ドイツの教育制度2
出典: Jinkawiki
教育改革の展開
ドイツでは、1960年代には、伝統的な分岐型の学校制度に対する批判に応え、総合制学校が一部設置されたり、キャリア決定に向けたオリエンテーション段階が導入されたりする構造改革が進められた。1980年代になると、学校の改革へと焦点が移り、教科中心の教育課程に対し、教科横断的授業や教科統合的授業などが議論されたり、学校の自律性を高める教育行政や経営のあり方が検討されたりした。1990年代には、ドイツ統一がなされた。それに伴って教育制度では、旧東ドイツはそれまでの10年の一貫した初等中等教育制度に代わり、旧西ドイツに対応させた複線型の学校制度を導入するなど、「東ドイツの西ドイツ化」が進んだりした。
学校制度の概要
就学前教育には、3歳から6歳までを対象とした幼稚園がある。それより幼い子どもは乳児保育所が受け入れている。義務教育は9年で、義務教育修了後に就職し、職業訓練を受ける者は、3年間、週に1~2日、職業学校に通うことが義務付けられている。 初等教育には、4年間の基礎学校がある。半日制であった学校は、特に移民の子どもたちの教育機会を拡大するという目的で、終日制学校への移行が進められている。 前期中等教育段階の学校は、生徒の能力・適性に応じて3つに分岐している。それらは、卒業後に職業訓練を行う者が主に通う「ハウプトシューレ」(5年制)、卒業後に職業教育学校に進んだり、中級の職に就いたりする生徒が主に進む「実科学校」(6年制)、大学進学希望者が主に進む「ギムナジウム」(6年制)である。その他、州によっては単線型の教育システムをつくることを目的に設立された総合制学校がある。なお、中等学校修了資格者であり大学入試資格でもあるアビトゥアに合格すると、定員が空いていれば、どこの大学にも進学できるようになっている。 後期中等教育の段階には、ギムナジウムに加え、「職業学校」(週に1~2日の定時制の通常3年)、「職業基礎教育年」(全日1年生)、「職業専門学校」(全日1~2年制)、修了すると実科学校修了証が授与される「職業上構学校」(全日制は1年以上、定時制は通常3年)、実科学校修了を入学要件とし、修了者に高等専門学校入学資格が授与される「上級専門学校」(全日2年制)、実科学校修了を入学要件とし、修了者に大学入学資格が授与される「専門ギムナジウム」(全日3年制)など、様々な職業教育学校が設けられている。 高等教育は、大学(総合大学、教育大学、神学大学、芸術大学など)と高等専門学校がある。修了年限は、大学で4年半、高等専門学校で4年以下とされるが、これを越えて在学する学生が多い。なお、欧州各国の高等教育に共通の枠組みを構築するための1998年のボローニア宣言を受けて、ドイツの高等教育においても、学士、修士といった学位への調整が進んでいる。
参考文献
松尾知明(2015)『21世紀型スキルとは何か―コンピテンシーに基づく教育改革の国際比較』明石書店