つまるところ、「良い教師」は普通の人より優れて言う。理解力があり、物知りで、完璧である。この神話を受け入れるなら、高徳の人にならなければならない。人間的な弱さを超越し、公平かつ首尾一貫し、いたわりや共感も必要である。

しかし、こんな「良い教師」像は間違っているとゴードンはいう。神話どおりにしようとすれば、人間性がなくなる。良い教師のモデルと自分とを比べて、自分は教師不適格者だと思い込んでしまうのだ。


教師=生徒の良い関係とは

(1) お互いに隠し立てしない。相手に対して率直かつ正直でいられる。

(2) 思いやりがある。相手から尊重されている、とわかっている。

(3) 相互依存。自分だけが相手に頼り切ることがない。

(4) 独立性。自分の個性、創造性、独自性を育て、伸ばす――これをお互いに認める。

(5) 相互欲求充足。相手の欲求を犠牲にしてまで、自分の欲求を満足させない。

参考文献

トマス・ゴードン著 奥沢良雄 市川千秋 近藤千恵 共訳 『T.E.T.教師学~効果的な教師=生徒関係の確立~』 小学館 1985年

トマス・ゴードン著 近藤千恵 訳 『ゴードン博士の人間関係をよくする本―自分を活かす相手を活かす―』 大和書房 2002年

http://www.humanity.jp/gordon/gordon.html


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