トロイの木馬

出典: Jinkawiki

  • トロイの木馬

 トロイの木馬とは、ギリシャの伝説に登場する巨大な木製の馬で長年続いたトロイ戦争を終結させる要因となったものである。ギリシャの吟遊詩人であるホメロス(Homer)によって紀元前700年頃に書かれたイリヤスとオデッセウスの中で、紀元前1250年頃に起こったと言われるトロイ戦争についての話が描かれている。

  1 トロイ戦争

 ギリシャ軍とトロイ軍の戦いは10年にもおよぶ戦争を続けながらも決着を見ることができなかった。ギリシャ軍は船でトロイの街を包囲し攻撃するが、トロイの頑強な市壁により全く陥落させることができなかった。そのため、ギリシャ軍の人々も長年の戦争に疲れ、海の向こうで待つ家族や愛する人のもとに帰りたかったのだが、トロイ軍に勝利しトロイ王パリスのもとに逃げ去ったギリシャの王女ヘレンを取り戻すまでは決して帰ることはできなかった。そんな中、ギリシャ軍は木馬作戦を思いつき、トロイ軍が木馬を引きずり市壁の門を開け、市内にあるアテナ神殿に献上してしまった。トロイ軍は長く辛い戦争から解放され、街を守り抜いたという喜びで早速祝宴を催した。宴も終わり、勝利の喜びを胸にトロイ軍達は皆、寝静まりかえった時、突然木馬の中からギリシャ軍人達が飛び出し、帰郷したと見せかけていた舟も全てトロイに帰還し参戦し、そしてトロイに住む男性を皆殺しにし、街を焼き尽くし、女性や子供を奴隷としてギリシャに連れて帰った。ギリシャ軍は木馬戦略により勝利を手中に治めた。

2 木馬作戦  

 ギリシャの予言者カルカースが、ハイタカがハトを追い、ハトは岩穴に隠れ、ハイタカは近くの藪に身を潜め、実に辛抱強く待った末、安心して出てきたハトをすかさずハイタカが殺したという夢を見たことから、皆に「このハイタカのように、われわれもうまい作戦を考えてみませんか。力で押すだけでは、どうしようもないのだから」と伝えた。それに対し、オデュッセウスが「もしも、策略でトロイアを落とすのが運命の定めるところであれば、私にいい考えがあるぞ」と身を乗り出した。そして、「木馬を作るのだ。巨大な木馬を製造し、そのなかにわれわれ指揮官が潜み隠れ、待ち伏せをするのだ」といわゆる木馬作戦を話した。アガメムノーンが「そう簡単にいくかな」と疑いかかったが、「うまくいきますよ。あとの方法次第です。一人豪胆な男が木馬の外に残らなくてはならない。トロイア人につかまった時、その男は『私は、ギリシャ軍の犠牲にされかかり、危うく生き延びた者です。奴らは、トロイア方を案じるあまりに立腹した女神アテーネをなだめるために、この木馬をこしらえ、奉献することにしました』と言えばいいのだ。そうすれば、トロイア勢は、この男を木馬もろとも町の中へ連れていくだろう。あとでうまい時期を見計らい、彼が木馬の中の我々に合図をし、同時に遠くにいる同法に松明を掲げてくれればいいのだ」と話し、一同はこの巧妙な案に同意した。また、一人だけ残る男に作戦家オデュッセウスの従兄弟に当たるシノーンが勇んで立候補したため、作戦は決行されることとなった。

3 木馬作戦を見破った人々

 トロイ側で木馬を城内に入れることに反対した人物が二人いた。一人はアポロン神殿の神官ラオコーン。彼は、これは敵の策略にちがいないと警告するが、アテナ女神の怒りを買い、海上から現れた2匹の大蛇に二人の息子ともども絞め殺されてしまう。ヴァチカン美術館にある「ラオコーン」像はその様子を描いたものである。そしてもう一人は、トロイの王女カッサンドラ。彼女は、アポロンに惚れられ、誘惑を受け入れれば予言能力を授けられる約束をしたが、いざとなると怖くなり逃げてしまった。そのため、アポロンが憤慨し、カッサンドラの口の中につばを吐き、何を言っても誰も信じてもらえない口にしてしまった。そのため、カッサンドラには、木馬の中からギリシア兵が出てくる姿、そしてトロイの町が焼け落ちる様がはっきりと見えていたが、父プリアモスをはじめとして、彼女の言葉を信じる者は誰一人いなかったのだ。

4 「古代への情熱」  

 ギリシア人の詩人ホメロスの叙事詩「イリアス」は、アカイア人(ギリシア人の祖先)らのトロヤ遠征を題材にしたもので、10年におよぶ戦いにいらだったアカイア人は一計を案じて巨大な木馬の中に兵士を隠れさせ、トロヤ側のすきをついて攻撃し、ついにトロヤを炎上させ、滅ぼしたというものだった。この伝説を歴史的事実と信じたシュリーマンは後に、自らの生涯を「古代への情熱」という本にまとめた。  また、シュリーマンは時代の異なる9総の住居址が重なるトロヤ遺跡を発見し、下から2番目の層がトロヤ戦争で滅んだ都市だと確信した。(その後の研究で、彼が発見した層は、さらに1000年も古いものとされた。)トロヤ遺跡にある城壁などの建築物から、当時のトロヤがエーゲ海世界で重要な位置であったことがわかる。


5 参考URL

http://www.jp-tr.com/icerik/efsane/truva.html

http://blog.goo.ne.jp/yappi27/e/33e7589b51b0fdb234aa22b0c5163cb0

「ユニバーサル新世界史資料」帝国書院 帝国書院編集部

「諸説 世界史B」佐藤次高 木村靖二 岸本美緒 山川出版社

「トロイア戦争全史」 松田治 講談社 


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